02



次の日、フキは昨夜の出来事を思い出し、恥ずかしさに悶えていた。


あの後、フキは気絶してしまい、気付いた時にはソノンの姿はなかった。
フキは、自分が全裸であることに気付き、デジタル時計の時刻を確認しながら慌てて服を身に着けると、部屋を飛び出した。



今日からフキの仕事は、ある場所でアバランチの分派と合流し、監視と牽制を兼ねて分派の人間として行動することになる。
そのためフキは、分派のアジトであるスラム一立派な酒場『セブンスヘブン』に足を踏み入れた。


酒場に入ると、そこには既に分派の構成員が勢揃いしており、皆、武装していた。

フキが店内を見回していると、一人の男に声をかけられた。
男は身長2メートル近い巨漢であり、失われた右手には義手ではなくガトリング銃を着けていた。


この男もアバランチのメンバーのようで、フキのことを待っていたらしい。


「おまえが、"分派"から来た助っ人か?」

「あ、ああ……」

「ここを仕切ってる、バレット・ウォーレスだ。よろしく頼むぜ」


そして、フキに話しかけてきた男がリーダーだと言う。
速やかに名乗り合うと、バレットはこれからの方針を話し始めた。


まず最初に、フキは、今夜の壱番魔晄炉の爆破任務に就くことになる。
その後、他の魔晄炉も順に爆破していき、最終的には、神羅カンパニー打倒を目指すのだそうだ。

フキの任務は、まず魔晄炉に潜入する、爆破担当の構成員を護衛することだった。


「あっちにも、おまえと同じ、オレ達の用心棒をしてもらう奴がいるんだけどよ……。あいつは元ソルジャーだから、いまいち信用できねえぜ」


元ソルジャー……その言葉を聞いて、フキは嫌な予感を覚えた。
バレットの話によると、セブンスヘブンの店主、ティファの幼馴染みだというクラウドという青年が、今回からの護衛役と魔晄炉の案内役を務めるのだという。だが、バレットはそのクラウドのことをあまり信用できない、と言っていた。


神羅に属していたこと自体が、バレットに嫌悪感を与えているようだ。
しかし、仕事仲間となる以上、仲良くしておいた方がいいだろうと思い、フキはクラウドと顔を合わせることにした。店の奥へと進むと、そこには、金髪碧眼の青年がいた。


(あれ……?こいつ、どこかで……)


この青年に、見覚えがあった。
どこで会ったのか思い出そうとした時、先に向こうが口を開いた。


「あんたも護衛役を任されたのか?何かの冗談だろ……」


フキは一瞬にして、クラウドに対して嫌悪感を抱いた。初対面なのに、いきなり喧嘩腰な態度を取ってきたからだ。
バレットの言う通り、これでは信用できない人種だとフキは思った。


「そういうお前は、さぞかし大層な実績を残してきたんだろうな?どうせ、元傭兵くずれとかなんだろーな」

「フンッ、そっちこそ、ファイトマネーを稼ぐぐらいしかしてこなかった口だろ。俺はこれでも元、ソルジャー・クラス1stだ」


そして、意外なことを言い出すのだから、フキは大層驚いた。
まさかこんなところに、元同業者がいるとは思わなかった。しかも、クラス1stだという。


「はぁっ!?寝言は寝て言えよ!」

「寝言なんか言っていない。それに、俺の瞳を見れば、ソルジャーかそうでないかぐらいはわかるはずだ」


それから二人は睨み合いを始めてしまった。
フキとしては、できればクラウドとも上手くやっていきたいと思っていたのだが、このままでは無理そうだった。


「クラウド!誰彼構わず、喧嘩を売らないの!ごめんなさい、彼、誰に対してもこうで……」


そんな二人の間に、仲裁に入る者が現れた。先程まで厨房にいたはずの、ティファだった。


「ティファがこいつに謝る必要はない」

「もう、そこまで!クラウドも言い過ぎだよ?」


ティファは、クラウドの腕を掴むと強引に別の席へと引っ張っていった。そして、そのまま説教を始めた。
クラウドは、うんざりした様子だったが、それでも大人しく話を聞いていた。


(でも、本当にあいつが……あのクラウドなのか?)


クラウドの顔を見て、フキはある疑問を抱いていた。
フキが思い当たるクラウドと言えば、神羅軍の一般兵士で、ザックスの友人"クラウド・ストライフ"だ。


ニブルヘイムのあの事件以降、行方がわからなくなってしまい、ずっと気にはなっていた。
それが今になって突然現れ、アバランチにいるというのだから、フキが驚くのも当然だった。


何故こんなところにいる?
しかも、ソルジャーを名乗って。恐れ多くもクラス1stを、だ。

だが、今は仕事に集中しなければならない。
フキは気持ちを切り替えると、二人の後を追った。


二人が座ったテーブルに着くと、フキはすぐに話を切り出した。


「さっきはその、悪かったよ……俺、ガウナ・ヴァレンタイン。改めてよろしく。その、なんて呼んだらいい?」

「あなた……!ごめんなさい、私ったら。ティファって呼んで。こっちのアバランチへようこそ」

「お、おう……」


まずは、お互いの自己紹介から始めようということになった。
クラウドがティファに続く。


「クラウド・ストライフだ」

「なあ、クラウド。クラウドって、どんな任務に就いていたんだ?」


次に、フキがクラウドに尋ねた。


「どんなって……」


クラウドが答えようとしたその時、三人の男女が割り込んできた。


「ティファだけ、新入りさん達と話しててずる~~い!」


女性は、フキに抱きつきながら言った。
その後ろで、男二人は困り顔で立っていた。


彼女はジェシー。
爆弾から偽造IDまで、作戦に必要なものを揃える整備担当で、どうやらフキやクラウドのような美男子には目がないようだ。

そして、太めにころりとした体格の男がウェッジで、薄く顎髭を蓄えた男がビッグスだという。三人とも、バレットと同じく古参のメンバーなのだそうだ。


「ジェシーは面食いっす!俺はウェッジっす。よろしくっす!」

「余計なこと言わないで、ウェッジ!もっと、イケメンを見つめていたいところではあるけど、そろそろ作戦の打ち合わせ、始めるよー!」


ジェシーは元気よく、声を上げる。
こうして、フキ達は決行時間ギリギリになるまで作戦会議を続けた。



「よし、そろそろ行くぞ」


バレットは立ち上がり、皆に声をかける。アバランチが作戦を決行するその時が来た。
いよいよ、本格的な星の救済を自分達は成すのだ。








投稿日 2022/04/15
改稿日 2022/10/15




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -