TOA×シリーズ


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「早いな、フキ」


ヘリポートに通じる廊下のベンチに座り、一緒にウータイへ行くメンバーを待っていると、アンジールさんとその後ろをついて歩くもう一人のソルジャーがやって来た。


「ご指導のほど、よろしくお願いしますね。アンジールさん」

「何を言ってるんだ。お前も1stになったんだから、2ndや3rdに教える側だろう」

「アハハ……」

「こいつが、1st!?」


俺とアンジールさんの雑談に少し間があくと、逸早く口を挟んだのが、今回、アンジールさんから1st昇格を推薦されたザックス・フェアだ。
俺も今し方、気づいたけれど、前に会ったことのある"あの"ザックスだと思う。ザックスが俺のことを覚えるかは、わからないけれど。

俺はザックスの方へ向き直り、右手を差し出した。


「フキ・フォン・ファブレだ。よろしく、ザックス」

「俺のこと知ってんの!?ってか、お前が神羅で有名な英雄セフィロスの弟子だよな!?」


どうやら、完全に俺はザックスの記憶から消されてるようだ。まあ、想像の範囲内だけども。
ちょっと寂しいけどな。


「あれ……でも、お前、ソルジャーなのに、瞳の色が……」


まじまじと俺の目の色を見つめてくるザックスの頭上に、横から拳骨が振り落とされるのが目に入る。
拳骨をザックスに見舞ったのは、アンジールさんだった。


「ザックス!フキはちゃんと、ソルジャーとしての身体検査や適正を合格している。実力も申し分ない」


ザックスに、俺のソルジャーとしての素質を事細かく言い聞かせるアンジールさん。
庇ってくれてるというか、認めくれていることは素直にありがたいし、嬉しいけれど、少し恥ずかしいかな……。

ザックスの弁明も兼ねて、俺は腹の虫が承知せぬアンジールさんの慰撫に努める。

ザックスの言う通り、俺は魔晄照射されても、瞳の色は青くならなかった。
その事で、当時はソルジャーの適正云々の難癖を会社の一部の人間にとやかく言われたが、ラザード統括と1stメンバー、科学部門の一部が上手く丸め込んでくれたらしく、俺はセフィロス師匠の下で生活できていたのだ。
身体能力が、元から高かったことが功を奏したのもある。

そう言った事情により、俺は1stの三人以外のソルジャー達から隔離されて、この世界にやってきてからの一年を神羅で過ごしていた。


「まあまあ、ソルジャー特有の目の色をしていないのは事実ですし、ザックスが気になるのはしょうがないことですよ。俺がソルジャーになれたのだって、コネ入社、コネ昇格があったからですし……」

「やっぱお前、コネだったのか〜!いやさ、他の奴らがもしかしてって、言って……あいてっ!」

「あだっ!?」


ザックスだけでなく、俺にもアンジールさんの拳骨が振ってくる。
拳骨喰らうほど、アンジールさんに怒られたことがないから、凹むぜ。


「フキ、俺やセフィロス、ジェネシスのクラス1st三人が認めたソルジャーなんだ。謙虚と卑下は違うぞ。そして、ザックス。くだらん噂を真に受けるな。さっきも言ったが、フキにはソルジャーとしての適正の一つ、身体能力はお前と同等ぐらいだぞ。更に剣術まで行くと、お前以上だ」

「マジっ!?」

「さっさと行くぞ、お前達」

「「……はーい」」


ヘリの準備ができたらしく、アンジールさんはさっさとヘリに乗り込んだ。
俺とザックスは急いで、その後を追った。




× × × ×




1stへの昇進がかかっているからか、少し前に出過ぎなザックスのフォローを俺とアンジールさんでしながら、俺達三人はタンブリン砦に向かっていた。


「ザックス……バカリンゴを知っているか?」

「なんだよ、それ」

「なんと……バカリンゴを知らないとは。これじゃあ、1st昇進は無理だな」


軽く、信じられないという表情を俺に向けてくるアンジールさん。
俺は何度もバカリンゴの話をアンジールさんから聞いてるし、実際にお歳暮とかでよくジェネシスさんやアンジールさんが贈ってきてくれていた。


「なんだよ、バカリンゴって!?」


アンジールさんの真意を知らないザックスは、大慌てで俺達の後ろを追いかける。
横に並んで歩いていた俺とアンジールさんは、必死に笑いを堪えていた。



山道を登り進んで行くと、開けた場所に辿り着く。
道がなだらかな丘まで出てきたので、ザックスがバカリンゴの話をアンジールさんにねだった。


「アンジ〜ル!バカリンゴってなんだよ!」

「正式名称バノーラ・ホワイト。1年中好き勝手な季節に実をつける。村の連中は親しみを込めて、バカリンゴと呼んでいる。農園のリンゴは食べ放題だった」

「よく言うよ。立派な泥棒だ」


果樹園荒らしを貧しさゆえ、とアンジールさんは苦笑する。


「しかし、そんな俺にも誇りはあった。地主の家に村でいちばん大きな木があった。そのリンゴがおそろしくうまいという評判だったが−−」


−−俺はけして盗まなかった。
地主の息子が親友だったからだ。


誇らしげに語るアンジールさんが、俺にはどこか悲しいというか、寂しげに見えた。
アンジールさんの言う地主の息子とは、ジェネシスさんだからだ。


「親友なら、食わせてくれって言えばいいのに」

「誇りというのは厄介なものだ」


ジェネシスさんに対する、アンジールさんの感傷なのか、拘りなのか、とにかく意地みたいなものがアンジールさんにはあるんだろうな。


「で?1st昇進とどういう関係が?」


どうしても最後にはそこに行き着くのか、ザックスが改めてアンジールさんに尋ねた。
アンジールさんは腕を組み、硬い表情で。


「知っておいて損はない。フハハハハ」


高らかに笑い出すと、ようやくザックスは、自分が揶揄われていただけだと気づく。


「関係ないんだな!笑いごとじゃないぞ!」

「俺も今の、前にやられたよ」

「フキは知ってたのか!?1stと関係ないあの話!」

「ヘヘッ」

「笑って誤魔化すな!」


俺とアンジールさんは、しばらく笑いが絶えず、からかわれたと憤慨するザックスから逃げていた。








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