04


夜も更けた頃。なんだか眠れなくて、そっと部屋を抜け出した。縁側に出て空を見上げる。ぽっかりと月が浮かんでいた。向こうで見ていた月と何も変わらない。ほう、と息を吐いてうずくまった。今夜は冷える。

「どうした、名前」

声を掛けられ振り向こうとすると、後ろからぎゅうと抱きしめられた。慶次の大きな身体は、すっぽりと私を包み込んでしまう。
恥ずかしさよりもなによりも、そのあたたかさが酷くしみた。

「眠れないのか」

小さく首を動かすと、そうか、と腕に力を込められる。あたた、かい。
どうしても何かを言いたくて、口を開いてみたけれどひゅうひゅうと息が漏れるだけで。どうして。目頭が熱くなって、目の前に回された腕に顔を埋めた。こんなに泣き虫だったかなぁ。ぐ、と唇を噛んで耐えた。

「なぁ、名前」

優しい声が響く。顔を伏せたままでいると、慶次がそっと耳元に顔を寄せてきた。

「おれはな、お前がきてくれて嬉しいんだ。お前がどう思っているかは分からんがな」

この人は真っ直ぐだ、と思った。いつでも真っ直ぐに、私の心へ入ってくる。見えない心に入ってくる。
そっと顔を上げる。少し首を動かせば、すぐ横に慶次の綺麗な顔があった。にこりと笑ったその顔は、月明かりに照らされて。

「…冷えてきたな。中に入るぞ」

今夜は一緒に寝るか。冗談めかして言う慶次に小さく頷けば、一瞬驚いた顔をして、それからふ、と微笑んだ。
声が戻ったら、一番に言いたいことができた。ねぇ、慶次。





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