草木も寝静まる夜中の事、私達は襲撃を受けた。
どれだけ時間が経っただろうか。
現れた無数の混沌の駒は一斉に私達の命を狙いに来る。倒しても倒しても消える事の無いその数の多さに目眩を起こしそうになった。
近くに秩序の気配は感じられない、味方からの援護は望めないのだと悟った。味方はオニオンナイト一人だけ、この数の暴力に二人だけで立ち向かうには無理がある…そんな事を考えている間にも攻撃の雨は止む事を知らず、むしろ強さを増して私達に降り注いだ。
「ティナ!!」
「っ…平気、だよ」
倒れ込みながらフラッドを発動させる。自分の中の不安と焦りが咏唱に影響しているのか、魔法の精度が下がっていくのが肌で分かる。
身体は魔力の消耗と比例して動かなくなっていった。
全然平気なんかじゃない。そんな事は理解していた。
終わりの見えない戦いが肉体的にも精神的にも疲労を生み、それに比例するように弱気になっていく。
このままでは彼も私も混沌に飲み込まれてしまうかもしれない――
「大丈夫だよ」
凛とした声が耳に響いた。
振り返ると、背中を向けるオニオンが私の傍にいた。
襲い掛かる敵を払い除けながら私に語りかける。
「怖いよね、僕も正直不安だよ。
でも大丈夫、必ず終わりはあるから…永遠なんて、存在しないよ。
最後まで僕を信じて、ティナは僕が絶対に守るから」
不安を必死に押し殺して気丈に振る舞う小さな勇者。私を守る為にと剣を構え、先の見えない闘争に目を逸らさず立ち向かっていく彼の姿は何よりも誰よりも凛々しく見えた。
きっとこれは不謹慎な事だけれど、私はその姿が堪らなく愛しかった。
「オニオン」
「何?」
「…ありがとう」
どういたしまして、と笑いを含んだ声が返ってくる。
彼の言葉はまるで魔法の様に私の気持ちを前に向かせた。
未だ激しい攻撃の雨は止まない、けれど少しだけその力が弱まった気がする。
彼の言葉通りこの駒は決して無限に存在する物ではない、いつかは必ず終わりが訪れるという希望が私の中に生まれていた。
「…私もあなたを守るから」
小さく立てた誓いを胸に、私は再び立ち上がる。
埋められた慟哭―――――――――――
守り守られる関係って良いと思う
2011 November 24
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