まあ何が言いたいかと言うと獄寺さんは明らかに怖くてでも怖くない変な人間って事ですよ。





「矛盾してんぞアホ女」

「とりあえずアホじゃないですー。あとハルは事実を言ったまでですよ」



ふふ、と小さく笑みを向けるとぐっと眉間に皴を寄せて背中を蹴られた。ソファーの上から攻撃なんて卑怯だと文句を発したのにあの男は「直にそこに座ったお前が悪いんだろ」と眉間の皴を取らないまま黙々と新作ダイナマイトを開発していた。嗚呼なんて失礼なんでしょう!
少し苛立ちが芽生えたので辺りにまとめて置いてあるちょっとした火薬を床にばらまいてみた。故意に。瞬間何すんだよ!!と怒鳴る声が耳に響くが気にしない事にした。




「で、ハルがなんで獄寺さんの事をそんな風に思ったかなんですけど」
「お前これ掃除しろよ!!」
「後でです後で」
「ふざけんな、」
「それよりハルの話をちゃんと聞いてくださいよっ」




話を無理矢理遮って身を乗り出して、獄寺さんの顔に近づけば目を見開いて押し黙る。不意打ちには相変わらず弱いなと内心思った。
(多分あっちははっ倒すぞアホ女とかそんな事考えてるんでしょうね嗚呼怖い!)
「では喋ります」
「勝手にしてくれ」

「はい勝手にします!
 あのですね、獄寺さんってすぐキレるしデンジャラスな事に巻き込むし髪の色違うし、客観的に見るとただのアウトローな不良さんじゃないですか。しかも爆弾魔っていう決定的な怖くて悪い人」
「喧嘩売ってんのかお前」

「客観的に、ですよ!少なくともハルはそう思ってないです」
「…?」





その言葉に困惑の色を見せた獄寺さんの表情はマフィア特有の怖さの欠片も感じさせない普通の14才の男の子で、なんだか可笑しくなってしまった。
だってマフィアというそれだけで重苦しい肩書きが備えられてる上に爆弾を何個も所持してる世間的にいう「犯罪者」が普通の男の子だなんて、なんてストレンジな事なんでしょう!






「おい、ハル?」

「…はひっすみません!
 えっと、ハルが思う限りでは獄寺さんは本当は怖くて悪い人じゃないです。今までずっとツナさんの近くで見てきたので自信はあります」

「…俺が世間的にいうそれじゃなかったら誰がそれなんだよ」

「…はひ、誰なんでしょうね?それはわかんないですけど」
「お前な、」

「でもハルは、本当は優しくてとっても仲間思いな獄寺さんを知ったので」

「!」




一瞬照れたように顔をしかめた獄寺さんを見た。ほら、こんな表情をする人が心の底から怖くて悪い人だなんて有り得ないでしょう?
もうこの自分の考えが覆る事はないだろうと思う。お前根本的に頭おかしいんじゃねーのという苦しい反論は私の笑いをより一層強い物にするだけだった。




知ってるよ、好きだから


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火薬は危険です。


2011 December 22


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