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午後、腕の不具合を訴えてきたデッカードの検査をしていたら、主任が神妙な顔をして作業室に入ってきた。

「主任、どうしました?」
「いやな…うーむむ」

思わず手を止めて主任を見る。デッカードも不思議そうに視線を向けた。

「最近な、工場の周りをうろつく奴がいるんだよ」
「え?」
「ここのところ毎日毎日…部品の在庫も無くなってたり…少し気になってな」
「泥棒ですか?」
「工場のセキュリティ、そんなにゆるかったですか…?」
「うーん…」

顎に手をやって思案する主任に、デッカードと顔を見合わせた。
放置したままではまずいと作業を再開して、関節部分に入り込んだ金属片を見つける。不具合の原因はこれか。足場に上って取り外そうとしていると、主任が口を開いた。

「みょうじ、カゲロウはどこにいる?」
「彼ならさっき、デュークの手伝いをしてくると…」
「そうか。それが終わったら呼んでくれるか」
「…はい」

主任の言葉に何か嫌な予感を感じながら、破片を引っこ抜いた。デッカードはどこか心配そうな顔で、こちらを見ていた。



「怪しい奴、ですか」
「うむ」

しゃがみこんだカゲロウの前に、主任。私はそんな二人を眺めるように黙って立っていた。のだが。

「頼まれてくれるか、カゲロウ」
「ま、待ってください、主任。カゲロウは」
「…言いたいことは分かる。だが、シャドウ丸は別の任務に就いているし…これは俺からの個人的な頼み事だ」

思わず出た足と口に自分で驚いた。主任は困ったような顔をしながら、カゲロウと私を交互に見た。言葉が続かなくて俯きかけた私の頭を、カゲロウがその大きな指でつついた。見上げれば、やわらかい笑顔。

「なまえ、俺なら大丈夫だ」
「…でも」
「少し調べるだけだろう?それくらいなら、俺にもできる」

俺はプロトタイプではあるが、隠密回路はあるからな。そう言う彼に、無理はしないでねと、答えるしかなかった。








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