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目が覚めて、真っ暗でびっくりして、ああ毛布の中かと起き出して、それでもまだ真っ暗なのにびっくりした。サイドテーブルに置かれた電子時計を見れば、2:56。真っ暗なはずだ。寒さにぶるりと震えて、再び毛布を被った。すう、はあ、自分の生ぬるい吐息が手に当たる。もう一眠りしてもいい。そう考えて目を閉じた時、携帯が鳴った。びくりとして、サイドテーブルのそれを見つめる。コールが1回、2回。3回目で、手に取った。画面には非通知の文字。ごくりと喉が鳴る。どうしようどうしようと悩んで、4回目、通話ボタンを押した。手が震える。

「…もし、もし」
『…』
「もしもし…カゲロウ、なの?」

向こうからすぐに声は聞こえてこなかった。ただのいたずら電話かもしれない。でも、カゲロウのような気がして、名前を呼んだ。

『…起きているとは思わなくて、驚いた』
「カゲロウ…」

なんで電話したの、とか、なんでこんな時間に、とか、聞きたいことはたくさんあったのに。声を聞いたら、何も出てこなかった。眠る前の感情がぶり返してきそうで、ぎゅっと口を閉じた。

『なまえさん、あの後いなくなったから』
「…主任に、帰って休めって言われて」
『大丈夫か』
「う、ん」
『そうか。心配した』

なんでこのロボットはこんなに優しい声をかけてくれるんだろう。目を閉じて、小さく息をした。

『明日…今日か。何時にくる?』
「え?…昼くらいになると思うけど」
『わかった』
「なにか、あるの?」

毛布の端をいじりながら、聞いてみた。もう少し話をしていたいんだな、私は。苦笑した。

『ああ。シャドウ丸と話をして、ブレイブポリスの皆とも会った』
「そう。それ、で」
『しばらくはブレイブポリスに預けられることになった。まだ配属じゃないが』
「うん。そう」
『それで…俺の保護担当が必要だということになって』
「うん…うん?」
『なまえさんが良ければ、頼みたい』

思わず携帯を落としそうになって、慌てて握りなおした。なんで、どうして。

「…少し、考えさせてくれる?」
『ああ。いきなりこんな話をして、すまなかった』

また来たときに話をしよう。うん、わかった。ぎゅっと握った携帯が熱い。

『それじゃあ』
「うん、おやすみ、カゲロウ」
『ああ、おやすみ。…声が聞けて、よかった』

それきり切れた電話を、私はずっと、耳に当てていた。





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