Tears are bundles of love. | ナノ

03






「お帰りなさいませ、陛下」


玉座の間に入った途端、満面の笑顔で腹心であるジェイドに出迎えられた。
しかし目が全く笑ってない。


「あー、うん。今帰った」


その迫力に気圧されつつ、ピオニーは挨拶をする。


「ずいぶんとお楽しみだったようですね」

「まあ、な」

「……彼女は、ガウナの反応は如何でしたか?」

「ん?」

「御手付きなさったでしょうに」

「……ああ、とっても俺とのセックスを嫌がってたよ。あと、お前に売られてたと思ってる」

「否定はしませんよ。貴方は意識のない彼女の見舞いに行った時、容姿だけは非常に気に入っていたようでしたし、元帥達と同じく、私もこの国の未来を案じておりますからね。彼女には私の人生をかけて償っていくつもりです」

「……」


言い訳しようと思ったのだが言葉が出てこなかった。
ピオニーにはジェイドほどの覚悟と責任がなかった。


「いつまでもネフリーに執着してても、意味はありませんよ。来世に持ち越しなさい」

「執着なんかじゃない!俺は……俺にはネフリーだけだ!!今までも、これからも……」


ケテルブルクの知事邸で、子爵として仕事をしているネフリー・オズボーンの姿が鮮明に脳中に去来する。
相思相愛でありながら、預言によってピオニーとネフリーの恋心が引き裂かれてしまったことを。
あの時ほど、預言というものを憎み、この世から消し去りたいと心から願ったことはなかった。


「ですが、貴方の我が儘でガウナを巻き込むべきではなかった」

「そんなことはわかってる!だが、何故かあいつにはネフリーとは別の、何か惹かれるものがある……。ガウナのことは悪かった、行為の最中に泣かれたよ」


思わず叫んだピオニーだが、すぐに我に返って咳払いし、冷静さを取り戻す。


「平和条約の締結だって半分賭けみたいなもんだ。敵は国外だけではないし、今の俺には盤石な備えが必要だ。頼む、ジェイド。俺の私情に、お前の大事な部下を利用させてくれ」


キムラスカとの停戦とて、未来永劫のものではない。政敵も多い上に国主の後継ぎをと、年寄り達に好きでもない貴族の令嬢を宛てがわれ続けた結果、ピオニーになりに搾り出した決断だったのだろう。彼は座したまま、ジェイドに頭を下げる。
自ら畜生に成り下がろうとする親友に、ジェイドは沈黙していたが、たっぷりと間を置いてから、口を開いた。


「……正気じゃありませんね」

「なんとでも言え」

「傷の舐め合いはしませんよ?」

「知ってる」

「でしたら、これ以上は私からは何も」


有無を言わせない口調で言われ、ジェイドは渋々承諾するしかなかった。


「あと一つ、条件がある」

「なんでしょうか?」

「絶対に誰にも手を出させるなよ?そこにはお前も含まれてる」

「そのつもりはありませんが、出した場合は?」

「生かしておく必要はない。俺の愛妾だからな」

「わかりました。ただちに、軍内部と貴族達に厳命しておきます」

「任せた」


ジェイドが下がると同時に、ピオニーは玉座から面倒くさそうに立ち上がり、自室で飼っているブウサギ達に癒されようと向かった。





× × × ×




翌朝、ジェイドがガウナの居室を訪ねてドアをノックする。
昨日、ピオニーに強姦されたにも関わらず、意外なほどガウナの声は落ち着いていた。


「どうぞ~」

「失礼しますよ」


中に入ると、ガウナはベッドの上に腰掛けていた。服をきちんと着込んでいるところを見ると、一晩眠って落ち着いたらしい。


「昨日は申し訳ありませんでした。陛下がなさったことは、事前に貴女へ話しておくべきことでした」

「そうね。後で一発殴らせて。まずは……話をしましょ」

「ええ。体は……大丈夫ですか?」

「同意のないセックスには慣れてるわ。ただ、今日の仕事はできないわよ?」


ガウナは苦笑して首を振った。


「私と陛下は私利私欲で貴女に、あんな仕打ちをしてしまいました。一生をかけて、可能な限りのことをさせてください」

「確かに、"私の"身を売るような真似をしなくても、自分の力で生きようと思えば生きていけたわよ。私は。でも、それは健康体のまま、こっちの世界に飛ばされたらの話」


今度は自嘲気味に笑う。


「ジェイド君は私を治してくれたし、仕事まで斡旋してくれた。ただ死を待つだけだった私に。だから、昨日のあれは……ジェイド君への治療費とここの家賃だってことで解釈するっきゃない!」

「無理にそうだと、決めつけなくていいんですよ?」

「あのね~、ジェイド君。ガウナさんは毎日強姦、輪姦、人体実験される日々を数年送ってたのよ?更には妊娠、出産の経験もある。ここまで来たら、腹を括るしかないでしょ」


その言葉に、ジェイドは少し驚いたように目を見開いた。


「私達を簡単に許すおつもりで?」

「謝罪は受け入れるけど、許すつもりなんてないわよ」


ガウナは吐き捨てるように言った。


「寛大なお心に感謝します」

「どういたしまして。それで?なんで私は、陛下の情婦としての役割を担うことになったかぐらいは、ご教示賜れるのよね?大佐殿」

「もちろんです。……ところで、陛下が本当に貴女を愛しているから、と言ったら納得します?」


冗談混じりに問いかけたが、ガウナが真顔で反射的に答える。


「んなわけないでしょ!あの人、私とシてる時、誰かの面影を私に重ねて抱いてるんだから……!」


ジェイドはその答えと彼女の推察力に息を呑んだ。
ガウナの口から紡ぎ出されたのは、あまりにも予想外すぎるものだった。

ガウナ自身も少々戸惑っている様子だったが、それでも言葉を繋げる。
その表情に迷いはなかった。


「戦いの中に身を置く人ならわかるんじゃない?目の動作とかで、相手の瞳にうつる感情がわかるっていうかさ−−……。あの人、進んで皇帝になったわけじゃないでしょ?」

「ええ……。彼は私の妹のネフリーと……恋仲でした。二人が惹かれ合った頃、ピオニーの即位と預言の所為でネフリーを諦めるしかありませんでしたが」

「その話を聞いて、納得した。いくら陛下がネフリーさんを一途に思って独身を貫いても、性欲や老害達の意見をいつまでも抑えておけないものね。……だったら、決めた。互いに心の底から添い遂げたい人が見つかるまで、陛下のダッチワイフでいてあげるわよ」


彼女は、ピオニーを庇うことにしたのだ。

ピオニーが、自分ではなく、ネフリー・オズボーンという人間が好きだということを理解した上で。
ピオニーの本当の想い人が自分ではないとわかっていても、ピオニーの気持ちを尊重して、彼の愛妾になることを選んだ。


ジェイドは心底、自分が情けなくなった。
結局、自分は自分のことしか考えてなかったのだと痛感させられた。
ジェイドは俯いて顔を覆ったまま、ぽつりと呟く。
こんなことを言いたくはなかったが、言わざるを得なかった。
せめてもの罪滅ぼしとして。
この女性に真実を伝える義務があると思ったからだ。ジェイドが重い口を開きかけた時だった。


部屋の外からバタバタと足音が聞こえてきたのは。
何事かと扉の外を覗いてみると、そこには血相を変えた衛兵の姿があった。
彼はジェイドを見つけるや否や、耳元に口を近づける。


「侵入者です!」


ジェイドの全身の血が一瞬にして凍りつく。


「数は?」

「一人。ですが、手練れのようでして……既に宮殿内に数名の死傷者が出ております。恐らく、目的は陛下のお命かと。カーティス大佐にはすぐに応戦の準備を願います。私は先に」


それだけ言うと、衛士は走り去っていった。
ジェイドはすぐに行動を開始する。

衛士とジェイドの会話が聞こえていたガウナの顔色も青ざめていた。


「ジェイド君、私も行かせて!」

「体の調子が悪かったのでは?」

「それでも行くわよ!!この国の主を死なせるわけにはいかないでしょ!」


ベッドから飛び出して、ガウナはジェイドと謁見の間へと急ぐ。





ピオニーは玉座に座っていた。
その傍らには、護衛の兵達が控えている。

間に合ったジェイドとガウナは、そんなピオニーの前に立っていた。


ピオニー以外の人間は物々しい警戒をしているというのに、命を狙われている本人は退屈そうに欠伸をした。

もうすぐ夕食の時間になる。
そろそろ、食事にするかと椅子を立ったその時、突然、謁見の間のドアが開かれた。


入ってきたのは一人の男。
長い白銀の髪、背の高い偉丈夫。

男は、腰から剣のようなものを抜いて構えた。
刀の刀身の上に銃口がついたような銃剣。

ピオニーは呆れたようにため息をつく。

どう見ても、やる気満々の態度。
殺気だって今にも飛びかかってきそうだ。
ピオニーは、やれやれと肩をすくめる。
そして、ゆっくりとした動作で腕を組んだ。

それを見た男の目が見開かれる。
次の瞬間、信じられない速度で間合いに飛び込んできた。
ピオニーの首筋を狙って、鋭い突きを放つ。
しかし、それは空を切っただけだった。

ガウナがピオニーの体に飛びついて捻らせ、攻撃をかわしていたのだ。
男の動きはジェイドにも見えていたが、普通の人間では到底不可能な動きだった。

ジェイドは、目の前の男の動きに驚愕する。


ピオニーに攻撃を仕掛けた男は、そのままの姿勢で固まってしまった。
ピオニーはその様子を冷ややかな目で見ている。
まるで、出来の悪い部下を叱責するような口調で言う。


「お前、誰に喧嘩売ってんのかわかってるんだろうな?」


ガウナの右手が動く。
指先が僅かに動いたように見えた。
次の瞬間、その手が止まる。
いつの間にか、男が五メートルほど離れた所に後退していた。

ジェイドは、自分の目を疑った。
一体、何をして、されたのだろうか。
全く見えなかったのだ。

ガウナの手が動いたと思ったら、二人の間には既に間合いが取られていた。


ジェイドは、目の前の光景が理解できなかった。
男はガウナの次の手を捉えようとしているようで、ピクリとも動かない。
互いに構えを解かないことで、心と時間に猶予ができたのか、男の方が先にガウナへとひとこと投げた。


「お前……リムか?」

「なに?」

聞き慣れない人名に首をひねると、男は自己完結して言葉をぼやく。


「そうか……お前はまだ、ガウナ・ヴァレンタインだったか」

「さっきからなんの話をしたいの?オニーサン」

ガウナはジャグリングさせていた短剣を、正しい構えに持ち直した。
まだ続ける気でいるガウナを尻目にかけると、背中を向けて男は語り出す。


「思念体だと、ここまでか……まあ、いい。しまいだ。それに、記録を持たない鼠輩に割く時間はない。お前がどこにいようと、ハイウェポンの一つ……"カリーナ"を心臓に宿す限り、周囲を不幸にせねば気が済まない宿命よ」


不吉な讒言だけを巧みに言い抜けて、男の足元から細かなミントグリーンの気泡の立ちのぼりと一緒に、男は消えていた。

不可思議な現象に、そこにいた誰もが立ち竦んでいると、先陣を切って正気を取り戻した者から活発に動き出す。
ジェイドは慌てて駆け寄ると、ガウナに触診する。そして、ほっとした表情を浮かべた。

よかった。大きな怪我はしていなかったようだ。


ジェイドは、ピオニーの方を振り返る。
ピオニーもジェイドと同じことを考えていたのか、一安心したように頷いた。


ひとまず脅威は去ったものの、ピオニーはその日の夕食を取る気にはなれなかった。



ガウナが無事だったことと、侵入者の撃退に成功したということで、今日のところは解散となったが、部屋に戻る途中、ガウナは廊下でピオニーに呼び止められる。


「あの男に守ってもらった上に、疲れているところ悪いが、さっきのことでおまえに聞かなきゃいけないことがある。ついてきてくれるか?」

「もちろんです。陛下」


ガウナが言い終わらない内に、ピオニーは歩き出した。
ガウナもすかさず追随する。

案内されたのは宮殿の奥に続く部屋で、ピオニーのもう一つの公室であった。
ピオニーはガウナと公室に入ると、わざと音を立てて扉を閉めた。早足でガウナへ歩み寄ると、彼女の腰に腕を回し、勢いよく持ち上げた。


「陛下!?」


アンティークなコンソールテーブルの上に座らせる。
テーブルの両端を掴んで、彼女の前に立ちはだかり、追い詰めた。
ガウナは目を丸くしてピオニーを見上げる。
まるで悪戯が成功した子供のようだ。

ピオニーは満足げに口角を上げると、そのまま顔を近づける。
唇を重ねた。
ガウナの目が大きく見開かれる。

そのまなざしがピオニーの心をかき乱した。
理由はわからない。だが、なぜだか無性に心が騒ぐ。


「さっきの男は、過去におまえを孕ませた相手か?」

「わからない。色んな奴に抱かれたからね」

「質問を変える……もし、産んだ子供の父親がアイツだったら良いとか、思ってたりするのか?」

「あんな危ない奴と夫婦になるくらいなら、私は処女受胎に一票投じるわ」

「……なら、男を知らない体に、俺がそれを教えても良いよな?」

「いらなっ……、ぁ……っ」


スカートの中にピオニーの手が入り込んだ。
抵抗しようとしたが、下着をを纏わない秘唇をすくい上げるように指で撫でられ、甘やかな声が漏れた。


「"ここ"は、俺のレクチャーを受けたがってるようだが?」

「違っ……、う……」


すでに潤った部分を何度も擦られたあと、ピオニーの指がぬぷりと埋め込まれる。
蜜壷を苛みながら、ガウナの乳房の柔らかな感触を楽しむように、銜え揉む。
舌先で乳首を口内で押し込まれては、コロコロと転がされ、ガウナのそこはあっという間に硬く勃起してしまった。


「はぁ……っ、あ、−−あぁ……ん……っ、ン、む……っぅ」


顔を傾けてキスをしてきたピオニーに舌を絡めて応え、蜜壷の中をなぞる彼の指にガウナは奔放に快楽を示す。
潮騒に混じり、自分たちの吐息とプチュ、チュク……蜜壷を掻き混ぜられる音が聞こえた。

体の奥深くにまでピオニーの指が触れ、愛撫してくる。
敏感に起ち上がった肉芽をツルリと撫でられて、ガウナは微かな悲鳴を上げた。


唇の端から唾液が零れた。
それを舐め取るように、ピオニーはガウナの口元へ舌を伸ばす。
口腔内に忍び込んだ彼の熱い舌に自分のものを重ねて擦り合わせると、頭の芯まで蕩けてしまいそうだった。



ガウナはうっとりと瞳を閉じると、いつの間にか二本に増やされたピオニーの指が、ガウナの内壁を押し広げていく。
その圧迫感さえも気持ちよくて、ガウナは無意識のうちにもっと欲しいとばかりに腰を動かしていた。
不意に胎内を弄っていた指先が抜けていき、喪失感を覚えた直後、ひくつく秘裂に押し当てられた熱くて硬いものに目を見開いた。

見下ろしてくるピオニーの青い双眼とかち合い、思わず後ずさろうとしたけれど、すぐに背中へと回されていた腕に引き戻されてしまう。
そのまま抱き上げられて、近くに置かれたソファベッドの上に仰向けになったピオニーの上に乗せられてしまった。
逃げようとしてももう遅い。



膝裏に手を差し入れられ大きく開脚させられた状態で固定され、既に硬く猛っているピオニー自身を下肢の中心に当てられてしまう。
今更のように抵抗しようとしたって無駄だ。
そんなこと、分かりきっているはずなのに……。
ガウナは咄嵯に身を捩って逃れようとしたものの、無防備に晒された下腹部に感じる圧倒的な存在感に怯んでしまった。

ピタリと押し当てられたまま動かないそれに、ガウナは震えながら息を飲む。
怖かった。
怖いと思った。
それなのに、体は勝手に期待して熱を上げている。
こんな風に感じてしまう自分が嫌だった。



自分勝手な欲情をぶつけられているだけなのに、どうして自分はピオニーを受け入れようとしているんだろう? 何故、この男は自分に執着するのか分からない。
彼が何を考えているのかも理解できなかった。
分からない。
ただただ、不安になるだけだ。
どうしたらいいのか分からなくて、泣きたい気分になってくる。
だけど、涙を流す前にピオニーのものが少しずつ中に入ってきた。


狭い入口を押し広げるようにして侵入してくる質量の大きさに、喉を引き攣らせながら喘ぐ。
内臓を押し上げられるような感覚に全身から汗が噴き出した。苦しい。痛い。熱い……!


それでも何とか全てを収めようとしてくるピオニーの苦しげな表情を見た瞬間、ガウナは必死に呼吸を整えて力を抜こうとした。
すると、それに気付いたらしいピオニーが僅かに眉根を寄せながらも笑みを浮かべる。


それから彼はガウナの太股を掴む手に力を込めて一気に突き上げた。
ズブッと勢いよく最奥まで貫かれ、声にならない悲鳴を上げる。
目の前が真っ白になりそうな衝撃にガウナの体がビクビクと痙攣した。一瞬気を失いかけたけれど、すぐに揺すぶられて意識を取り戻す。
激しい律動が始まった。
ガツガツと貪るように突かれて、その度に結合部から蜜液が溢れ出す。
濡れた音と共に、ガウナの口から甲高い悲鳴が上がった。


「ぁ……っ、あ……、−−−−あぁ……っ」


何度も達しているせいで敏感になっている胎内は、いつも以上にピオニーのものを感じ取ってしまっているようだ。
まるで意思を持った生き物みたいに絡みついてくる内壁に、ピオニーは荒々しく息を吐いた。
その拍子に額から流れ落ちた汗が、ポタリポタリとガウナの顔に降り注いでいく。
普段の情事では絶対にありえない光景だった。



こんな風に余裕のないピオニーの姿を見る日が来るなんて思ってもいなかったのだ。
だが、それは同時に、今までどれだけ彼が世上や君主としての立場に我慢させられていたのかを思い知らされることでもあった。


自分のことで精一杯だったガウナは、自分の行動のせいでピオニーに辛い思いをさせてしまっていたことに気付かなかった。
そう思うと、胸の奥底にある罪悪感が増していく。
それと同時に、彼に対する申し訳なさも湧き上がってきた。



――ごめんなさい……。でも、これからは……!



心の中で呟いて、そっとピオニーの首に両腕を巻き付ける。
すると、突然動きを止めたピオニーが驚いたように目を瞬かせた。


ガウナの行動に虚を衝かれた様子だったが、すぐに苦笑いを浮かべると軽く口付けてくる。
そして、ゆっくりと腰を引いていき、ギリギリまで引き抜いたところでもう一度打ち付けた。
そのまま小刻みに腰を動かしながら、次第にストロークを大きくしていく。
ガウナはその刺激に体を震わせながら、与えられる快楽に酔い痴れた。
そうして再び絶頂を迎えた時、ピオニーもまたガウナの中に熱を吐き出していた。


ドクリドクリと脈打つものを中で感じ取り、ガウナは熱い溜息をつく。
暫くの間、二人とも言葉を交わすことなく、ただお互いの体温を分け合うように抱き合っていた。
やがて、どちらからともなく唇を重ね合わせて舌を絡め合い、深く繋がったままの状態で愛撫を続ける。
そうやって時間を過ごしていくうちに、自然と二人の体は離れていた。


体を起こしたピオニーは、ガウナの中から自身を抜き取る。
途端に栓を失った秘所からは、ドロリとしたものが溢れ出てきた。それを指先で掬い取ったピオニーは、そのまま指先を口に含む。
その様子を見ていたガウナは、カッと頬を赤らめて視線を逸らせた。
今更恥ずかしがるようなことではないのかもしれないけれど、こういう時の彼の仕草は妙に艶めかしく見えるから困る。
しかも、それが無意識だというのだから尚更質が悪い。


ガウナは熱くなった顔を片手で覆い隠しながら、恨めしげな眼差しを向けた。
そんなガウナの様子に、ピオニーが小さく笑う気配が伝わってくる。
しかし、その瞳には、まだ熱が残っているように見えた。
ガウナはそれを確認してから、恐る恐る手を外して顔を上げた。


目が合った瞬間、彼は嬉しそうに微笑んで手を伸ばしてきた。
優しく抱き寄せられて、背中に腕が回される。
温もりに包まれて安心すると同時に、なんだかくすぐったくなってきてしまった。
思わずクスッと笑みが零れる。それを見たピオニーが不思議そうな表情をした。


なんでもないと言って首を横に振ってみせる。
それから、ふと思い付いたことを口にした。


「……ねぇ、ピオニー……」

「ん?」

「……どうしても私じゃなきゃ、ダメだった?」


唐突な問い掛けに、ピオニーは一瞬呆気に取られたようだった。


「どうして、だろうなぁ……眠っているおまえの顔がタイプだったからかもな」

「正直な答えで、逆に安心したわ」

「おまえの顔がタイプなのは本当だぜ? ずっと手元に置きたいとは思ってる。おまえの納得できる答えになったか?」

「100%ではないけどね」


ガウナの返事を聞いたピオニーは満足そうに笑みを浮かべる。それから、ガウナの額にキスを落とした。
それから少し真面目な表情になって、今度は唇に口づけてくる。


啄むような優しい口付けを繰り返しているうちに、だんだんと深いものに変わっていった。


「……続きをしてもいいか?」

「嫌って言ってもやるんでしょ?」

「話が早くて助かる」


ピオニーはガウナの身体を押し倒した。
そして、ゆっくりと腰を沈めていく。先程まで受け入れていたものよりも大きなそれに、ガウナの口から苦痛の声が漏れた。
大丈夫かと尋ねる声に小さく首肯して答える。
すると、ピオニーはガウナの腰を掴み直し、少しずつ中へと押し入ってきた。


一番太い部分が入口を通り過ぎると、あとは楽に奥まで入っていくことができた。
ガウナは大きく息を吐いて圧迫感に耐える。
やがて全てを収めたピオニーが、ガウナの顔にかかった髪を掻き上げて額に唇を寄せてきた。
そこで初めて、自分が汗まみれになっていることに気付く。


行為の最中は夢中だったせいもあって気にもならなかったけれど、終わってしまえば急に羞恥心が込み上げてきた。
慌てて上体を起こそうとしたガウナだったが、すぐにピオニーによって阻止されてしまう。
そのまま唇を塞がれてしまい、ガウナは仕方なく彼の肩に手を置いた。
しばらくして離れた時には、お互いに汗ばんでいた。


それを見下ろしながら、ピオニーは苦笑いを浮かべる。



「――すまん。もう少しだけこのまま……」


そう言って、再びガウナの上に倒れ込んできた。
ガウナは驚いたように目を瞬かせていたが、すぐに諦めたように苦笑いを浮かべると、そっとピオニーの頭を撫で始めた。


「……仕方がないですね。もうちょっとだけですよ」


ガウナの言葉に、ピオニーが嬉しそうに破顔する。
そして、彼女の胸に顔を埋めたまま、静かに瞼を閉じたのだった。




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