02


「深海調査隊が、全壊したアビスの機体から超AIを発見したんだ。強化シールドに守られていたお陰で、殆ど無傷の状態で、だ」

皆がざわめく。カゲロウの超AIが、帰ってきた。私は唇を噛んだ。同僚の1人が、主任、と声を上げる。

「それで、俺たちは一体何を?」
「うむ…冴島の旦那からは、超AIと機体の修復作業が終わり次第、起動実験に入ってくれと言われている」
「それじゃあ」
「ああ。お前たちには、ここに保管してあるカゲロウのボディの整備を頼む」

長いこと眠っていたからな。そう言った主任は、そこで少しうつむいた。私は一歩前へ出て、きつく結んでいた口を開く。

「主任、カゲロウはブレイブポリスへの配属が決定した訳ではないんですね」
「…ああ。一度メモリーを消去されてるからな。今回の起動実験でカゲロウの意識がきちんと呼び起こされれば、本人の希望を聞こうという話にはなっている」
「…もし、目覚めなかったら?」
「それも、カゲロウの望みだろう。…もし目覚めなかった場合を考えて、このことは奴らにゃあまだ秘密なんだ」

静かに横たえられたボディは何も言わない。じっと見つめていても、何も変わらない。そりゃそうだ、あれはまだ、カゲロウじゃあ、ない。
パン、と主任が手を叩いた。

「さあ、ねぼすけをたたき起こすとするか!」



「ところで、主任」
「ん?」

内部に入り込んだ細かい埃を取り除く手を止めずに、丁度隣で配線を確認していた主任に声をかけた。

「その…シャドウ丸にも、言っていないんですか」
「ああ。まだ、な。ぬか喜びにゃあさせたくないし、もしかするとシャドウ丸もカゲロウも、生き返るのを望んでない可能性だってある」
「…そうですか」

それきり会話は続かなくて、ただただ作業に没頭した。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -