05





フキはひたすら街中を走り続ける。
どこへ向かっているかもわからず、ただひたすらに、息を乱しながら走っていた。


頭が痛む。胸が苦しい。
心臓の鼓動が早くなっている。
しかし、どれだけ走っても、頭の痛みは消えず、胸の苦しみは収まらない。


(俺は、どうしたらいいんだよ。誰か教えてくれよ……。)


足を止めて、荒い呼吸を繰り返しながら、フキはビルの壁に凭れ掛かる。
このままでは気が狂ってしまいそうだった。そのときだ。

フキは、自分の目の前にいる男の存在に気付いた。
肩を抱かれ、顔を覗き込む前にフキは男に唇を塞がれていた。男は舌を入れてくる。
フキは抵抗しようとしたが、男の力は強く、簡単に振りほどくことができなかった。


(嫌だ……!こんなところで、知らない奴となんて絶対にイヤだ!!)


男が唇を離す。そして、ニヤリと笑う。
その笑顔を見た瞬間、フキは自分の身体から力が抜けていくような感覚に襲われた。


「ソ、ソノンっ!?なんで……ここに?」

「分派は魔晄炉の爆発を成功させたようだけど、いつまで経ってもあんたがアパートに帰って来ないから。こうして様子を見に行ってみたら、あんたの姿が見えたんだ」

「それで、俺を追ってきたのか?」

「そういうこと。それなのに、あんたは一人でふらついてるし、いったい何をやってたんだ?」


フキは何も答えられなかった。
フキはうつ向いたまま黙り込んでしまう。すると、ソノンがフキを抱き締めてきた。

突然の出来事に驚くフキだったが、すぐに我に返ると、抱きついてきているソノンを引き剥がそうとする。だが、ソノンの力は強く、引き剥がせない。
それでも諦めずに力を振り絞って抵抗していると、ようやくソノンを引き剥がすことができた。

フキはすぐにその場を離れようとする。
しかし、ソノンが再びフキの腕を掴む。
今度はさっきよりも強い力で掴まれているため、とても振り払えそうになかった。


ソノンは真剣な眼差しでフキを見つめている。
フキはその視線に耐えられなくなり、目を逸らす。すると、ソノンは再びフキを強く抱きしめてきた。
フキの顔が紅潮していく。
そんなフキの様子を見て、ソノンはクスッと笑った後、口を開いた。


「もう列車は運休だし、今夜はそこのホテルに泊まろう」

「はぁっ!?」


確かにソノンに処女奪われたが、断じて男に興味はない。
ソノンとのセックスは……気持ちよかった。
しかし、思い出すと悲しくなってくる。


「何だよ。嫌なのか? じゃあ、ここで野宿とその他諸々をおっぱじめるしかないな」

「うぐぅ……」


ソノンの提案通り、二人は近くのラブホに入ることにした。

部屋に入り、まずはシャワーを浴びる。
シャワーを終えてバスルームを出ると、入れ替わりでソノンが入った。
フキはベッドの上に寝転がり、天井を眺めながら物思いに耽っていた。


これからどうすればいいのだろうか。
あのときは勢いでソノンを受け入れたものの、今は正直、ソノンとの関係を続けていくことに不安を覚えていた。
ソノンのことが憎いはずなのに、何故かまた抱かれたいと思ってしまっている。
フキは、その気持ちを振り払うように、頭を振った。

すると、ソノンが風呂場から出てきた。
ソノンは、タオル一枚しか身に付けていない状態で現れる。
その姿を見て、思わずフキの股間が反応してしまう。

慌てて隠すも、ソノンにはバレてしまっているようで、ニヤニヤしながらフキに近付いてくる。
そして、いきなりキスをしてきた。


そのまま押し倒されてしまい、フキの身体に馬乗りになる形でソノンが覆い被さってきた。それからしばらく、ディープキスが続いた。
ソノンが唇を離したタイミングで、フキは押し退けようとしたのだが、ソノンの力が強すぎてビクともしなかった。
仕方なくフキはソノンをどかそうと試みるが、ソノンがフキの乳首を摘まんできたため、動けなくなってしまった。
ソノンはそのまま、フキの耳元に顔を寄せて囁いてくる。


「そんなに、俺が恋しかった?」

「んなわけっ……ないだろ……!」


吐息がくすぐったくて、フキは身を捩らせた。
すると、ソノンは耳に舌を入れてきた。


「んぁっ!?」


ピチャッピチャッという音が脳に直接響いてきて、フキはゾワっとする感覚に襲われた。
ソノンは舌を抜くと、今度は首筋へと移動させていく。
首筋を舐め回した後、鎖骨の方へ下りていき、軽く甘噛みをした。その刺激で、フキの身体がピクッと跳ねる。

その後も、フキの身体中に、次々とキスマークを付けていった。
そして、ソノンの手がフキの胸に触れたとき、フキは思わず声を上げてしまった。


「んっ!あんっ……!」


ソノンはフキの胸に吸い付くと、口の中で転がしたり、吸ったりし始めた。
最初はくすぐったいだけだったが、次第に快感の方が勝るようになっていき、フキは無意識のうちに腰を動かしていた。

それに気が付いたソノンはフキの下半身に手を伸ばし、指先で陰茎の先端に触れる。
フキのそこはもう愛液で溢れており、下着越しでも分かるほどヌルヌルになっていた。
ソノンは愛液を拭った指先を菊門に入れて、前立腺を刺激する。


「ああぁっ!ソノッ、そこ、やめてぇえ!!」


すると、フキは一際大きな声で喘いだ。フキのパンツを脱がせてから、ソノンもズボンとパンツを脱ぎ捨てる。
フキは、ソノンのモノを見て驚いた。


(昨日より、デケェッ!!)


ソノンのそれは、フキの想像以上の大きさだった。
フキの脚を大きく開かせると、その間に自分の身体を入れて、フキのアナルに挿入していく。


「無理、無理だからぁ……!!」

「初めてヤった時から、そんなに経ってないだろ。大丈夫、大丈夫」


ソノンの肉棒がゆっくりと入っていくにつれて、フキの顔が苦痛で歪んでいく。
しかし、それも最初だけで、亀頭が入ってしまえばあとは一気に根元まで入る。
フキは苦しそうにしているが、ソノンは構わずにピストン運動を始めた。


パンッ、パチュッ、パチュンッと肌同士がぶつかり合う音と水音が部屋に響く。
ソノンはフキの尻を掴みながら、激しく打ち付けるように抽挿を繰り返す。


「やぁっ……ん……、ソノッ……ン、イっちゃ……ンッ」


フキは絶頂を迎えようとしていた。しかし、ソノンはそれを許さず、フキの根元を強く握って射精を塞き止めた。
フキは泣き出しそうになるのを堪えながら、ソノンに懇願する。


「おねがっ……!イかせてぇ……」


ソノンはフキを抱き寄せて言った。


「なら、俺の肉便器になる?俺がやりたい時にやらせてくれたら、タンブリン山での罪を軽くしてやるよ」


それを聞いた瞬間、フキの瞳から光が消えた。
そして、フキは首を縦に振った。


「分かった……。お前の言う通りにする……。だから、早く、イカせてくれ……」


ソノンは満足そうな笑みを浮かべると、フキの陰茎を握っていた手を離し、フキの頭を抱え込んでキスをしながら、ラストスパートをかけるかのように激しい動きで攻め立てる。


「あぁんっ!ソノっ、イきたい……!」


そして、ついに限界を迎えたフキは白濁液を放出した。
同時に、ソノンも果てる。

ソノンはフキの中に精液を注ぎ込むと、ズルリと引き抜いた。
それからすぐに、フキのアナルからは大量の精子が流れ出てきた。

フキが放心状態で天井を見つめていると、突然、ソノンが覆い被さってきた。
ソノンはまだ勃起しており、それをフキに見せつけるようにして、再び菊門に挿入した。


「もっ、……やめっ……」


フキが驚いた表情を見せるが、ソノンは容赦なく腰を打ち付けていく。
ソノンは一度射精したが、まだ物足りないのか、フキの身体中にキスマークを付けていった。
フキは、もう抵抗する事すら忘れてしまっていた。ただ、されるがままに犯されていく。
ソノンが再びフキの中で達すると、フキは気を失ってしまった。




フキが目を覚ますと、既に辺りは朝日差し込んでいた。
慌てて起き上がろうとすると、全身に激痛が走り、フキは再びベッドに沈んだ。


痛みに耐えながら、なんとか身体を起こして自分の身体を確認すると、身体中至る所にキスマークが付けられていることに気が付き、顔を真っ赤にする。
しばらく悶えていると、部屋の扉が開いてソノンが入ってきた。

ソノンはニヤニヤしながら、フキに声をかける。


「あんた、俺のココがよっぽど好きなんだな。なかなか離してくれないから、困ったよ」

「ば、ばっか!!そ、そんなことねーよ……!気のせいだ」


フキは、恥ずかしそうに布団を手繰り寄せると、ソノンを睨んだ。


「そういうことにしておく」


ソノンは笑いながら、フキの頭を撫でると浴室に入って行った。


(あの野郎、いつか殺す!)


フキは心に誓った。
しかし、今はそれよりも、この状況をどうするかを考える事にした。
とりあえず、シャワーを浴びようと立ち上がって、フラつく。
すると、浴室からソノンの声が聞こえてきた。


「何度も中出ししたから、無理するなよー」


フキは舌打ちをして、床に座り込んだ。

しばらくして、ソノンがタオルを持って戻ってきた。
ソノンは、持ってきたバスタオルを広げて、フキの下半身を隠した。

それから、ソノンはフキを抱き上げて、ベッドに寝かせる。
フキの髪を拭いてから、ソノンは自分の髪も乾かし始めた。


ソノンのその行動を見て、彼が自分を好い人として見ている事に気付いた。
今すぐ彼の意に添うことはできないが、心のどこかでソノンを完全に拒めない自分がいるのにも、気付いていた。


(なんでだよ……。あんなに酷いことされたのに……もっと、ソノンとシていたい……!)


フキは自分の気持ちがよく分からなくなっていた。


ソノンはドライヤーのスイッチを切ると、フキの横に座った。
そして、フキのお腹に手を当てながら言った。


「無理だと分かっていも、俺はあんたを孕ませたくて、たまらない」


フキは、ソノンの手の温もりを感じながら、心地良さそうにしている。
ソノンは、そんなフキの耳元で囁くように言う。


「愛してる」


フキは驚いて、ソノンの顔を見る。
ソノンは真剣な眼差しでフキを見つめていた。
その言葉の意味を理解して、フキは嬉しさと戸惑いが入り交じった複雑な感情を抱きながらも、何も言えずにいた。


すると、ソノンはフキから離れようとした。
その時、フキは無意識のうちに彼の腕を掴んだ。ソノンの動きが止まる。
そして、二人は見つめ合う。フキはゆっくりと口を開いた。
ソノンは、フキから視線を逸らすことなく、言葉を待つ。フキは、言った。


「俺って、おまえの仇なんだよな?だったら……おまえに夢と誇りを託してくれた友達を裏切るようなことしちゃ、ダメだろ?」


ソノンの目が大きく開かれ、それから、寂しそうな笑みを浮かべた。
ソノンは掴まれていない方の手をフキの頬に当てると、親指で優しく涙を拭った。
フキの瞳から、大粒の涙が溢れていたのだ。

ソノンはフキの唇にキスをした。触れるだけの優しいキスだった。
それから、ソノンは立ち上がると、服を身に付け始めた。
服を着終えたところで、思い出したかのように言う。


「分派の仕事、頑張れよ……」


最後の別れを告げるかのような、口調だった。
ソノンはフキを見下ろしながら、言葉を紡いでいく。


「あんたとは体の関係から始まったけど、でも、いつかきっと……心も捕まえてみせる。……それじゃあな」


フキは、泣きそうになるのを堪えるように、下を向いていた。
フキの頭をポンっと叩くと、ソノンは部屋から出ていった。
一人残されたフキは声を殺して泣いた。

しばらく泣いてから、フキは起き上がると、浴室に向かった。
身体中についた精液を流すと、鏡に映った自分の身体を見て呟く。


「これが、正しいんだよな……?」


身体中に付けられたキスマークが消えないで欲しいと願う自分に気付き、フキは自嘲気味に笑うと、蛇口を閉めた。
それから、シャワーを止めると、バスタオルで身体の水滴を取って、新しい下着を身につける。
着替えを終えると、ソノンと情事にふけった部屋を後にした。




投稿日 2022/04/22
改稿日 2022/10/16




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