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ミドガルズオルムは巨大な胴体で締め付けてくるが、クラウドたちはそれを避けて反撃を開始する。

クラウドの大剣とティファの打撃、さらにエアリスの魔法による攻撃が次々と命中し、敵の体力を削る。しかし、ミドガルズオルムはすぐに体制を立て直すと、今度は体内で熱を蓄積させ、その熱をエネルギーに変換した灼熱ブレスを放つ。


「離れろ!」


クラウドが仲間たちに呼びかけ、彼女たちは急いでその場から退く。
灼熱ブレスの凄まじい威力は、地面を伝って響いてくる。クラウドたちは熱風に耐えながら体制を立て直すと、もう一度ミドガルズオルムに向かっていった。


「フキ、例の足止めはできないか!?」

「やりてーとこだけど、こんなに動きが速かったら、無理だ!」

「なら、援護は任せて!」


クラウドからの呼びかけにフキが答え、エアリスの鼓舞とともに反撃が始まる。
ミドガルズオルムの攻撃はさらに苛烈になっていくが、クラウドたちの連携攻撃によりダメージは蓄積されていき、ミドガルズオルムは水中に潜り込んで逃亡した。


「逃げた?」


エアリスの疑問に答えるように、水飛沫をあげてミドガルズオルムが現れる。クラウドを捕食しようと襲いかかってきたのだ。
円状に囲んでから、クラウドにからみつき、水中に引きずり込んでいく。


「クラウド!!」


フキが叫び、クラウドを助けようと水中に潜る。
二人はそのまま沼地に沈んでいき、姿が見えなくなってしまった。


「クラウド!」

「坊っちゃま!」


ティファとミュウは目の前で起こった出来事にショックを受け、動揺を隠せない。


「そんな………………」


エアリスもどうすればいいかわからず、迷っている様子である。

クラウドは水中でもがくが、全く進展しない。意識もだんだん薄れてきており、もはや絶体絶命の状況であった。



(反射的に、飛び込んじまったがどうする!?)


水中でそんなことを考えながらも、フキは打開策を見出せず、ただミドガルズオルムに締め上げられ続けるクラウドを、見ていることしかできない。すると、突然クラウドとフキの間に黒いもやのようなものが現れる。

やがて、魚群のように黒いもやが二人の間を高速で回り始め、人の形を作り出した。
形を成したソレは、クラウドとフキの姿を見ると満足げに微笑を浮かべる。


(師匠……!?)


姿を現したセフィロスに驚愕するフキだが、考える暇も与えてくれない。

ミドガルズオルムが、標的をセフィロスに変えて襲いかかる。
しかし、セフィロスは携えていた刀で一閃し、ミドガルズオルムを一刀両断にした。そしてそのまま、ミドガルズオルムへタービュランスを放つ。
強力な爆発とともに、ミドガルズオルムは陸地まで吹き飛ばされると、巨木に喉元を貫かれて絶命した。


フキは、一連の出来事を目撃しながら呆然としていたが、セフィロスと目が合ったことで我に返り、クラウドの姿を見遣る。
クラウドは気を失っており、フキはクラウドの手を掴み浮上していった。水から上がると、仲間たちが心配そうに駆け寄ってくる。


「クラウド!」

「坊っちゃま!」


エアリスとミュウが呼びかける。フキはクラウドを地面に横たわらせて、すぐに回復魔法をかけたのだった。


「何があった?」


バレットがフキに声をかける。
フキは休息を取りながら、先ほど起こった出来事を事細かに説明した。


「ミドガルズオルムがクラウドを捕食しようとした時に、多分、フィーラーっぽいのが現れたと思ったら……セフィ、ロスが出てきて、そんでミドガルズオルムを倒して……この状況って感じだな」

「セフィロスが、二人を助けたってこと?」

「どーだろ……あの人が何考えてんのか、マジでわかんねーよ」


ティファの疑問に、フキは力なく答える。


(何で助けてくれたんだ……?この間は俺のこと、殺そうとしたくせに)


フキは自分の無力さに落胆してしまっていた。
そんなフキを励ますように、エアリスとミュウが声をかける。


「フキ、泳ぐのうまいんだね」

「坊っちゃまは、海に囲まれた街で育ったんですの!ジェイドさんにすぱるた教育を受けて、泳ぐのは大得意なんですの」

「ジェイド?誰だ、そいつは」

「ボクのご主人様の仲間で、坊っちゃまのぎりのお父さんですの!」

「義理のって……」


何やら気になる説明をされ、困惑するバレットを余所に、気を失っていたクラウドがうめき声を洩らす。エアリスがそれに気づくと、彼に声をかけた。


「もしもーし!わたし、わかる?」

「エアリス……」


クラウドは目を開けると、エアリスの姿を確認した。そして、ティファやバレットのことをぼんやりと見遣る。


「おかえり、クラウド」


エアリスが優しく微笑むと、クラウドは辺りを警戒するように立ち上がったのだ。


「セフィロスは?」


クラウドが問いかけると、エアリスは少し困ったような顔をする。そして、少し逡巡した後で首を左右に振った。

クラウドは、見るも無惨な最期を遂げたミドガルズオルムの亡骸を一瞥すると、大きくため息をつく。


「やっぱり、セフィロスは強いな……」


そう言って、悔しさと過去に抱いていた憧れの入り交じった複雑な表情を浮かべる。クラウドの様子を、フキは複雑そうに眺めていたのだった。




* * *




黒マント達を追えば、自ずとセフィロスに辿り着けるかもしれない。その考えの下、一行は黒マント達の後を追うことにしたのだった。


黒マント達が、閉山されたミスリルマインに入っていったため、一行もミスリルマインへと足を踏み入れる。


「……!」

「セフィロスがいるのか?」

「わからない……」


レッドXIIIが前方を見遣りながら言うと、クラウドが疑問を口にする。
しかし、クラウドは皆の先頭を行きながら、険しい表情を崩さなかった。


「モンスター、いそうだね……」

「いかにも」


エアリスが呟くと、ティファが頷く。


「ザコは適当にあしらう。深追いは禁物だ」

「ザコなんていないよ。わたしには、ぜーんぶ強敵」

「私も」

「ああ、オレもだ。クラウド、なんとかしてくれ!」


三人の気楽なやり取りに、クラウドが苦笑する。


「2000だな」


銭ゲバなクラウドの答えに、エアリスは手揉み屋のコースの料金に例えて、換算する。


「"極上"と"普通"の……あいだくらい?」

「あー……確かに!エアリス、計算早いな」

「なんの話?」

「もみ!」

「もみ?」


フキとエアリスの会話が理解できず、ティファが問いかけるも、エアリスの例えにフキは納得し、ミュウに至ってはもみというワードを気に入ったのか、嬉しそうに連呼するのだった。
詳しい仔細が聞けず、ティファが視線でクラウドに詰め寄る。


「行くぞ。各自、注意してくれ」


クラウドはそれだけ言うと、ミスリルマインの奥へと進んでいく。


「結局、なんなの?もみって」

「いつか、マムに会えばティファにもわかると思うぜ」


ティファはクラウドの態度に、不満そうな表情を浮かべたが、フキに宥められ渋々と後に続いたのだった。




ミスリルマインの奥深くへ進んでいく、一行。


「あっ、あの人たち!」

「意外と行動力あるのな、アイツら……」


一行が黒マントを見かけたのは、第一トンネルに向かう途中であった。


「追うぞ」


クラウドの合図に、一行は黒マント達の後を追った。
トンネルの手前で彼らに追いつこう、という時である。


「「「あっ……!!」」」


黒マント達の一人が、地盤沈下によってできた地割れに転落していったのだ。


「無事だといいな……」

「ああ……でも、深入りしないほうがいい」

「うん……」


クラウドの言葉に頷き、同意しながらも、ティファは転落した黒マントの安否が気にかかっていた。


(ティファの性格じゃ、納得できてないよな……これ)


フキはクラウドに気づかれぬよう、ティファの様子を横目で見遣る。
とうとう見兼ねたバレットが、口に出す。


「だよな……気になるよな…………。よし、オレが行く!」


バレットはそう宣言すると、ティファも頷く。


「うん!私も行くね」

「いや、こういう場所の歩き方には、ちょっとしたコツがいる。素人は、悪いが足手まといだ」


バレットはそう告げると、ティファに向き直る。ティファが何か言う前に、レッドXIIIが口を挟み込んだ。


「私も行こう。多少、心得がある」


レッドXIIIが申し出ると、それに呼応するかのようにフキも手を挙げる。


「なら、俺も行くよ」

「おまえがかぁ~~!?今、オレ言ったよな?素人は足手まといだって!」


バレットは驚いたように言い立てる。
フキが答える前に、ミュウが話に割り込んだ。


「ミュウも行くですの!ボクがいれば、ソーサラーリングの力で、邪魔な岩を砕いたり、ちょっとなら空も飛べますの!」

「いや、おまえの力は知ってるけどよぉ……鉱山の中歩くっつうのは、ハイキングみたいなもんとわけが違うんだぞ?」


バレットは呆れた様子で、ミュウに言う。しかし、ミュウは譲る気がないようだ。
クラウドがバレットに言う。


「ミュウだけでも、連れて行ってやったらどうだ?こういう場所でこそ助けになるのは、事実だろ」


クラウドに言われ、バレットは渋々頷いていた。しかし、フキには忠告するのを忘れなかった。


「あんたは、俺たちと行動しろ。バレットのように、鉱山の上級者コースを行くのは慣れてないんだろ?」

「ああ……まあな」


フキはバレットとミュウ、レッドXIIIを見送りながら頷いた。


「じゃあ、お願い。ごめんね……ううん、ありがとう」

「ああ……他の黒マント、見失うなよ」


ティファがそう答えると、バレットは頷き、転落した黒マントを追いかけたのだった。
残された四人は、他の黒マント達が進んだ方向へと歩を進めていった。





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