花瞼/奥村



茶屋の前で並んで腰掛け、主人が持ってきた団子を口に運んだ。
隣で茶を飲む助右衛門は、それだけで絵になる。思わず見とれていたら、どうした、と首を傾げられた。

「助右衛門様はどうしてそんなに美しいんですか」
「…は?」

素直にそう言えば、まさにぽかんという音が合いそうな顔をされた。
そんな顔も素敵なのだから困る。串に刺さった最後の一つを食べ、茶を飲む。ふう、と息をついた。

「なんかずるいです」
「そう言われてもな」
「助右衛門様」
「何だい」
「お団子食べてみてください」
「うん?」

言われた通りにみたらし団子を手に取る。これもまた絵になる。
ぱくりと食べた彼はにっこりと笑ってうまいな、などと言うものだから、また溜め息が出た。

「…ナマエ殿は」
「はい?」
「私といると、つまらないか?」
「…は?」

団子を食べ終わった彼は目線を落とす。憂える美形である。

「二人で出かけると、いつもこう、溜め息ばかりついているから」
「ああ、それは…違います、つまらないのではないです」

こうして連れ出してもらって楽しいです、と言えば、そうか?と困ったように微笑んだ。

「なら、もっと笑って欲しい」
「…はい」

店主、団子をもう一皿頼む。
どうやら気に入ったらしい。思わずぷっとふきだすと、彼は嬉しそうに笑った。



花瞼
(あ、あんこ付いてる)









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