Optimus
もしもあの時彼女が我々に出会うことなく、戦いに巻き込まれることなく平和に過ごしていられたなら、悲しませ、悩ませ、苦しめることもなかっただろうか。
「オプティマス、また難しい顔をしているのね」
腰を下ろした私の膝に乗り、眉を下げながら笑うナマエはそっと手を伸ばして、触れてもいいかとたずねる。ああ、と頷いて、手のひらでそっと彼女を引き寄せれば、私の胸にぴとりとその身体を寄せた。パーツをなぞるその手はひどくやさしい。細かい傷の残る彼女の手をじっと見つめる。
「あのね、私、あなたに会えて本当に良かったと思うの」
「…何故だ?」
私は君を傷つけた。その言葉は言わずに、じっと答えを待った。
「あなたに恋して、あなたを愛して、あなたに護られて、あなたに愛されて」
こんな幸せってほかにあると思う?ああ、君の言葉はなんて優しく私を傷つけ喜ばせるのだろう。
彼女に触れる手に力を込めた。きっと苦しいかもしれないが、彼女はきっとそれさえも受け入れて私を愛してくれるのだろう。
「ナマエ、傷つけてもいいかい」
「ええ、もちろんよ」
至極幸せそうに笑う彼女を、何も考えず愛してしまいたかった。
「私にあなたを刻み込んで、オプティマス。消えないくらいに」
vulnero