学級委員長委員会委員 >> ぐちゃぐちゃのこい さてさて、羽鳥幽助くんの一等好いている場所が、蛸壺から硝煙庫跡地に変わってしまいました。 1年ろ組の皆が蛸壺を見つけて連れて行っても、嬉しそうにせずぼんやりとしています。 そのとき不運な同級生が蛸壺に落っこちたって、周りが慌ててもぼんやりと見ています。 そうして1人寂しく硝煙庫跡地で膝を抱えているのです。 ある日、羽鳥幽助くんがのんびりと膝を抱えていると、1人の4年生がやってきました。 その4年生は無表情でやってきて、やっぱり無表情でばぁっと顔を出しました。 1年生の羽鳥幽助くんはまだまだ気配に疎いので、大層驚いて飛び上がりました。 「あ、あやせんぱい……?」 「うん」 突然やってきた綾部喜八郎くんは、片手に手鍬のてっこちゃんを抱いています。 驚きのあまり緩んだ涙腺から、ぼろぼろと涙が毀れ始めました。 「おや、まぁ」 きょとりとした綾部喜八郎くんは、慣れない手つきで羽鳥幽助くんの頭を撫でました。 小さな頭を撫でなれた委員長の手よりもずっと不器用な手つきです。 その不器用な手が懐かしくて、ずっと寂しかった子供はえんえんと泣きます。 「あやせんぱい、ぼく、あやせんぱいのたこつぼだぁいすきなんです」 「おやまぁ」 「こんど、いっしょにはいりましょうね」 蛸壺とはそもそも1人用の塹壕なので、2人用では蛸壺とは呼べません。 しかしそんなこと、羽鳥幽助くんにはどうだっていいことでした。 綾部喜八郎くんも、せっかく泣き止んだ子供をわざわざ泣かせません。 前頁 / 次頁 |