王女という身分の上で自分は国民から信頼を得ている方だと自負している。それは決して自惚れ等ではなく、母の代から培われてきた信頼を受け継いでそれを保持している…ただそれだけの事だった。
勿論自分自身も努力はしているのだが、それでも今在る信頼の大部分はそれだと理解していた。

それ故に少しばかりの反感を買っている事も分かっていた。それは私が母のように冷静な判断と潔い決断を下せない事が多々あるのが主な理由で、かつての女王の様に指揮を執れない私に皮肉を告げる人々もいた。
それらは全て事実なので反論のしようもない、寧ろそういう意見を持つ人がいて安心した私がいた。

そして、その事実があるのならば私自身に危害を加えようと企む者が私の前に現れてもおかしくないと思っていた。






でも。
そんな者達だけは何をしていても確認した事がなかった。
きっとこの国の兵士達が牽制しているのだと少し前は思っていたけれど――


その真実の理由を、私は一度だけ見てしまった。









「ジタン、怪我が増えてるわ…」
「ん?ああ…盗賊としても働いてるから当然だろ?仕事に危険は付き物なんだぜ」



はは、と軽く笑いながら私に最近あった出来事をまるでお伽話の様に話していくジタン。彼には悪いがその話は今は耳を通り過ぎて私の中に何も残っていない。
それよりも早く言わなければならない事がある。彼の話を遮って私は言い放った。




「今日は何から、誰から私を守ってくれたの?」



ぴたりと止む彼の声。
訪れた沈黙は私の鼓動を更に加速させるには十分な出来事で、自分で切り出したにも関わらず後悔が押し寄せる。嗚呼こんな事なら言わなければ良かったかも知れないけれどこのままにはして置けなかったんだから――
そんな事を考えているとジタンは何を思ったか小さく笑みを浮かべた。
少し違和感を感じて私は彼の言葉を待った。そして数秒後彼は言ったのだ、私の一大決心を一瞬で蹴飛ばす様な一言を。




「ガーネット、」



なんのこと?と言ってあの人は微笑んだ

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嬉しいけど止めて欲しいガーネットさん

2012 January 5


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