一対 | ナノ



『ここ、は……?』




僕は周囲を見回した。


見渡す限り、人間と天人の死体が転がっている。




『ちっ、  !!』


『っ、  !!』




その死体の山の中。


僕ともう一人、知らない男が立っていた。


男の顔はちょうど影になっていて見えなかった。




『小太郎、たちは?』


『はっ、彼奴らも無事逃げ延びてンよ』


『そうだな』




ふっと、彼らは笑みをかわす。


安堵のような柔らかな笑みを。


だが。




『見つけたぜぇ、   総督さんと副総督さんよぉ』


『くそっ!』


『天人っ!』




一筋の声がそれらをかき消した。


彼らは背をあわせ剣を構えていた。


いつの間にか、彼らは数十の天人に囲まれていた。




『  』


『  』




彼らはそんなことを意に介さなかった。


互いに呼び交し、彼らは目の前の敵にそれぞれ突っ込んでいった。




一見して無謀。


だが、彼らは着実に、天人を斬っていく。


数十がいつしか、数えるほどになっていた。




『  ー!! 生きてっかァ!?』


『当たり前!   こそ無事か!?』


『あったりめぇだ!』




男が振り返る刹那、光刃が煌めいた。




『ぐぁっ、……』




男の瞳を、剣先がえぐっていた。










「あぁっ!?」




上体を起こす。


背筋を、冷たい滴が伝っていた。


左目を激痛が走る。




「今の、夢……?」




鋭い痛みをやりすごすように瞳を固く閉ざし、息をつく。















彼らに拾われるまで、僕はずっと独りでした。


彼らは優しいし、今の生活は悪くないのです。


ですが僕はずっと空虚を感じていました。


喪失感という名の虚無。








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