08


皆に見つからないように最初の部屋―第5格納庫へとカゲロウを連れて行ってから、倉庫(こちらはちゃんと、皆の給油用のオイルが保存してある。さっきのは予備パーツ置き場だった)から台車に乗せたオイル缶と、その上に調達してきた自分の食事用のパンとペットボトルを数個乗せてさっと戻ってきた。誰かがうっかり入ってこないように、しっかり鍵をかける。

「おかえり、なまえさん」
「はー、どきどきした」

壁際に座っているカゲロウの元へガラガラと台車を押していく。たーんとお飲み、なんて言いながらオイル缶を示せば、ありがとう、と言って手に取った。
パンの袋とペットボトルとを持って、機材の乗った長机を少しどかしてスペースを作る。パイプ椅子がキシリと鳴った。深くため息をつきながら、フタをあけぐびりと飲む。給油口を開いていたカゲロウは、何を思ったのか、同じようにオイルを口元に運んで、ぐびり。

「…ガンマックスがそれよくやるけど、おいしいの?」
「おいしい…のかは、わからないが。落ち着いた」
「そう、良かった」
「ガンマックスとは?」
「ああ、ブレイブポリスのメンバー。カゲロウが知らないのはあと…ドリルボーイとデュークかな」

そのうち紹介されるんじゃない、なんて言いながら、パンにかぶりつく。何か考えるようにうつむいたカゲロウは、静かにオイルを飲んだ。



食事を終えて大分落ち着いた。うーんと伸びをしていると、じっと見てきたカゲロウが口を開く。

「俺のせいで、あまり休めていないようだ」
「あ、そんなにひどい?顔」

今朝方ガンマックスに言われたのを思い出し、うげげ、と言いながら顔をむにりと引っ張る。

「まあちょっと寝不足なだけだし、大丈夫。今はおなかも一杯だからね」

朝のイライラは、空腹も少なからず関係していたらしい。満腹になって、ふあ、と間抜けなあくびが出た。カゲロウはくすくすと笑って、私はちょっと恥ずかしくなった。

「少し寝るといい。もう勝手に出歩いたりしない」
「ほんとにしない?」
「ああ、しない。今はおなかも一杯だからな」

ここにいる、と言った彼に、じゃあ少しだけ、と返して机に突っ伏した。すぐに意識が遠のいて、おやすみなまえさん、だなんていう声が、とてもとてもやさしく響いて聞こえた。ああ、私の名前だ。





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