学級委員長委員会委員長 >> わ もういいんだよと自分に言い聞かせて、学級委員長委員会室に行こうと思った。 先月の活動報告書は提出したから、来月の活動予定書を書き上げないとな。 あぁ、仕事は山積みなのに俺の身体は1つしかないなんて。 いっそ9つに分裂したら、委員会の仕事も分担できるのになぁ。 でも俺みたいな基本的に面倒ごとが嫌いなやつが9人もいたらそれこそ面倒だろうな。 てゆーか見分けつかなくなりそう。あと9倍の学費を支払うのは大変だ。 この案は却下だ。実用的じゃないし現実的じゃない。 とはいえ、大体は決まっているんだ。1日に1つか2つの委員会に行く。 その順番は、先月と同じように回す。内容は、どうしようか。 呼び出されたらその場その場で対応を考えよう。あんまり考えすぎると疲れるから。 しかしどうしたもんかなぁ。このままだと過労で死んでしまいそう。 「はー1回熟睡したいなぁ、夕方ごろから朝まで誰にも邪魔されずにじっくりと眠ってみたい」 思わず独り言。あぁ、これじゃあまるで天女サマ。俺はあんなのにはなりたくない。 でもほら、俺の独り言は人畜無害だから。誰にも迷惑かけてないだろ? 天女サマみたく妙なものを発信(それとも受信?)しているわけでもないし。 個人的で些細な欲望みたいなものだ。よし、時間が取れたら裏裏山の秘密の場所で眠ろう。 「学級委員長委員会委員長」 役職名で呼ばれてしまった。こんなことは滅多にない。 俺が学園の生徒を名で呼ぶと同じく、学園の生徒は俺を名で呼ぶ。 ……とはいえ、嫌味や皮肉の類でなら、姓や役職でも呼ばれるけれど。 さて。 くるりと振り返ると、よく知った後輩がそこにいた。隣室の同輩の後輩だ。 委員長とまでは呼ばれるけど、役職をつらつらと呼ばれるのは初めてだ。 「こんにちは。今から昼食か? 時間があるなら少しずらしたほうがいい。今食堂で食うのはあまりおいしくなさそうだから」 「そうですか、ではそうします。ところで先輩」 「んん?」 「頑張ってくださいね」 委員会活動なら、今更言われるまでもないくらいに俺は延々と頑張っているけど。 一体何を頑張れば言いのだろうかと考えながら、俺はまた足を動かして目的地へ。 すれ違って、1歩2歩3歩。 「都竹先輩、もう戻れませんよ」 あぁ、そういうことですか。 3年生でも一等生真面目な後輩は、俺のことを心配してくれていたようだ。 「いーよ、戻るつもりもない」 何を言ってるんだ、今更。同輩が後輩を傷つけた時点で、戻るつもりなんてさらさらない。 俺から戻ろうったって戻るはずがないし、向こうから戻ろうったって戻すつもりもない。 先輩が後輩を悪意で故意に傷つけるなんてあっていいはずがないんだ。 今の時点で、後輩たちが6年生に勝つことはまず不可能。 ならば俺がやってやろう。刺し違えたっていい。俺は後輩たちを守ってみせる。 「俺は、立花先輩を敵に回したくないので」 「いいよ、好きにしな。俺も好きにやる」 長いものに巻かれるのが、弱者の生き残るたった1つの術だ。 わざわざ反抗して面倒ごとに巻き込まれるのは、俺だって頭のいいやり方だとは思わない。 萌黄色の小さな後姿がすたすたと歩いていく。 「俺はお前も可愛い後輩だと思ってるよ、藤内」 聞こえたかな? 聞こえただろう。 前頁 / 次頁 |