TOA×シリーズ


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「あっ……」

「あら?」


トレーニングルームで、師匠に出された訓練メニューをこなし終え、自室へ戻るために自動ドアを抜け出ると、大分前にお世話になったタークスの女の子と出くわした。

当然、俺はこんな所で会うとは思ってもいなかったから、無意識に出てしまった声は行き場をなくして、小さく辺りに木霊する。
俺の声を反射的に捉えた彼女も、俺の存在に気づき、前に進めていた足を後ろへ方向転換して、俺のもとへ歩み寄ってきてくれた。


「あなたは確か、セフィロスが引き取った新米ソルジャーさんね?」

「引き取っ……ええ、まぁそうです」


ペットみたいな言い方をされ、彼女の発言に言い返そうとするが、冷静になって考えてみると的を射ていたので反論するのを諦めた。


「あの、それでなんだけど……俺があの後にセフィロスさんに着いていった所為で、上司の人に怒られたりした?」

「……」


どうしても気になっていた彼女の処遇を、彼女自身に尋ねた。
途端、明るい表情だった彼女の顔が陰りを見せ、厭わしいものに変わる。

まさか俺が原因で、軽々しく口には出せない程の懲罰を受けたとか!?
彼女の表情を察すると、悪い方にしか思考が動かず、だんだん顔から血の気を引いていく。


「フフッ、貴方、酷い顔してるわよ」

「なっ!?」


必死で、彼女にどう償おうとか考えていたところで、今まで黙っていた彼女から清んだ笑声が上がる。
急に笑いだしたかと思いきや、その理由が窮地に追い込まれてた俺の顔が見物だと言うのだから、質が悪い。

自分の顔をバカにされてむっとしたが、思いも寄らない彼女リアクションに、俺は怒りを通り越して呆気にとられる。


「ごめんなさい、嘘だから安心して。あと、私の処遇は自宅謹慎一週間だけだったから、気にすることでもなかったの」

「なんだよっ、それ!心配して損したじゃんか!!」

「ホントに、ごめんなさいね。でも、心配してくれてありがとう」


微笑を浮かべていた彼女の顔が、さらに深いものへと変化を遂げた。


その瞬間、怒り任せに働いていた感情が、彼女の笑顔に惹かれるものへと刷り変わってしまう。
慣れない心の動きに、俺は動揺する。


「えと、どういたしまして?」

「なんで疑問系で返すかな?」

「んー、反射的にどういたしましてを言うか、ちょっとだけ迷った」


きっぱりと彼女に言い切ると、一瞬だけきょとんとした表情になるが、そっか、とだけ言い残して、ふわりとした柔らかい笑みに戻る。
そんな不意討ちとも言える行動に、俺の胸はさっきから高鳴りっぱなしだ。


「あとさ、あの時は見逃してくれてありがとう。それと……迷惑かけてごめん」

「謝ることではないわ。自宅謹慎ぐらいじゃ、迷惑をかけられた内に入らないから」

「そう言ってもらえると、正直ほっとする。ありがとな」

「どういたしまして。……そう言えば、貴方の名前、聞くのを忘れてたわ。よかったら、教えてくれる?」

「フキ・フォン・ファブレ。君は?」

「シスネよ。……あら、そろそろ仕事場に戻らなくちゃ行けないみたい。また今度ね」


ポケットから着信音が鳴る携帯を取りだし、瞬間的に画面を見つめると、俺に別れを告げて、彼女はスタスタと早足でその場から去ってしまう。



「シスネ、か」


彼女の名前を復唱して、シスネが去った方向をしばらく見つめていた。
鎮静化した筈の熱が、心臓を中心に再び身体中へ迸る。

けど、この感覚を味わうのが初めてに思えないのは何故だろう?
再燃する想いの中に、小さなもどかしさが生じた。








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