一対 | ナノ
「花見だー!! 悠助行くぞ!!」
「はーい」
とりあえず今日は花見です。
真撰組の花見は、毎年同じ場所で行われます。
その場所というのがですね。
「そこをどけ。そこは毎年真撰組が花見をする際に使う特別席だ」
といったふうに今年に限ってダブってしまったようです。
よりによって万事屋一行と。
「どーゆー言いがかりだ? こんなもんどこでも同じだろーが。チンピラ警察24時か、てめーら」
「同じじゃねぇ、そこから見える桜は格別なんだよ。なァみんな?」
それぞれ言い分はあるようです。
が、彼等にとって花見は酒の肴も同然。
「別に俺たちゃ酒飲めりゃどこでもいいッスわー」
「アスファルトの上だろーとどこだろーと構いませんぜ」
「酒のためならアスファルトに咲く花のよーになれますぜ!」
と、真撰組内部でも意見の対立はあります。
というか沖田隊長は未成年……。
結局花見なんて飲酒してどんちゃん騒ぎになるだけですもの。
何処で執り行おうとも同じということです。
「うるせェ!! ホントは俺もどーでもいーんだがコイツのために場所変更しなきゃならねーのが気にくわねー!」
「まぁ土方副長、ここは──
「山崎場所とりにいかせたはずだろ、どこいったアイツ」
……。
やるせませんね。
何故でしょうか。
「土方副長、ですから──
「待ちなせェ!」
何故ですか。
何故僕の周りでは人の話を聞かないのですか。
「堅気の皆さんがまったりこいてる場でチャンバラたァいただけねーや。ここはひとつ花見らしく決着つけましょーや」
何故でしょうか。
何故その割に自分の融通を押し通そうとするのでしょうか。
「第一回陣地争奪……」
本当に、いくら温厚な僕でもキレます……よ?
「叩いてかぶってジャンケンポンたいか──
「一回黙れや」
何者かが……いえ、いいですよ。
僕が鞘ごと振り払った剣が頭部に命中し、沖田隊長は倒れました。
因みに沖田隊長がかぶっていたヘルメットは綺麗に割れています。
それが、何か?
「あの、悠助くん? 何をそんなに怒っていらっしゃるのかなー? さすがに今のは銀さんもわかんないよ?」
「てめェら、人の話は最後まで聞きましょーって習わなかったのかァ?
人の話は話半分に聞けってのは、ンな意味じゃねーんだぜェ? わかってンのか? あァ?」
キレるって、言っただろーが。
あん? 言ってねーだと? 俺が言ったと言ったら言ったんだよ。
「阿修羅様御降臨なさった!? あ、いや! スイマセン!!」
「俺の言葉をことごとく遮った挙げ句、とことんまで無視しやがって……。
てめェら全員、覚悟はできてんだろーなァ?」
「ちょっ、ユウ!? あ、これっこれあげるから落ち着いて!!」
「てめェがその呼び方すんじゃねーよ、このくるくるパーが」
「ちょっ! くるくるパーって髪のこと!? 髪のことだよね!? 頭のことじゃ──
ひゅっ──
鞘を抜き投げつける。
そのまま抜き身の剣をまっすぐに突きつける。
人の話は最後まで聞けって言ったばっかだろーが。
もう忘れてやがんのか? ハッ。
「うるせェよ、再起不能にされてェのか? あァ!? それならそーとさっさと言えや」
「すいまっせんしたァァアアァ!! 銀さんが悪かったです! 悠助さん!!
これ! 銀さんの飴とさっき総一郎くんが持ってた鬼嫁贈呈すっから!! 許して! お願い!! ねっ!?」
「……チッ」
そこまで言うなら仕方ねーな。
酒だけ貰ってくかァ? クククッ。
一人で花見酒ってのも悪くねーよなァ。
つーか総一郎くんって誰だァ?
酒瓶を片手に一人桜を見上げていますと、向こうからこんな会話が聞こえてきました。
「おい万事屋……、あいつは何かの悪霊にでも憑かれてんのか?」
「いやいや、そんなわけないでしょ。強いて言うなら……、まぁあいつを怒らせんなってことだよ」
「あ?」
「あいつも立派な牙を持った獣だからな。普段は温厚だが怒らせると半端ねぇぞ。
キレたあいつを止められるヤツを俺は二人しか知らねー」
銀時、君はまだ余計なことを言うのですね……。
もう一度、後で躾にいかないといけないのでしょうかね。
覚悟、は……しておいてくださいよ?
わかっています、よね?
なァ、銀時ィ?
近藤局長がむこうでヘルメットの残骸と共に気絶していようが。
沖田隊長と知らない子が二人で殴りあいを繰り広げていようが。
銀時と土方副長が地面に這いつくばってリバースしていようが。
その理由も何もかも全てが僕には一切合切関係のないことです。
「それにしても、やはり酒は静かに飲むのが一番ですね……」
『おいてめェら、花見は花を愛でるもんだ。ちったァ静かにしやがれ』
『どーせ最後には一緒になって騒いでるくせに』
『あぁ!? うるせェぞ!! 叩ッ斬られてーのか!?』
『まぁ落ち着けや、折角の花見なんだ。酒が不味くなるじゃねーか。殺されてーのか?
俺たちが煩いのを嫌ってることぐれェ知ってンだろーが』
どうやら晋助は僕と同じ感性の持ち主の様ですね。
まぁそれは当然のことでしょうけれど。
なんと言いましても、僕たちは ですし、ね。