まおうくん大活躍 | ナノ
 じゅんこくと、まおう


(純黒の〜 添い。原作改変有るので注意。)


ホテル事件からしばらくし経った某日。阿笠博士と子供たちが乗る車の中に、見慣れない頭が―コナンや阿笠にとってはそうではないが―ひとつあった。


いつものように阿笠邸で哀に教わりながら日本語の勉強をしていると、子供たちがコナンを連れて訪ねてきた。彼らが言うには、どうしても今人気の水族館にみんなで行きたいらしく、コナンを説得して一緒に来てもらう事にしたが、子供たちだけで出かけるのは危ない、というかコナン一人では手に余るので大人代表として阿笠博士についてきて、あわよくば連れてってもらおうという算段らしい。哀もコナンも乗り気ではなく、頼みの綱の水族館が苦手であろうマオを理由に回避しようと思ったが、本人は外に出かけるきっかけがあれば何でもいいというスタンスで「いーぞ。」と言ってしまい、喜んだ子供たちに圧倒されて結局皆で出かけることになってしまった。みんなで出かけるといっても博士の車はこの人数だと完全に定員オーバーなので、一番仲のいいコナンがマオの膝に乗るという、中身が高校生の男の子にとってはかなり恥ずかしいポジションに収まってしまった。見てくれだけは天下一品のマオのことを意識していないわけではないので、早く着いてくれよと祈ることしかできない。子供たちと水族館、そして併設された観覧車の話で盛り上がればあっという間に到着したのであった。


「おお…人がいっぱい…!!カゾクも、いっぱい、だ。」
「おいマオ、はぐれんじゃねーぞ。」

車から降りて駐車場から入り口を見渡す一同。この前のホテルは招待制だったからか限られた人間しかいなかったが、今日の水族館を出入りする人間はその比じゃない。好奇心旺盛にキョロキョロと当たりを見回すマオは、周りを見回すと家族連れが多いことに気が付き、少し悲し気な表情を見せた。そういえば、実の親の愛情を知らずに育ったと言っていたからか。放って置いたらそのまま迷子になりそうだしと手を取って歩き始めると、マオは嬉しそうな顔をして笑った。

「コナン。」
「あ?なんだ?」
「なんかアイツ、変なニオイする。」
「あいつ…?」

水族館へ向かう道中、マオがコナンを呼び止める。ニオイ、と聞くと確かになんだがガソリンのような匂いが。マオが指さした方を視線で追いかけると、ボロボロの服を着た銀髪の女がベンチに腰かけていた。話を聞いてみると、どうやら記憶喪失になったらしい。手がかりになるようなものを集めようと話をしていると、チケットを買ってきたと子供たちが駆け寄ってきた。
彼女の警察という単語に過剰反応している所をみるとどうも怪しい、もう少し調べてみる価値はありそうだ。
そんなことを考えていると、少年探偵団の面々は彼女の知り合いを探すぞと意気込んで水族館の方へ向かってしまった。マオは勝手に行動するとコナンに怒られると持っているのか、そわそわしながらその場で待機している。

「マオはあいつらに着いてっていいぞ。」
「……!いいのか!」
「久しぶりの外出なんだろ、楽しんでこいよ。」
「ウン!ワカッタ!」

正直、得体のしれない女と子供たちを一緒にするのも不安だし、マオがいれば武力という面においては一先ずは安心だろう。それにさっき言ったのは本心だ。テーマパークに来たのに捜査のようなものに付き合わせるのは悪い。子供たちに駆け寄る後ろ姿を見てひとり微笑むと、にやりと笑った灰原がこちらを見ていた。

「あなたもずいぶんあの子に甘いのね。」
「もって…、オメーも大概だろーが。」
「さあ。どうかしらね。」

意味深に微笑む灰原を後目に、とりあえずさっきの写真を蘭に送って警察に取り合ってもらうことにした。



身元不明の銀髪女性の知り合いを探すという名目で東都水族館を堪能する一同。阿笠博士には観覧車の待機列を見に行ってもらい、暇な時間でダーツタイプの射的ゲームで遊ぶことになった。彼女が真ん中に三つ命中させたことに喜ぶ子供たちを見て、ルールを理解したマオは、真ん中に向かって勢いよく投げる。と、ティップの部分が的にめり込んで機械が動かなくなってしまった。店員が不良品か故障か?と焦って機械を点検している所を見て、マズいと思ったマオは子供たちを連れてそそくさとその場を離れる。

「はい!マオおにーさんにもいっこあげる!」
「コレはなんだ?」
「キーホルダーだぞ!おめぇそんなことも知らないのか?」
「マオさんはジャングル育ちですから、ジャングルにはキーホルダーもないんじゃないんですか?」

少しはなれた場所で歩美に渡された黄色い物体手渡された。キーホルダーというものらしいそれは、布の塊がこの前水槽で見た”イルカ”という生き物を模しているようだ。子供たち皆がそのキーホルダーなるものを持っているのを見るに、同じものをみんなで持っておきたいらしい。

「ありがと、うれしい。」
「マオおにーさん日本語上手になってきたねえ!」
「じゃあ次こそ観覧車にのろうぜ!!」
「賛成!」

タイミングよく阿笠博士が呼びに来てくれたので、合流することになった。

「マオおにーさん、歩美と一緒にジュース買いに行こ!」
「じゃあ俺たちは先に並んでるからあとからついてこいよ!」
「はぁ〜い!」

マオと歩美は列から離れてジュースを買いに来ていた。マオの顔をチラチラとみてくる者がいるものの、和やかな空気で二人で売店に並んでいる所だった。

「ニュースで見たんだけどね、珍しいジュースもあるし、お土産も一緒に売ってるんだって!」
「それは楽しみだな!」
「でしょ〜!」

「キャーーーー!!」

あともう少しで受付というところで前方から叫び声と人のざわめきが聞こえてくる。

「女の人が叫んだ声…?どうしたんだろう…?」
「歩美、おれ行く。」
「マオおにーさん?!」

歩美が返事するよりも早く、マオは声の元へ走り出した。




コナンたちは情報収集を一先ず終え、子供たちはどこへ行ったんだと辺りを散策していると、観覧車へと続く道に彼らの姿を捉えた。あちらが先にコナンに気づいていたらしく、はやく気付けと言わんばかりに手を振っていた。マオの姿が見えないな、と思いながら手を振り返えそうとすると、気を引くのに夢中で、前のめりになって手を振っていた元太が手すりからずり落ち、ギリギリのところで縁につかまる。周囲の客が悲鳴をあげた。

縁にしがみついていた元太が自身の重みに耐えられずに落ちるのと同時に、悲鳴を聞いて後ろから走ってきたマオが飛び降り、銀髪の女性がそれに続く。衝撃の出来事に周囲から何度目かの悲鳴が上がる。
マオが元太の手をつかみ、もう片方の手で壁を引っいて減速を試みるも元太の体重がそれなりにあるので中々止まらない。壁を思いっきり掴めばめり込んで止まるだろうが、先ほど壊してしまったダーツのこともあるし、この観衆のなかで大事にするとコナンからの説教がくると考えると躊躇う。このまま減速していけば大丈夫だろうと思っていると、恐怖のあまり驚く元太が暴れてマオの手を離してしまったところを銀髪の女性が見事にキャッチし、三人とも無事に地上に戻った。

銀髪の女性とマオ、元太も見たところ外傷も何もないが、念のためにバックヤードの医務室で三人とも見てもらう事になった。落ちる時元太が蹴っ飛ばした博士以外はピンピンしている。皆無事ということで安心したのか、落下して死にかけたことを忘れてしまったみたいにケロりとした子供たちは観覧車に乗りたいと催促してくるが、灰原が止めたことで一旦保留となった。

コナンと灰原が遠くで話し合いをしている間、マオと銀髪の女性、阿笠、子供たちでベンチで暇を持て余すことになった。博士が大量の鳩に夢中になっている間に、子供たちが人差し指を口に当てながら「し〜!」と言い、銀髪の女性とマオを引っ張って観覧車に誘導する。

「コナンと哀に言わなくてもいいのか?」
「二人に言ったら怒られちゃうでしょ〜!ヒミツで行くの!」
「内緒だぞ!マオ!」
「ウーン…あとでおれのかわりに怒られてね。」

仕方ないなあ、と肩をすくめて手を引く子供たちの言う事を聞くことにした。









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