09


「全く、世話しとけって言っておいたのにお前が世話されてどうすんだ」
「滅相もありません…」

用事を済ませて帰ってきた主任に呆れ顔で起こされて、私は縮こまった。カゲロウはおろおろとしている。

「カゲロウ、お前もな、勝手に出るなって言っただろ」
「すみません…」
「給油を忘れた俺も悪い。だけどなんで俺に連絡しない?」
「それは、その…」
「(怒られるのが怖かったなんて言えない、わよねえ)」
「みょうじ、何変な顔してる」
「すみません…」

延々と続きそうな主任のお説教に、カゲロウとちらと顔を合わせる。彼もまた微妙な顔で、口を曲げていた。主任はふうとため息をつくと、真剣な顔になる。

「…カゲロウのことについて、冴島のダンナと話をしてきた」

その言葉に、ハッとした。

「…俺は、どうしたらいいんですか」
「まだブレイブポリス入りは決定していない。お前さんの意志次第だ」

ブレイブポリスとして生きるか、それとも別の道を探すか。

「…少し、考えさせてもらってもいいですか」
「ああ、もちろんだ。時間はたくさんある」

主任の声は優しくて、私はカゲロウをそうっと見上げた。彼は存外やわらかい表情をしていた。つらそうな顔じゃあなくて、それでも何故か見ていられなくて、すぐに視線を落とした。足元を見つめて、唇を、噛む。彼は何を望むのだろう。

「しばらくは整備やテストをしなくちゃな。起きたのはいいが、迷子になるロボットなんてのは…」
「藤堂さん、それはもう言わないで下さい…」

少し穏やかな空気になったとき、突然天井からガタガタと音がした。びっくりして、ばっと見上げる。
ガコン、と盛大な音を立てて落ちてきたそれに、私はサアと血の気が引いた。

「カゲ…ロウ…?そんな…」

紫色のロボットは、信じられないといった表情で立ちすくんでいた。カゲロウが、ゆっくりと歩み寄る。

「シャドウ丸、ただいま」

にっこり笑ったこのねぼすけロボットは、どうやら少し、空気が読めないらしい。





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