TOA×シリーズ


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『復讐にとりつかれる我が魂。苦悩の末にたどりつきたる願望は、我が救済と−−君の安らかなる眠り』


直訳するとお前ら、死ねってか。
ジェネシスさんのLOVELESSの朗読と召喚獣戦にこなれてきた俺とザックス。

そもそも古典劇を予言書みたいに扱うのはいかがなものかと。


アンジールさんは、俺達をただヘリポートに運んだだけで、「おまえたちなら、倒せる」とだけ言い残して去って行ってしまった。
自由すぎるだろ、あのおっさん天使ども。


召喚獣とこれから対峙しようという矢先に、ザックスの携帯端末が鳴り、応答ボタンを押す。
どうやら、電話の相手はエアリスらしい。

俺、エアリスと連絡先交換してないんだけどな……。羨ましいよ、ザックス。


「エアリス?あのさ、あとで電話するよ。お客さんが来てるんだ」


ザックスが振り向きざまに召喚用の魔法陣を確認すると、その裂け目から出てきたバハムート亜種。
俺もザックスにならって、剣を構えた。


「お客に失礼のないようにだとさ」

「むしろ、この客の方が失礼なことしてんだろ」

「だな」




飛んでいる敵への攻撃は相変わらず、苦戦するザックスと俺。
ザックスが陽動で、俺が中経を担うのが常だ。

今回もその戦法でいけるにはいけるが、前回のバハムートとは格が違うらしく、攻撃力が高いのなんのって。
確実に防御しつつ、俺達は攻めて行った。


振り払う攻撃に注意しつつ、タイミングを掴みながら、バハムート亜種の攻撃を回避する。
俺達の攻め方が良いと、バハムート亜種は、大技を放つ準備に取り掛かった。


「またあれかよ!?」

「ザックス、強力な防御壁を張るから、俺のそばまで来てくれ!」


抜刀している愛剣を横に垂直にして持ち、切先を空いた左手で支え、ふうっと大きく息を吐く。
匂いか嗅ぐときのようにすうっと音を立てて鼻から息を吸い、譜歌を口ずさむ。

全身が、この世界のエネルギーが集まっていく感覚が未だに慣れない。
それでも、無償で俺に力を貸してくれているのか、取り巻いている譜陣が光を放つ。


「堅固たる守り手の調べ クロア リュォ ズェ トゥエ リュォ レィ ネゥ リュォ ズェ」


歌い切ると、バハムートのエクサフレアが放たれると同時にドーム型の障壁が展開され、障壁内にいた俺達はバハムートの大技を免れた。
大技を放った後に、バハムートに少し隙ができ、俺達はそこを狙って反撃する。

ザックスが物理攻撃を見舞っていく中、俺は威力の高い魔法をぶっ放し続けた。



「終わったか……」

「召喚獣との戦いは、もうこりごりだ」


しばらくして、バハムートが悲鳴を上げると、俺達は攻撃の手を止めて、体内から光を放ちながらバハムートが宙に消滅していくのを見送った。




× × × ×




ジェネシスさんによる、ミッドガル襲撃事件が落ち着き、数日が経った頃。
俺とザックスは必ずと言ってもいいほど、毎回、任務で顔を合わせていた。

その分、師匠は相変わらず単体で任務に出向き、最近は連絡も取れず、資料室にこもって、昔の科学部門のことを調べているらしい。


空いた日に自室で籠っているとザックスに誘われ、エアリスの花売りワゴンを作るため、俺達は伍番街スラムの教会に出かけた。
任務がない日は、大抵、ザックスと一緒に伍番街スラムに行き、エアリスと三人で過ごすことが多かった。

ザックスとエアリスは両思いだから、邪魔をしないようにと最初のうちはザックスの誘いを断っていたが、俺がいなかったらいないで、エアリスが「フキは?今日、いないの?」とせがまれるらしく、俺もザックスとセットでエアリスを訪ねに行くことが決定されていた。俺の意思はいずこに……。



「アンジール!?」


俺とザックスが談笑しながらスラムのマーケットを歩いていると、背後からアンジールさんが出現する。

神羅から抹殺命令が出てるのに、こんなところを平気で彷徨いてても大丈夫なのだろうか?この人。


「すまない。これでも忙しくてな」


僅かな世間話をした後、アンジールさんは飛び立とうとしたが、ザックスに引き止められる。


「おい!行くつもりか?意味わかんないって!」

「ジェネシスとホランダーがモデオヘイムにいる」

「……それを教えに来たのか?仕事……してるんだな」

「ザックス!アンジールさんに失礼だぞ!」

「気にしてないから、そう言ってやるな。フキ。……気持ちだけはまだソルジャーだからな。ラザードにも伝えておいた。迎えがくるはずだ」


それだけ言うと、アンジールさんは今度こそ出立した。



急に任務が入り、ミッドガルを離れなければならなくなった俺達はせめて、エアリスに挨拶してから向かおうと思い、スラムの教会までやってくる。
教会の扉に手をかけようとしたところで、ツォンが出迎えた。


「ザックス、フキ。モデオヘイムで仕事だ」

「わかってる。ちょっと待っててくれ」

「エアリスはいない」


教会に入りかけていた俺達の足はそこで止まる。
なんでツォンが、エアリスがここにはいないってことを把握してるんだ?

あまりにも訝しげな表情を俺達はツォンに向けていたのか、ツォンも不思議そうな面持ちになる。


「エアリスとはどういう関係?」

「複雑な関係だ」

「ふーん−−」

「彼女からはなにも?」

「なーんにも」

「ならば私からはなにも」


ザックスとツォンの会話はそこで終了した。
ツォンの口の硬さには感心するが、ザックスはそれが不満らしい。

負け惜しみというか、嫉妬を込めた捨て台詞を俺の横で吐いていた。


「ふ~~~~ん!ま、いいんですけどね。いいんですけどね~」


ザックスのために、モデオヘイムの任務が早く終わるよう、僅かながらに祈った。








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