05


「全く、カゲロウ、お前ってやつは…!」
「藤堂、さん」
「みょうじ、お前もなんだその怪我は!」
「しゅ、主任」

連絡を受けて駆けつけてきた主任は、怖かった。ゴチンと拳骨が飛んできそうな勢いで、思わず肩をすくめる。

「カゲロウはとりあえず俺が見ておく。お前は医務室で湿布でも貼ってこい」
「は、はい」

足をかばいながら作業室を出るとき、ちらと振り返ると、こちらを不安げな表情で見つめるカゲロウと目が合った。すこうし笑って返して、医務室へ向かった。


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「藤堂さん、すみません、俺」
「まあいい。目覚めてくれただけでも…おかえり、カゲロウ」

彼女が出て行ってから、藤堂さんはようやく笑ってくれた。モニタを見ながら作業を始めた藤堂さんに、声をかける。

「戻ってきてしまいました」
「ああ」
「…記憶も、全部戻っていて」
「そうか」
「俺、俺…死にたく…死んでいたく、なかった」
「…そうか」

こちらを見上げた藤堂さんは、ひどく優しい顔をしていた。

「…しかし、なんですぐ目覚めなかった?というか、どうしてこうなったんだ?」
「意識はずっと暗いところにいて…一気に眩しくなって、驚いて。混乱していた時、なまえさんに呼ばれたんです。はやく起きろって」
「あいつが?…ん?カゲロウ、お前、みょうじの名前」
「全部思い出したんです、俺。彼女、藤堂さんと一緒に俺を作ってくれてたから」

そう、全部覚えていた。失いたくないと叫んだ記憶の中に、シャドウ丸との記憶の中に、確かに彼女もいた。目を覚ましたとき、彼女の顔が目の前にあったから、思い出した。

「藤堂さんが来るまで話をしていたんですけど、まだ名前、呼んでなくて」
「そうか…。ハハ、あいつ、きっと驚くぞ。…それにしても遅いな」

医務室に行く前にぶっ倒れてたりしてな。ハハハ、と笑ってはいたが。まさか本当に、医務室へ向かう通路で、彼女が眠気に負けて倒れていたなんて。ちょっと、笑えない。





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