まおうくん大活躍 | ナノ
 豪華ホテルディナーショ―


ある晴れた昼下がり、毛利探偵事務所には見知った顔ぶれが並んでいた。

「じゃじゃ〜〜ん!叔父さまにオネダリしてゲットしちゃった…豪華ホテルディナーショーのチケットよ!」
「園子…あれ本気だったの?」
「あったり前よぉ!あんな動く美術品みたいなオトコノコ、そうそう出会えるモンじゃないのよ!チャンスよチャンス!眺めてたら視力も上がりそうじゃない!」
「チャンスって…。」

園子の勢いに半ば呆れた顔をしながら蘭が相手する。横にいるコナンもまた始まったか…と苦笑いとしていると、椅子に座ったまま話を聞いていた小五郎が立ち上がった。

「そのイケメンに会うためにわざわざチケットとるたぁ、相当なツラしてるんだろうなぁソイツは。」
「そうなんですよおじさま〜!!さすがに二人っきりは緊張するから、みんなも連れてぱ〜っと豪華なご飯でもどうだ〜って次郎吉伯父さまが!無料ですよ、む・りょ・う!」
「タダぁ?!?!おいコナン、そいつ呼んで来い。」
「……はぁ〜い……。」




もうこれは逃れられないな、とあきらめたコナンはさっさと行ってこい!と背中を押され半ば呆れながら事務所を後にする。
正直不安要素が多すぎる。マオはそもそもでこの世界(マオが異世界の住人というのを本気にするのであれば、だ)の常識を知らな過ぎるし、外国住まいだったというのを信じている面々の前でホテルになんて連れて行ってみろ。
マナーのマの字も知らない本人を思い出して頭を抱える。

『おいコナン、うまいな!コレ!初めてこんな美味いメシを食った!』
『あ?なんだ……なにやってんだオメーは…。』

回想の中の彼は、初めて食べたというコーンポタージュをスプーンも使わずアツアツのまま、所謂犬食いをしていた。さすがにスプーンやフォークの使い方を教えたが、グーで握って使うことしかできず、まして箸なんて全く使えない。
そんな彼がホテルで、ましてや園子が準備するような格式高い所でマトモに飯なんて食べれるわけがない。かといって、断る理由も見つからない、というか見つけられない。これまでの経験上、どうにかして理由つけて強引に連れて行くに違いない。ああそうに決まってる。

「ったくどうしろってんだよ…。」
「お、コナンだ。どうした頭痛いか?」
「マオ…。」

考えている間に阿笠邸に到着していたらしい。
悩みの種のご本人は最近プールにハマっているらしく、博士が用意したビニールプールにのんきに浸かっているではないか。

「オメーと出かけたいっていうやつがいるんだけどな。どうする?」
「お出かけか!おれいくぞ!どこだ!」
「そういうだろうと思ったよ…。」

本人が拒否してくれれば、なんて淡い希望も抱いていたがそれは無理な話。
コナンがいないところで変なことでもされたら困ると、半ば家で軟禁状態にさせているマオは、テレビで映るものを見るたびにあれはなんだと好奇心を爆発させている。本人曰く、自分のいたところと異なる世界では一人で生きていくのは難しいだろうと、家にいることを受け入れてはいるものの。たまには面白いことがしたい、と呟いていることは知っている。
小さいプールで「おでかけ!」とはしゃいでいる所を見ると、やっぱやめろなんて言うのは酷だろう。
自分がついていけばなんとかなるだろう、とこれから起こるであろう出来事に頭を抱えた。



「で、だ。」
「でだ。」
「そう、で。オメーの設定を考えるぞ。」
「せってい?」

そう、まずは設定だ。
外国から来たイケメン少年がスプーンやフォークがまるで使えないなんてありえない話。なら、その使えない設定を適当に用意してしまえばいいのだ。
本人がこの世界について何も知らないことが逆に有利になるような設定を。

「オメーはジャングルから来たって言う事にする。」
「じゃんぐるってあれだろ、木がいっぱいのところだ。」
「そうそう、ジャングルで育ったっていう話にすれば、オメーのその運動神経にも多少は良い訳つくだろ。」
「じゃあ、じゃんぐるから来たって言えばおれも外で遊んでいいのか?」

やったー!とはしゃぐマオを見ると少しうれしくなる。家にいつのはやっぱりつまらなかったらしい。
蘭や京極さんのような柱を砕くような力が許される世界だ、屋根から屋根までジャンプしたっていいだろう。そう、コナンは考えることを辞めたのであった。

「じゃあお前のことは事前に話しておくから、適当にオレに合わせるんだぞ。」
「わかった!ハカセに遊びにいくって伝えてくる!」
「おう。」

水浸しのまま家に入るかと思えば、体についた水を払うと全身の水が踊りプールの中で戻っていった。もう何も突っ込むまい。火の玉を出した男だ水だって操るだろうよ。

当日ボロがでたってなんとかなるだろ、あの顔で困ってますみたいな顔をすれば全人類が味方するさ。




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