15


カゲロウが調査任務(任務…お使い?)に出て、3日間。携帯の着信履歴が埋まる頃。一人、ロッカーで帰り支度をしていた私の携帯がまた震えた。あいも変わらず非通知着信。欠かさず連絡をくれるのはいいが、私から連絡したい場合はどうすればいいのだろうか。主任のように警察手帳を持っているわけではないから、不便だなあと思いながら電話に出た。

「もしもし」
『なまえ。そろそろ帰る頃かと思って』
「うん、時間ぴったり」

携帯を肩で挟んで押さえながら、鞄に着替えを詰める。作業着が汚れるのは仕方ないとはいえ、洗濯が大変だ。スキニーをブーツに押し込む。今夜は冷えると聞いたから、コートも羽織って。

『送っていこう』
「おつかいはいいの?」
『おつかい…?』
「ふふっ…えーと、お仕事?」
『ああ、あいつ今日もいたぞ。尾行しようとしたら逃げられてな…』
「そっか。なかなか大変そうね」

マフラーを巻いて、ロッカーに鍵をかける。携帯を握り直して、喋りながら外に出る。途端、ぶるりと震えが走る。はあ、と吐いた息が真っ白だった。すっかり暗い道に出た瞬間、目の前が急に眩しくなって目を閉じた。ゆっくり前を確認すると、道端に止まった特徴的な車のライトが。

「迎えにきたぞ、なまえ」

助手席のドアはすっと開くから、緩む顔もそのままに、携帯を鞄に押し込めて。寒さから逃げるように乗り込んだ。

「はー、寒かったー」
「だろうと思って」
「あったかいー」
「だろう?」

ほどよい熱を持ったシートに頬をくっつけると、急激に冷やされた身体がじんわりとあたたまった。人気のない帰り道、静かなエンジンの駆動音が心地よくて目を閉じた。どうにも彼のそばは居心地が良すぎて、甘えてしまう自分がいる。このままじゃいけないと思うのに、離れたくないと思ってしまう。一緒にいればいるほど、離れなければと思う気持ちと離れたくない気持ちが大きくなっていって。

「…なまえ、寝たのか?」
「んーん」
「外、見てみろ」
「んー?」

薄く目を開けると、ライトに照らされた空間にきらきらしたものが舞っていて。

「…雪!」
「みたいだ」
「寒いはずだよ…でもきれい」
「ああ、きれいだ」
「あ…そうだ。行きたいところ決まった?」
「すまない、まだだ。悩んでしまって」

チカチカと点滅する車内のライトにふっと笑って、手を伸ばしてハンドルを撫でた。

「当日までには決めておいてね。貴重な休みだから、無駄にしちゃあね」
「ああ、分かった。はやいところ調査も終えなくてはな」
「うん。…ねえカゲロウ」
「どうした?」

ここで寝てもいいかなあ?そう聞いたら、ああもちろん、と返ってきて。ほんの少し上がった車内温度にどうしようもないくらい切なくなって、熱くなった目を閉じた。
もう少しだけ甘えても、いいかなあ。声には出さずに、シートに身を寄せた。





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