しまった、と青ざめるカインに向かってエッジは楽しそうに笑いながら、ここぞとばかりに責め立てた。

「そりゃあ十何年も山に籠もってりゃ溜まる……いってえ!」
「エッジ!!いい加減にしないとその口を塞ぐわよ!」
「お前なあっ、俺は関係ねぇだろうが!矢は止めろ、矢はっ!」

面白半分に言葉を発したエッジに向けて、ローザの弓矢が放たれる。大抵の攻撃は軽々とかわす忍者の王に百発百中と唄われる腕前を惜し気もなく披露して、ローザは見事にその体に命中させてみせた。

「……何が溜まるの?」
「リディア!ああ、もうっ!」

相変わらず状況が飲み込めていないリディアは、首を傾げて間の抜けた発言をする。怒りが頂点に達し、ついに事切れたローザは再び弓矢を身構えると、エッジとカインを睨み付けて声高に叫んだのだった。

「……あなた達二人、そこになおりなさいっ!」
「お、おいっ!俺は関係ねぇだろっ!?」
「エッジ、無駄だ。ああなったローザは手が付けられん……逃げるぞ」

制裁を宣言され、説得は無理だと悟った二人は足早に逃げ始める。狭い空間に飛び交う矢を縫うように掻き分けながら、エッジは堪らずに隣を走るカインに怒号を飛ばした。

「あのなあ!大体、お前が初めっから自分のだって言ってりゃ良かったんじゃねぇのか!俺まで巻き込むんじゃねぇ!」
「すまん……その、魔物が大事そうに守ってたから、まさかあんな物とは思わなくてな」
「はあっ!?何で魔物がエロ本なんか守ってんだよ!てめえ、いい加減なこと言ってんじゃねぇぞ!」
「本当だ!それに、お前が狙われたのは言わば自業自得だろう!日頃の行いが悪いから、こういう時に疑われるんだ!」
「何だと!てめえ、やるってのか!?」
「望む所だ!」

二人の会話は言い争いへと変わり、足を止めて互いに向き合う。
行き場のない怒りをどこかにぶつけたかったのだろう。今にも戦いを始めそうな二人を止めたのは、どうしてこんな事になってしまったのかが分からずに、半べそをかいているリディアの叫び声だった。

「……やめてえっ!」

その声に、ローザの矢がぴたりと止まる。
エッジとカインもリディアを振り向き、互いに顔を見合わせた後、振りかざしていた手をゆっくりと下ろしたのだった。

「もう、やめてよ……私がこんなもの、見つけたからいけなかったの……」

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