まおうくん大活躍 | ナノ
 おつかい side.M


不足した材料の買い出しから戻ってくると、窓越しにいつものメンバーを捉え、今日も賑やかになりそうだと笑う。今日は梓さんは不在なので、店番替わりをお願いしていたところだ。

しかしよく見ると、見慣れない頭があった。丁度背を向けているので顔は見えないが、さらさらとたそれは染めているような質感ではないのでおそらく外国の方だろう。いつも余裕そうなコナン君が焦ったようにその人に近づいているのを見て、なんだかおもしろいことが起きているんじゃないかと戻る足が急ぐ。
ポアロの扉を開けると、歩美ちゃんが真っ先に気づいて手を振ってきている。「オヤ、友達かな」なんて白々しく笑いながら近づくと、プラチナブロンドが振り返る。

時が止まったかと思った。

面食いの園子さんが顔を赤くしているならまだしも、蘭さんや子供たちまで顔を真っ赤にして見つめるその人が振り返った。
非の打ち所がないというか、彫刻作品が歩いて出てきたんじゃないかとか、そんな当たり障りない言葉しか思いつかないくらい衝撃的な美しさだった。
眠そうなタレ目には髪と同じ色の長い睫毛、その下にはまるで宝石をそのまま埋め込んだような――――なんて、月並みな表現だ。
当の本人はどうしたんだといわんばかりの顔でこちらをガン見しているわけで、その表情にはっとしてやっと言葉を発することが出来た。

「初めてみるお顔ですね…、コナン君のお友達かい?」
「あ、安室さん…ウンそうだよ、博士のお家でお世話になってるマオ君っていうんだ。外国の人だから、ちょっと日本語が得意じゃないんだけどね。」
「そうなんだね。初めまして、こちらの喫茶店でアルバイトをしています。安室透と言います、よろしくお願いしますね。」
「マオ、デス。」

窓の外から様子は見ていたからコナン君の関係者であることは分かっていたけれど、とぼけたように聞いてみた。ひくひくと口角を痙攣させながら答えてくれたその顔は、それ以外にも訳ありですと言っているようなものだ。
いかにも日本語が不自由ですという喋り方も、特に不自然ではなく外国から来たというのは本当のようだ。
マオ君と呼ばれたその子は、複数の視線に見つめられてさすがに居心地が悪いのか、もじもじとコナンの服のすそを引っ張った。

「コナン、用事終わったからおれ帰るぞ。」
「えっ、あっ、じゃ、じゃあボクも一緒に帰るね!マオ君まだここら辺の道分からないだろうし!!」

答える暇もなく「ごちそうさまーー!」と席を立つと、マオ君の手を取って店から出て行ってしまった。

「ああーんもう!ガキンチョのせいで天使くんが帰っちゃったじゃないのよぉ…。」
「園子……。まあでも、こんなに注目されてたら居心地悪いじゃない。でもコナン君のお友達ならまたいつでも会えるでしょ?」
「蘭さんの言う通りですよ。まだ日本にも慣れていないでしょうし、またどこかでお会いしたときにまた交友を深めればいいんですよ。」
「蘭…それに安室さんもそういうならそうよねえ。また伯父さまにクルーズのチケットでも貰って〜ガキンチョ経由で天使くんも呼んでもらいましょ〜!」

「そうと決まれば作戦立てるわよ〜!」と二人して店を出て行く。残った子供たちも、美少年の衝撃の余韻が抜けきれていないものの、ぽけーっとしながらそれぞれ帰って行った。

誰もいなくなったところで、ふうと息をつき座りこむ。なんだあの少年は。見たところ15,6歳か?生まれて初めて美しいと思う人と出会った。しかも自分の半分くらいの年齢の子供だ。
外見で評価されることの意味の無さ、外見がいくら良くたって中身が保証されることがないのは僕自身で証明してしまっているではないか。なのに、いったいどうして。
あの目があった一瞬だけでこんなにも惹きつけられてしまうのか。

コナン君と関わりがあるということは、必然的にまた接触するチャンスがある。
マオと呼ばれた少年のことがもっと知りたい。








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