一対 | ナノ




『ひっ、く』




男の子が泣いていました。


藍の髪の綺麗な、男の子。





『どこ、いったんだ……?』


─何故、泣いているのですか?


『どこにもいねぇんだ。俺の大切な弟が』


─大切な弟?


『さがさ、ねぇと』


─手伝います、だから泣かないでください


『さがさねぇと、みつけねぇと』


─君が泣くと僕も哀しいです


『どこにいるんだよ、  ?』










頬に手を当てると、微かに濡れた感覚。


泣いて、いたのでしょうか……?




「ゆ、め……」




最近、同じような夢をみます。


いつも男の子が弟を捜して泣いています。


同じ男の子が、いつも。いつも。


君は誰ですか? 僕の知り合いですか?


懐かしい気が、するんですよ。君は誰ですか?




「迎えに、来て。待っているから、早く」




僕が、生きている間に。


早く。ここにいる間に。




祈るように呟いて、僕は部屋を出ました。


朝食は残っていますかね。なかったら早めのお昼にしましょう。


手早く顔を洗い食堂に駆け込みます。




「おはようでさァ」


「沖田隊長じゃあないですか、おはようございます」


「もう昼ですけどねィ、寝過ぎじゃねぇんすかィ?」


「非番ですから。隊長こそサボりですか」


「休憩でさァ」


「その割には」




 スパァーン──




「総悟ォォオオ!!」


「げ、土方さん」


「先ほどから副長の声が響いていましたが」


「堂々とサボりたぁ、いい度胸じゃねぇか」




やれやれ。


二人のやりとりを横に、僕はご飯に箸をつけます。




「その根性叩き直してやらぁ!!」


「冗談は開いた瞳孔とマヨだけにしてくだせェ」


「総悟ォォォオオオォォォ!!」




抜刀する副長。


その横をすり抜けて隊長は逃げていきます。


副長はそれを追っていきました。律儀にも襖を閉めてから。




まったく。




「食事のときくらい静かにしてくださいよね」










『ヅラァ、メシんときくらい静かにしやがれ』


『ヅラじゃない、 だ!!』










どこかの寺子屋。


夢の中の男の子。


知らない男の子。




「最近、多いですよね……」




あの銀髪──銀時と逢ってから、でしょうか。






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