まおうくん大活躍 | ナノ
 豪華ホテルディナーショ―2


(※オリジナルキャラクターと原作にない建物名が出ます)


「きゃ〜マオくん、今日は前と違っておめかししちゃって、とってもキュートよーん!」
「ちょっと園子!ごめんねマオくん、この子こんなで…。」
「ダイジョウブ!園子もキュートだ。」
「きゃ〜〜〜〜ん!!!!!」


園子が用意したホテルに向かうリムジンの中。どうせこうなるだろうなという展開が目の前で繰り広げられる。

彼女が招待したのはマオだけでなかったようだ。
二人きりでは、ということで蘭と小五郎のおっちゃんを連れて行くのは何となくわかっていた。少年探偵団の面々は、博士とプラネタリウムを見る約束を事前にしていたらしく、今回いけないことを残念がっていたそうだ。
想定外なのはこの男、

「なんで安室さんもいるんだよ…。」
「オヤ、僕がいては不満かい?」
「ありありだっつーの。」

安室さんが来るのは完全に想定外だった。オレを怪しんでいるのは知っているが、その関係者としてまさかマオまで…?それでここまでついてくるのか…?

ニコニコと作った笑顔でこちらを見下ろしてくる褐色のイケメンを放置して園子に絡まれているマオを見る。
ホテルの事を相談した時、「そういうことなら」と先日博士が準備してくれたらしい一張羅だ。シャツにベスト、ジャケット。そう高くない一式らしいが、マオが着ると高級品に見えるのは顔のせいだろう。ジャングル設定にオマケして、両親とは死別したという設定もオマケして(もちろん設定ということは隠して)蘭たちには説明してあるが、恰好のせいでどう見たってジャングル育ちには見えない。

「ジャングルで育ったって聞いたけど、全然そんな感じしないわねぇ〜。」
「こんなピカピカなところ初めてだから、ウレシイ。」
「いくらでも連れてったげるわよ〜!」

えへへ、と笑うマオに完全にときめいている園子がデレデレとしていると、安室さんが割り込んできた。

「ジャングルで育ったんですね…、大変な環境だったでしょう。こういうところに慣れていないみたいなので、僕がエスコートしますよ。」
「ありがと、でも、スプーンもフォークもコナンに教えてもらったから、おれがんばるよ。」
「!!!」

両手で拳を作りながら横にいる安室を見上げるマオ。そんな彼に安室はピシリと固まってしまった。ほう、さっきまでのは勘違いだったみたいだ。女慣れしてスマートな安室さん、そんなイメージの彼だが今日は違ったようだ。
コイツは明らかにマオに好意があって追いかけてきている。

「確かに人間離れした良いツラしてんじゃねえかガキ。」
「おれ良いつらしてる?」
「そうさな、まず見かけたら忘れらんねぇだろうなあ。」

向いに座る小五郎に言われて、えへへと頬を染めるマオ。そんな姿に安室は面白くないようで、むっとしていた。なんだこの絵面面白すぎるだろうが。
そういえば、マオは母親とは死別しているし父親とは仲が良くなかったようだから、父親のような雰囲気の小五郎と接するのは嬉しそうだ。まさか枯れ専なんて言わねーよな。


「あ、そろそろ到着するみたいね!」

園子の声に一同が窓の外を見る。東都プレミアムホテル、大きな証明に照らされた看板がその名を映していた。
今夜のショーを特に宣伝しているらしく、巨大なディナーショーの垂れ幕の横にあるジュエリー展示会の広告が小さくて笑ってしまった。

ディナーショーまでの時間はまだあるらしく、ホテルに併設された水族館を訪れた一行。水族館入りのホテルなんて、普通に来たら一体いくらかかるのか考えたくもない。壁一面が透明な強化ガラスに覆われた水槽を、マオはじっと見つめていた。想像する魔界がマオの実家と同じなのであれば、水族館なるものは存在しないだろう。

「マオくんは水族館って初めて?」
「ウン。このサカナは食えるのか?」
「これは観賞用で、見ることしかできないんだよ。」
「みるだけ…?ここに入れてるだけなのか?」

安室に話しかけられて、やっと話し始めたマオ。ふよふよと浮かぶ魚たちを「お前らも可哀そうだな」と言いたげな同情した目で見つめていた。
蘭と園子と小五郎はイルカショーを見に行ってしまって不在なので、残された男三人で水族館を散策する。もちろんマオもショーに誘われたが、イルカに命令して芸をさせるものだと説明すると少し不機嫌になった様子を見て、「マオくん怖いみたいだから蘭ねーちゃんたちだけで行ってきて!」と言ってしまった。
水槽の魚を見てもあまり反応がないマオを見かねて、安室が「疲れたでしょうから飲み物を買ってきますね」と言ってその場を離れた。マオと2人長椅子に残された。

「マオの世界にはこういうモンは無かったのか?」
「似たようなものは合ったけど、こういう見た目のイキモノは相棒みたいなものたちだったから、ちょっとビックリ。」
「相棒…。」

確かに相棒みたいに扱ってきた動物がこうやって拘束されているのを見ても面白くはないだろう。ここに囲われてはいるが、その分丁重に、大事に扱われているんだと説明すると幾分かマシになったようで、「確かに鑑賞用って聞くと王族の贈り物みたいでカッコイイな」と機嫌が治ったようだった。
そうこうしてる内に安室が両手に紙コップをもって戻ってきたようだ。
このホテルの売りの一つであるココアらしく、マオにはいどうぞと手渡してきた。

「安室は優しいオトコだな、ありがとう。」
「お安い御用ですよ、ほらコナンくんも。」
「ありがと〜!」

コナンの皮をかぶるのを忘れずに差し出されたココアを受け取る。
紙コップに入ったそれは外側にブランドが描かれていて、自分が受け取ったものはマオが受け取ったものより50円ほどの安い商品だった。この男、アピールがしょうもなさすぎる。残念ながらアピールの対象には金銭感覚なんてモノはないので、おそらく人生で初めて飲むココアを嬉しそうに啜っていた。

「今夜のメインイベントは有名歌手のレイチェル・ベスのショーみたいですよ。」
「れいちぇる…。」
「アメリカで有名な歌手みたいですね、僕もこの前まで知らなかったんですが、今日のために少しリサーチしてきました。」

ありがたく頂いたココアを飲みながら大人しく話を聞いていると、レイチェル・ベスというのはここ5年くらいで有名になった実力派の歌手らしい。この東都プレミアムホテルのオーナーがその声に惚れ込んで日本に呼び寄せ、今日のショーが開かれることになったらしい。説明を聞いても何の事を言っているかサッパリ理解できない様子のマオは、一生懸命相槌を打っている。安室の方はその様子を見て何やらご満悦のようで、レイチェルの蘊蓄をひたすらに語っていた。

「3人ともこんなところにいたのね!そろそろショーの時間だから、席に行くわよー!」

少し離れたところから園子の声が聞こえたので振り向くと、イルカショーに向かった面々が水族館の出口から手を振っていた。すっかりなくなったカップをゴミ箱に捨てて合流しに向かう。



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