06
その日の午後、フキは一人である場所へと向かっていた。目的地はもちろん、伍番街スラムの教会だ。
教会の前に辿り着くと、緊張した面持ちで扉を開ける。
そして礼拝堂の中を見渡すが、そこには誰もいなかった。
(やっぱり……いるわけないか)
フキは落胆しながら肩を落とす。
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
(もしかすると、今日は来ていないだけかもしれねーな!)
自分にそう言い聞かせると、フキは礼拝堂の奥の祭壇近くに咲いた、花畑へと向かった。そして、そこで膝を抱えて座った。
気を紛らわせるため、ソルジャー時代に支給された携帯電話のディスプレイ画面を開く。
ニブルヘイムの事件の時に壊れたのか、電話もメールもできなくなった。
唯一の希望は、撮影した写真の観覧だけはできることだろう。
写真フォルダには、恩師や数少ない友人達との思い出がたくさん詰まっている。
任務先の景色や、珍しい食べ物だけを撮ったものもある。
それから、当時の仲間たちと過ごした日々を懐かしんだ。
(……あの時は楽しかったな)
フキはその光景を思い出しながら、思わず笑みを浮かべていた。
だが同時に、仲間達はもういないことを実感し、悲しみに暮れる。
(俺が、エアリスとザックスの仲を受け入れていれば……。俺がエアリスを独占したいがために、ザックスの救出を躊躇って見殺しにしなければ……)
そんなことを考えているうちに、いつの間にか時間が経っていたらしい。
気がつくと、目の前に人影があった。フキは慌てて立ち上がる。
そこに立っていたのは、見覚えのある女だった。
彼女は、赤いジャケットを羽織り、薄いピンクのワンピースに身を包み、手籠を腕にかけていた。
フキに駆け寄り、声をかける。
「やっと、会えたね……」
彼女は嬉しそうな表情を見せる。
一方、フキの方は驚きのあまり、目を大きく見開いて固まってしまった。
フキにとって、彼女とは複雑な存在だった。
彼女−−エアリス・ゲインズブールの前から逃亡して、以来ずっと会うことを躊躇っていたからだ。
だが、まさか向こうから自分に会いに来るとは思わなかった。それも、こんな時間にこの場所へ来るなんて予想外にも程がある。
もしかしたら、自分を恨んでいるかもしれない。
いや、確実に恨まれているに違いない。
それなのに何故?どうしてわざわざ、自分のところに来たのだろうか。
様々な疑問が頭の中に浮かび上がる。そんなフキの様子を察したのか、エアリスは優しく微笑んで言った。
「ほんとうに、フキ……なんだよね?」
まるで、聖母のような慈愛に満ちた眼差しで。
彼女はフキの手を取ると、そのまま両手で握り締めた。
フキは彼女の行動に動揺する。
「エ、エアリスっ!?えっと、その、久しぶり?」
「久しぶり、じゃないよね?八番街にいた時、わたしを避けてた!」
エアリスの勘の鋭さに、フキは言葉を失う。
そして、視線を逸らすように俯くと、申し訳なさそうに呟いた。
「ごめんなさい……」
確かに、自分はエアリスを避けていた。
でもそれは、彼女と再会して、昔のような関係に戻ってしまえば、あの時みたいに彼女を独占したいと願ってしまう自分がいると思ったからだ。だから、昔のように戻ることを拒んだ。
それだけのことだった。
だけど、それを正直に伝えることはできなかった。
それに今の自分は、過去の自分と全く違う。
ソルジャーだった頃のように、無邪気ではいられないのだ。
すると、エアリスはフキの顔を覗き込みながら尋ねる。
「いつ、こっちに戻ってきたの?」
その時、彼女の大きな瞳と目が合った。
(ち、近けぇ……!)
フキは自分の顔に熱が集まってくるのを感じた。
そんな彼の様子に気づくことなく、エアリスは話を続ける。
「でも、フキが帰って来てくれて、よかった~~」
そう言って安堵したのか、満面の笑みを浮かべた。
その笑顔を見た瞬間、フキの心の中で何かが変わった気がした。
今まで抱えていた感情や迷いが全て消え去り、心の底から湧き上がってきた想いを口に出す。
「今からでも、エアリスのささやかな希望を俺が叶えてもいいかな?花売りワゴンは……ザックスが帰って来ないと、直せないけどさ」
それは、とても単純なものだった。
この笑顔を守りたい。彼女を悲しませたくない。
そして、できることなら幸せにしてやりたいと、そう思った。
すると、エアリスは彼の反応に満足げに笑うと、こう告げた。
「それじゃ、フキの分のささやかな希望、32個ぜーんぶ、叶えてもらいましょう!」
その発言に、フキは苦笑いを浮かべるしかなかった。
それから、二人は他愛もない会話を交わした。
七番街スラムでの生活やアバランチに就職したこと。
ソルジャーを辞めたことはぼかしたが、話題は尽きなかった。
だが、楽しい時間はあっという間に過ぎていくものだ。
ふと、時計を見ると時刻は既に正午を過ぎていた。
そろそろ帰らなければ、分派での仕事に支障が出るだろう。
そう考えたフキは、別れを告げる。
「もう、行かなきゃ。仲間ともはぐれちまったし」
「また、会えるんだよね?」
「うん」
「シスネにも、会ってあげてね。あの子、泣いてたよ……」
エアリスの言葉を聞いて、フキは自責の念に駆られた。
シスネといえば、普段は冷静沈着で、任務中でも滅多に取り乱すことのない人物だ。
そんな彼女が、自分が死んだくらいで涙を流したという話を聞けば、誰だって驚くに決まっている。
泣かせた原因は自分にあるのだが、それでも彼女には謝りたかった。
短期間ではあったが、一度は恋仲に発展した相手なのだ。
ろくに挨拶もせずお別れなんて、それこそ彼女に失礼だ。
だが、今は一刻も早く仲間のところへ戻らなければならない。
フキはエアリスに向かって言った。
「うん、会えたら謝り倒すよ」
エアリスに背を向けると、教会の入り口に向かって歩き始めた。
だが、数歩歩いたところで、後ろからバキバキッと嫌な音と共に、重量感のあるものが降ってくる気配がした。
「エアリス!危ねえ!!」
フキは叫びながら、エアリスに覆い被さった。その直後、背中に強い衝撃を受ける。
フキは痛みに耐えながらも、必死になってエアリスを守る。
(くっ……何がどうなってんだよ?)
状況を把握しようと、顔を上げた時だった。
そこには、見覚えのある人物が花畑のど真ん中に倒れていた。
フキはその姿を見て驚愕する。
何故ならば、そこにいたのは、昨日別れたはずのクラウドの姿があったからだ。
彼の周囲には、細かい鉄屑と土埃が舞っていた。
おそらく、五年前のザックスと自分のように、上の魔晄炉からこの教会まで落ちてきたのだろう。
フキは、エアリスに怪我がないことを確認すると、ゆっくりと身体を起こした。そして、彼女に手を差し伸べる。
一方、クラウドはまだ意識を失っているようで、全く起きる気配がなかった。
このまま放置しておくわけにはいかない。
フキは仕方なく、クラウドに回復魔法をかけてやることにした。
「フキ、その人のケガ、どう?」
背後からエアリスの声が聞こえた。
振り返ると、彼女は心配そうな表情を浮かべていた。
彼女の質問に対して、サムズアップで答える。
回復魔法の効果のみならず、やはり、ソルジャー・クラス1stともなれば、回復力は普通の人間とは比べ物にならないようだ。
「大丈夫だよ、エアリス。よっぽど頑丈な造りしてんのか、目立った外傷はないしね」
すると、エアリスは安堵したのか、胸を撫で下ろした。
そして、改めてクラウドの方を見る。すると、エアリスは少し驚いたような声を上げる。
「あ、この人!」
「顔見知り?」
フキが尋ねると、エアリスは大きく首を縦に振った。
「うん……。フキ、どこかに行っちゃった後、この人、ソルジャーって言ってた」
彼女の話を聞き、フキは自分の心臓が大きく跳ね上がるのを感じた。
まさか、ここでもクラウドの不確かな肩書きを聞くことになるとは、思わなかったのだ。
だが、同時に疑問が生じる。
(俺のいない五年の間に、何があったんだ……?本当にクラウドはソルジャーになったのか?)
その答えを知る者はいない。
フキはただ、目の前にいる男を見つめることしかできなかった。しかし、いつまでも寝かせておくわけにもいかない。
「もしも~~し!」
エアリスは大声で呼びかけるが、やはり返事はない。
仕方がないと思いつつ、今度はクラウドの頬をペチペチと叩く。すると、ようやく反応を示した。
小さくうめき声を上げながら、目を覚ました。
そして、ゆっくりと上体を起こすと、フキとエアリスの顔を見てこう言った。
「あんた達は−−」
まるで、幽霊でも見たかのような表情で。
「エアリス、名前、エアリス」
エアリスがそう言うと、クラウドは再びフキの方を見た。
「ガウナ……なのか?」
「数日ぶりだな、クラウド」
「無事だったのなら、何故セブンスヘブンに帰ってこない?バレット達があんたを心配していた」
「悪か……」
「ガウナ?この人、フキだよ?」
フキが謝ろうとすると、エアリスが横から口を挟んだ。
クラウドはエアリスの言葉を聞いて、目を大きく見開く。
フキも彼女の言葉を聞いて、驚きを隠せなかった。
「だから、フキ!ガウナなんて、名前じゃない!」
エアリスは必死になって訴えた。
フキは困ったように笑うと、エアリスに向かって小声で話しかける。
「エアリス、その、実は調べたいことがあってさ。人前では、あまり俺の本名を口にしないでほしいんだ。頼むよ……」
フキに頼まれ、エアリスはコクリと素直にうなずいた。クラウドに向き直ると、再び謝罪する。
「わりぃけど、しばらくは偽名の方で呼んでくれ。クラウド」
「そうまでして、隠したい名前なのか?」
「本名で呼ばれると、すご~~く面倒臭いことに巻き込まれるからな」
「……わかった」
だが、クラウドはまだ納得していないようだった。
フキは話題を変えるためにも、気になっていたことを尋ねた。
「ってか、クラウドはどうしてここに、落ちてきたんだ?」
フキの質問に、クラウドは一瞬だけ押し黙った。
そして、しばらく考えた後、フキに告げた。
「伍番魔晄炉で……仕事があったんだ。ところで、ここは?」
「スラムの教会。伍番街。いきなり、おちてくるんだもん。驚いちゃった」
エアリスは嬉しそうな声で言う。
すると、クラウドは申し訳なさそうな顔をした。
自分のせいで彼女を驚かせ、世話をしている花々をダメにしたと思っているのだろう。
彼は立ち上がって埃を払うと、二人に向かって礼を言う。
「世話になった」
そして、すぐに教会から出て行こうとした。
だが、エアリスはクラウドの腕を掴むと、強引に引き止める。
クラウドは不思議そうに振り返りながら、彼女の顔を見た。
「ね、せっかくの再会だから、少し、お話しする?」
「少しなら、いい…」
「やった!!それじゃあ……」
エアリスは楽しそうな笑顔を浮かべながら、何かを言おうとした。
しかし、その時、教会の扉が勢いよく開かれた。
一体、誰がやってきたというのか? 三人は顔を見合わせた。
「邪魔するぞ、と」
そこに立っていた人物を見て、エアリスは顔を顰めた。
なぜなら、そこには、所属先は違うがフキのかつての同期でもあり、神羅カンパニーの総務部調査課≪タークス≫のレノがいたからだ。
フキは心の中で舌打ちをした。
(まさか、こんな時に……。よりによって、会いたくない奴が来やがった)
だが、フキのそんな思いとは裏腹に、レノはクラウドの姿を見てニヤリと笑みを浮かべた。獲物を見つけた、肉食獣のように。
「おまえら、何?」
「こっちの人、わたしのボディガード。ソルジャーなの」
エアリスは警戒心を露わにしながら、フキの腕を掴んだまま離さない。
フキもクラウド同様、レノに鋭い視線を向けている。
しかし、レノは全く気にすることなく、クラウドに近づいていった。
「ソルジャー?」
「元、ソルジャーだ」
「あらま、魔晄の目」
クラウドが答えると、レノはまるで珍しい物でも見るかのように、まじまじと覗き込む。
クラウドは嫌そうに眉根を寄せて、一歩下がった。
その様子を見て、エアリスが慌てて間に割って入る。
「ボディーガードも仕事のうちでしょ?ね、なんでも屋さん?」
「え……?」
「わたしのカン、当たるの。ボディーガード、お願い」
エアリスが必死に訴えかけると、クラウドは戸惑いながらも渋々と承諾した。
「ああ、いいだろう。でも、安くはない」
「じゃあね、デート1回!」
「エアリス!?」
エアリスの提案に、フキが思わず声を上げた。
クラウドも驚いた様子で、彼女を見る。
「この言葉、一度言ってみたかったの!」
エアリスは悪戯っぽい笑みを浮かべると、胸の前で手を組んだ。
その仕草はとても可愛らしく、クラウドは呆れたような表情を見せる。
そして、仕方がないといった感じでため息をつくと、彼女の要求を受け入れた。
「へえ、やっぱり本物かよ。−−クラスは?」
「ファースト」
「クッ、ハハハ!いくらなんでも、ファーストっておまえよぉ~~」
レノは大笑いすると、クラウドからフキへと視線を移した。レノはギョッとしたように、フキの顔を見る。
フキは険しい顔をして、レノを睨みつけていた。
レノはクラウドの反応をさんざか楽しむと、今度はフキに向かって口を開いた。
それは、フキのことを見極めようとするかのような、どこか試すような口調だった。
「おまえもボディーガード?ってか、どっかで見たことあるような顔だぞ、と。ちょっと顔貸せ」
「え?やだよ」
「い~~から!こっち来い」
レノはフキの腕を掴んで、強引に引っ張っていこうとする。
クラウドはフキを庇うようにして、レノの前に立ち塞がった。
レノはその行動に驚きつつも、不敵な笑みを浮かべる。
そして、クラウドはフキを自分の後ろに押しやって、レノと対峙するように立った。
クラウドとレノの体格はさほど変わらない。しかし、レノには自信があるようだった。
クラウドはフンと鼻を鳴らすと、バスターソードに手をかける。
「すぐに終わらせる」
クラウドの言葉に、レノは肩をすくめる。
そして、懐に手を入れ、黒い球体を出すと自分もろとも、二人の足元に叩きつけた。
その衝撃で、電撃をともなった爆発が起きる。フキとクラウドは爆風を受けて、教会の窓際まで吹き飛ばされてしまう。
エアリスは驚いて、悲鳴をあげた。
「きゃあっ!」
「エアリス!」
「おっと、ボディーガードさん2号、つっかまえた~~」
レノはフキを押さえつけると、床の上に押し倒した。
クラウドはハッとして、そちらを見やる。
しかし、レノはすでにフキの首筋に電磁ロッドを押し当て、フキの動きを止めてしまった。
フキは抵抗しようとするが、レノの腕力の方が上回っているようだ。
レノはクラウドを挑発するかのように、ニヤリと笑みを浮かべてみせる。クラウドは悔しそうに、唇を噛んだ。
フキの顎を掴むと、無理矢理自分の方を向かせる。
フキは怯えた瞳でレノを見ていた。
レノは楽しげに笑うと、フキの耳元に囁きかける。
「おまえのこと思い出したぞ、と。セフィロスの弟子のフキ……だっけか?」
フキは動揺した様子を見せながらも、レノを睨み返す。レノは、さらに言葉を続けた。
「ツォンさんとシスネが躍起になって、おまえのこと探してたぞ」
レノはそう言うと、フキの額を指先で小突く。
フキはビクリと身体を震わせた。
その様子を見て、レノは面白そうに目を細めた。
クラウドはフキを助けるべく、レノに斬りかかろうとする。
しかし、レノは素早くフキから離れると、クラウドの攻撃をかわした。
フキは慌てて起き上がると、クラウドの方に駆け寄る。
クラウドはそんなフキを見て、ホッとした表情を見せた。エアリスは急いでフキに回復魔法をかけた。
「フキ、だいじょぶ?」
「じょーぶ、じょーぶ、大丈夫!」
「相変わらず、仲がよろしいことで」
レノはエアリスの行動に感心した様子を見せる。
エアリスはキッとなって、レノを睨みつけた。
レノは再び、ニヤリと笑みを浮かべると、今度はクラウドに向き直る。
クラウドは油断なく、レノに視線を向けた。レノは電磁ロッドをくるりと回すと、クラウドに向ける。
その瞬間、レノは素早い動きでクラウドに飛びかかった。
クラウドはバスターソードで、レノを迎え撃つ。
二人は激しい剣戟を交わしながら、お互いの間合いを取り合うように動いた。
しかし、クラウドよりもレノの方が素早かったらしい。
一瞬のうちに間合いを詰められると、レノの電磁ロッドはクラウドの腹に叩き込まれた。
クラウドはうめき声をあげて、その場に膝をつく。
レノはクラウドを見下ろすと、余裕たっぷりな口調で言った。
「この程度の奴に、ボディーガード任せていいのか?」
エアリスはその様子を見ていることしかできない。
レノはフキの方を振り返り、笑いかけた。
フキはムッとして、立ち上がると、手のひらに刀剣を出現させてレノに向かって走り出す。
しかし、フキの刃がレノに届く前に、クラウドが立ち塞がった。
クラウドはフキを庇うようにして、レノの前に立ちふさがる。
レノはクラウドの意外な行動に驚いたものの、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。
そして、再びクラウドと向かい合う。
二人の剣撃は、教会の中に響き渡っていた。
クラウドはレノの攻撃を避けつつ、隙をついて反撃する。
しかし、レノもそれを軽々とかわすのだった。
クラウドは焦りを感じ始めていた。
バスターソードは重い分、小回りがきかない。そのため、どうしても攻撃が大振りになってしまうのだ。
そのせいで、クラウドはレノに決定的な一撃を加えることができずにいた。
一方、レノは自分のスピードを生かし、攻撃をしかけてはクラウドを翻弄していた。
クラウドは息を切らせながらも、必死でレノの動きについていく。
レノはクラウドの様子を観察するかのように見つめていた。
フキはそんな二人の戦いを見ながら、どうしてよいかわからないといった様子だ。
レノはクラウドが疲れてくるのを待って、攻撃を仕掛けてきた。電磁ロッドがクラウドを襲う。
しかし、それはフェイントにすぎなかった。
クラウドはレノが攻撃をよけることを前提に、次の攻撃の準備をしていたようだ。
レノがロッドを振っても届かない高さまで飛び上がった後、クラウドは空中で一回転した。
レノは驚きのあまり、目を見開く。
クラウドはそのまま、レノの頭上めがけてバスターソードを叩きつけた。レノはなんとかそれを避けることに成功する。
しかし、完全に避けることはできなかったようで、わずかに肩口を傷つけられたようだった。
レノは傷口に手をやると、顔をしかめる。
クラウドはレノにとどめを刺そうと、バスターソードを構えた。その時だった。
「クラウド、ちがう!」
エアリスの叫び声を聞いて、クラウドはハッとする。
その瞬間、三人が立っていた場所から黒いローブを纏った幽霊のような人影が浮かび上がり、三人を抱きかかえると教会の奥の部屋まで吹き飛ばした。
三人は廃材の山に衝突して、床に転がる。
「こいつら……」
「襲って、こないね」
クラウドとエアリスは顔をあげると、お互いにつぶやく。
「おい、開けろ!」
扉の向こうにいるであろう神羅兵が、三人に向けて叫んだ。
クラウドとフキは慌てて起き上がると、エアリスを守るように彼女の前に立った。
「いくぞ」
「うん!」
クラウドの言葉に、エアリスは大きく返事をする。
三人は同時に駆け出した。
投稿日 2022/04/24
改稿日 2022/10/27