02


町は沢山の人で賑わっていた。それもそうだ。ここは京、この時代の都だ。
目に入るもの全てが新鮮で、きょろきょろと視線が動いてしまう。傍から見ればおかしな娘かもしれない。けれど、仕方ないじゃないか。
ある店先に、きらきらとした小物が並べてあった。思わずじっと見ていると、助右衛門が横から覗き込んできた。

「名前殿、気になるか?」

にっと笑う彼は、あっという間に私をその店へ連れて行く。綺麗な髪飾りが並んでいる。どれも細かな装飾が成されていて、見惚れてしまった。いい、なぁ。

「うん、好きなのを選ぶといいぞ」

はっとして彼を見る。慌てて首を振れば、む、と顔をしかめた。

「選ばねばおれの好きなのにさせてもらう」

さてどれがいいか、と飾りに視線を落とす助右衛門。買ってもらうのは申し訳ないのに。連れて来てもらえただけで嬉しいのに。彼はちら、とこちらを見て、少し微笑んだ。

「これはどうだ」

彼が手に取ったのは、緑色の綺麗な石が飾られた簪。それを見てほう、と小さく息が漏れたのを気に入ったと受け取ったのだろう。よし、店主、これをくれ、と言って彼はさっさと勘定を済ませてしまったのだった。



大通りから外れた人気の少ない道。どこか満足げな彼の隣を歩いていると、ふと口を開いた。

「名前殿、おれはもうすぐ金沢へ戻らねばならん」

立ち止まった彼は、だから、と言って先程買った簪を手渡してきた。

「おれがいない間は、これを見て思い出してくれると、嬉しい」

そう言った助右衛門の笑顔がとても優しくて。
受け取った簪は、日の光を受けてきらきらと輝いていた。





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