03


「これより超AIの取り付け作業に入る」
「はいっ」

結局作業は夜まで掛かった。起動実験は後日に回しても良かったのだが、皆気が急いていた。ボディの整備が終わる頃に、修復作業が終わった超AIが届けられ、そのままの流れで取り付けが行われた。静かな室内に、マシンアームの音がやけに響く。

「取り付け完了しました」
「動力、オン」
「起動します」

仲間がそれぞれの持ち場から声を上げる。私はコンソールの前に立ち、低く音を立て始めた彼を見上げていた。剥き出しのままの頭部回路が、ぱちりぱちりと光る。誰かが息を飲む音がした。
瞳に光が点って―消えた。起動音は響く。けれど、目覚めない。ため息はどこから聞こえただろうか。

「…ダメ、か」

主任の声が、ズシリと重く沈んだ。



結果、もうしばらく時間をかけて起動を行う、というのが決定した。あと数度起動実験を行い、反応がないようであれば、今回の計画は白紙に戻される。という話だ。
時刻は既に23時。明日は月曜。確か私は、朝からガンマックスのメンテナンスの予定だったはず。深くため息をつきながら、今夜はもう家に帰らないほうがいいなと思った。
皆どっと疲れが押し寄せてきたのだろう。うーやらあーやら言いながら出て行く仲間達を見送りながら、主任の姿を探す。

「藤堂主任、今夜仮眠室を借りても」
「ああ、わかった。すまんな、休みを潰しちまって」
「いえ…あ、片付けもしておきます」
「頼むよ。っと、鍵鍵…戸締りをしっかりな」
「はい。お疲れ様でした」

作業場と化した格納庫の鍵を受け取り、主任が出て行くのを見送ると、本当に静かになった。振り返ってみても、物言わぬロボットがたたずんでいるだけ。なんだか腹が立って、カンカンと音を立てながら足場を駆け上った。カゲロウの顔のまん前まで伸びる足場に立って、きっと睨みつけてみる。反応はない。そのまま数秒睨んで―馬鹿馬鹿しくなって、ため息をついた。さっさと片付けをすませて仮眠室へ行こう。
身を乗り出して、彼の大きな額を小突いてみた。

「ねえ、私はもう寝るけど、あなた、はやく起きなきゃだめだぞ…ふあ」

そこまで言って、あくびを一つ。押し寄せてきた眠気に目をこすりながら、ゆっくりと足場を下る。

「おやすみ、カゲロウ」
「…おはよう」
「うん、おは…え?」

ズルリ、滑った足はそのまま、私は派手な音を立てて転げ落ちたのだ。さよなら、わたしの安眠。





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