TOA×シリーズ


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ジェネシスさんに繋がる手がかりを求めて、伍番魔晄炉を彷徨う俺。
建物内に入ったはいいが、しょっちゅう行くような場所ではないので、迷路のような造りに少し迷った……。

いくつもの分厚いドアを抜け、エレベーターや梯子で昇ったり降りたりと。
奥深くへと進んで着いたのは、どでかい訓練所のように広い空間。
案内図を読むと、発電用のタービンと発電機と書かれていた。

ここにザックスはいなさそうだ……。
俺はさらに奥へと進む。


分厚い扉をいくつも通り、奥が見えないほどの長い廊下を歩き続けること数分。
ついにたどり着いた発電所の心臓部、魔晄炉。

魔晄炉の真下に向かい、工場の足場のような不安定な通路を進んでいくと、何か音というか、話し声のようなものが聞こえて来る。
声に近づくにつれ、その正体が誰なのかも判明した。



「やはり、ふたりはホランダーと組んでいるのか」

「どうしてこんなことに−−」

「セフィロス師匠!ザックス!」


ようやく二人と合流できた俺は、肩の荷が下がったような気がした。
ここにいないはずの俺がいて、二人は目を白黒させていたが。


「フキ、与えられた任務はどうした?」


間髪入れずにセフィロス師匠から、お説教めいた詰問を受けた。
お怒りモードの師匠に遭遇するのは久しぶりで、つい気圧される。
師匠の雷を受けたくなくて、回避ルート必死に考えていると口籠ってしまう。

そんな俺に救いの手を差し伸べてくれたのは、ザックスだった。


「まあまあ、フキだって仕事をサボるような奴じゃないの、セフィロスが知ってるんだろ?な、フキ!」

「お、おう……その、シスネにザックスのこと頼まれて……。でも、ちゃんと避難誘導は終わらせてきました」

「ほら~!」

「ならいい。責めて悪かった」

「はい……」


ザックスが俺と師匠の仲を取り持ってくれたお陰で、これ以上の険悪なムードにはならなかったが、なんか腑に落ちないぞ。
セフィロス師匠は俺よりも、ザックスの言葉を信じるのかよ……クソっ!

気まずさと納得できない感情が渦巻き、俺はなるべくセフィロス師匠を見ないようにした。
そうしないと、セフィロス師匠に思ってもいない、酷いことをぶちまけそうで、絶対にそうしないと気が済まない自分がいて、怖くて目を背けたんだ。

セフィロス師匠も不貞腐れてる俺に構う余裕はないのか、話を続ける。


「この先にホランダーの隠し研究室があるそうだ。アンジールを捜す手がかりがあるかもしれない」

「よし、行ってみよう。ほら、行こうぜ、フキ」

「ああ……」


突然脇から声をかけられて、俺はザックスの誘いに頷いた。




× × × ×




研究室とは名ばかりの、モンスターが入った一台の培養液ポッドと適当に積まれた、盗まれた極秘資料を通路の一角で見つけた俺達。
棚の上に置かれていた資料を何枚かに目を通して、師匠は分かっていることから推察し出す。


「ジェネシスが姿を消す前だった。怪我は軽いはずだった。だが、なぜかジェネシスの回復は遅れた。ジェネシスの治療をしたのが−−ホランダーだった」


ジェネシスさんの怪我……確か、何ヶ月か前に、師匠とアンジールさん、ジェネシスさんの三人で訓練所か何かで、やり合った時に負ったってやつか。
確か、俺もその時に居合わせたような……。

その時の記憶を必死に呼び起こした。


あの時は医務室で、俺、師匠、アンジールさんの三人でジェネシスさんが医務室から出てくるのを待っていたんだ。
ジェネシスさんの治療にあたっていたホランダーが、出てきて、輸血が必要だと言っていた。

だから、俺と師匠は血を提供しようとしたけれど、ホランダーに『君たちではダメなんだ』と、はっきりと拒否されたっけな。


師匠もちょうどその場面を思い出したらしく、その時から抱えていた心情を無意識のうちに、口から溢す。


「なぜ俺ではダメだったのか−−」


落胆する師匠に合わせたのか、流石のザックスも押し黙る。



……それって単に、血液型が合わなかったんじゃねーの?


治療への協力を拒否された理由がわかったものの、この雰囲気で言うも愚かと悟り、出そうになった言葉を引っ込めた。



「セ、セフィロス!?」

「ホランダー。やはりここにいたか」


資料を読み進めていくと、なぜジェネシスさんが神羅を去ったのか、その要因が少しずつ掴めてきた。
プロジェクト・Gという実験とジェネシスさんの出自。

触りまでわかってきたところで、ホランダーがのこのこと俺たちの前に現れる。


「ジェネシスとアンジールの劣化は誰が止めるんだ?」


偉く、強く出るホランダーの前に少し出て、俺は論駁を加える。


「その様子だと、あんたもジェネシスさん達の劣化を止められてねーみてーだな。動かしてるのは口だけか?」

「お前は……確か!」


嘲笑いながら、ジリジリとホランダーを追い詰める。
あと一歩のところで、ホランダーをふん縛れる……!と思ったところで、師匠が俺の肩を掴んで制止する。


「なっ!?」

「ジェネシス」


この期に及んで、まだ俺を信用しようとしない師匠に向かって、俺は半ば目くじらを立てたが、判断を誤っていたのは俺の方だった。
後ろの方に体を引き寄せられ、俺が今立っていたところにはジェネシスさんが飛び降り、剣を床に突き刺していたところだ。


ジェネシスさんは俺たちというより、師匠を見るとふんとひとつ、鼻を鳴らす。


「ホランダーは渡さない」


嫌なタイミングで来たな……。しかも、こんなおっさんを巡っての争いになるとは。

ジェネシスさんと師匠の睨み合いの応酬が行われている中、好奇と捉えたホランダーが逃走する。


「ザックス!フキ!ホランダーを追え!」

「はい、師匠!」


俺とザックスは迷わず、駆け出した。





「いつまで、フキとくだらない師弟関係を続けているつもりだ?」


ザックスとフキがその場から失せると、ジェネシスは徐ろに問いかける。
急になんの話だ、と言わんばかりにセフィロスは訳がわからないとあからさまに顔を顰めてやるのが、ジェネシスへの答えだった。

何故、急にフキの話になるのだ。


「言っただろ。俺が今、欲するのは『女神の贈り物だ』と」

「それがフキだと?馬鹿馬鹿しい」

「超振動」


聞く耳は持たないとセフィロスがそっぽを向いた瞬間、見越していたとばかりに、彼にとっての関心を引く話題をジェネシスは上げた。
案の定、真横に逸らし切っていたセフィロスの視線が、ジェネシスに向く。


そっけない態度を取りながらも、心の奥底では、親しい人間のことを放っては置けないのだ。セフィロスという人間は。

上手くセフィロスの習性を利用したジェネシスは、口もとに微笑を漂わす。


「おまえが有効活用できないのなら、俺が手綱を取ってやろうか?」

「フン、言っとくが、アレの手綱を引くには、おまえ程度では荷が重い。なんせ、ステルス型のトラブルメーカーだからな」


ジェネシスには勿論のこと、フキを譲るつもりはない。
それに、普段から自分の扱きに耐え、追いついてきた秘蔵の弟子なのだから、易々とジェネシスに取り込まれるような軟弱者に育てた覚えもない。


生活環境を共にしてまで、フキを鍛え上げ、クラス1stにまで成長させた自負がセフィロスにはあった。




× × × ×




デブ科学者と本気の追いかけっこしている俺とザックス。
師匠に追いかけろと言われた時から、現在まで走りっぱなしだ。なんで追いつけない……!

それもそのはず、ホランダーが放ったモンスターとエンカウントして戦ったり、俺達が古典的な手に騙されているからだ。

ホランダーの野郎、物陰に隠れ、俺達が通り過ぎたのを見計らって逃げ出すんだぜ!?


ホランダーを追っている内に、プレート内部の外縁まで俺達は来てしまったようだ。
半壊した壁から、鉛色の空が見え隠れする。


やっとのことでホランダーの退路を断ち、あとは捕まえるだけと思いきや……まあた、神羅の殺戮マシーンことスイーパーくんを召喚しやがった。
お礼参り、覚悟しとけよ。ホランダー。








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