jux/慶次




「おうい、帰ったぞ」
「おかえりなさい、兄様」
「うむ、妹よ!」

片手に桶を持った慶次を迎えると、にこにこと笑いながら近づいてきた。
空いた手でぐりぐりと頭を撫でられる。兄と呼ばれるのがそんなに嬉しいのか。

「今日は沢山釣れたんだ。美味い飯を期待してるぞ」
「はいはい」

桶を受け取ると、確かにおいしそうな魚が数匹、悠々と泳いでいた。
どうやって調理しようかと考えていると、ぐっと肩を引き寄せられる。

「どうしたの?」
「魚より先に食いたくなったのう」
「はいはい」

近づいてきた顔を押しのけると、ちぇー、と拗ねる。子供か。
妹にすることではないでしょう、と言うと、妹ではないだろう、と言う。統一しろよ、と思う。

「ナマエ」
「うん?」

家の中へ入ろうとしたところで呼び止められ、振り返った瞬間に額に口付けられた。

「これで我慢するか」
「…慶次!」

ははは、と笑う彼は兄と呼ぶにはいささか問題があるように思われる。
ぴちゃん、と魚が跳ねた。



ユクス
(冗談でもしないで欲しい)(そんなのじゃないさ)







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