学級委員長委員会委員 >> とけて、ほうわ。 さてさて、天女様は学園にすっかり溶け込んでしまいました。 下級生は天女様に飽きてしまったようで、天女様が来る前のように遊んでいます。 元々物珍しいから纏わりついていただけで、飽きてしまえばもうどうだっていいのです。 彼女がいなくったって、子供たちの世界は子供たちだけで完結しているのです。 最初から最後まで、すべて幼さゆえの振る舞いであります。 すっかり飽いた下級生とは正反対に、上級生のほとんどは今でも天女様に傾倒しております。 天女様に入れ込む上級生たちが、委員会の活動を放棄してしまいました。 そのおかげで、学園の委員会活動を統括する学級委員長委員会はてんてこ舞いです。 彼らが放り出した委員会の仕事を埋め合わせるのは、すべて学級委員長委員会だからです。 しかしそんなこと、天女様を至上とするほとんどの上級生には関係ありません。 授業も忍務も委員会も後輩も同輩も先輩も、とにかく天女様でないものはどうだっていいのです。 そんなことはどうだっていい羽鳥幽助くんは、きょろきょろと学園を彷徨っています。 傍から見ればまるで迷子のようでしたが、迷っているわけではありません。 目的地がきっかり定まっていないのですから、そもそも迷いようがないのです。 燦々と輝く太陽が空の一番上まで昇っても、羽鳥幽助くんは歩いています。 探し物をしているのです。一等好きな場所を探して、ふらふらと歩いているのです。 穴掘り小僧が気侭に掘り、用具委員会が埋め立てる蛸壺は、いつも同じ場所にはありません。 掘られては埋められの繰り返しで、しょっちゅう場所が変わるのです。 日向にあったり日陰にあったり、長屋の影にあったり倉庫の正面にあったりします。 いつもは少し歩けば見つかる蛸壺が、今日に限って見つかりません。 途方に暮れた羽鳥幽助くんは、太陽が傾いた頃になって、ついに立ち止まってしまいました。 気付けば、すでに夕方です。遠くからおいしそうな匂いが漂ってきます。 お気に入りの場所が見つからないうちに、一日が終わっていこうとしているのです。 用具委員会がすべての蛸壺を埋め立ててしまったのでしょうか。 そんなはずはありません。綾部喜八郎くんは、埋められた先から新しい蛸壺を掘るのですから。 用具委員会が蛸壺を1つ埋める間に、綾部喜八郎くんは2つの蛸壺を掘ってしまうのです。 こんなことは今までにありませんでした。 探せばすぐそこにあるのが、綾部喜八郎くんの蛸壺だったのですから。 寂しくなった羽鳥幽助くんは、じんわりと涙を浮かべました。 前頁 / 次頁 |