03
話を聞いた助右衛門はふむ、と口元に手をやった。
「記憶と声、か」
「見つけた時は酷い怪我だったからな」
仕方あるまいよ、と慶次は茶を飲む。
じっと助右衛門に見つめられ、居心地の悪さを感じて視線を落とした。ぽんぽんと、慶次が頭に手を置く。
「なに、おれにも妹が出来たようで嬉しいんだ」
「全くお前は」
はは、と笑う二人の声を聞きながら、向こうでの最後の記憶を手繰る。
硬いアスファルト。排気ガスの混じった空気の匂い。信号。横断歩道。それから。
その先を思い出そうとすると、頭がツキンと痛んだ。思わず顔をしかめると、助右衛門が大丈夫か、と言った。
顔を上げると、心配そうな顔がそこにあって。
「どうした」
「慶次の妹が嫌だったのか」
「なにぃ?」
口をへの字に曲げた慶次に慌てて首を振る。助右衛門はそれを見て楽しそうに笑った。
「…おれも何か、協力しよう」
「ああ、頼む」
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