精密検査は計画的に。





「エミナエミナエミナエミナぁああ!」
「きゃぁっ!」

どっすーんと何かのマンガにでもありそうな展開。
私はエミナに飛びつこうとして転ばせてしまった。

それよりも!大変なんだってばぁ!!

「何よ、また体重でも増えたの…?」
「大変よエミナ…、生理が、生理が…!」

こないの!!!と訴えたら、エミナの声が寮内に響き渡った。










「……えーと、いつから来てないの?」
「んと、…ひぃ、ふぅ…、2か月くらいかな?」

とりあえずベッドに横になれと言われたから横になってるけど、不安は収まらない。
私、何か変な病気でもかかったのだろうか…。

「他に変わったところは?」
「…吐き気、かな?気持ち悪くなるだけの時もあれば吐いちゃうときもある…うん。」

ふむ、とエミナは考えるそぶりを見せた。
本当になんなんだろう、怖い、もし戦場に出られなくなったらどうしよう……!



少し考えた後、エミナは答えを出した。

「オリ、あなた―――」

ガチャ
良いところで扉が開いた。

「エミナはいるか?軍令部長から通達―――」
「妊娠してるんじゃないの……ってクラサメ君?」

入ってきたのはよりにもよってクラサメ君。
ぱさり、と書類らしきものが落ちる。
みるみるうちに顔が何かの表情に変わっていく。

「げ、クラサメ君…。ってか妊娠なんてありえないし!妊娠するようなことなんてしてないし!」

あはははーと笑い飛ばす。

「そうかしら…、でも一応検査しに行ったら?もしもってこともあるし。」
「そうだね、ちょっくら行ってくるわ」

お邪魔しましたーと行ってエミナの部屋から出て行こうとした瞬間、いきなりガッと肩を掴まれた。

「え…」

そのままクラサメ君のほうへ体を向けられ、手をぎゅっと握られる。
じーっと真剣な眼差しで見つめられて言葉が詰まった。


「オリ…」
「……?」




「俺、いい父親になってみせるからな…!」
「は…?」

なにこの展開、なんかむっちゃ真剣な表情で言われとるし。
クラサメ君は跪いて私のお腹に抱きついてきた。

「ぎゃあああああ離せ、離せ!!」
「あぁ、俺の子供を身籠ってくれるなんて…!オリ、愛してる!!」

スリスリスリスリとお腹に頬ずりされる。
その瞬間、ゾゾゾゾゾゾッと悪寒が走った。

「やめろ、くすぐったいから、馬鹿!!」

ゴスゴスと頭をグーで殴ってみるも頬ずりを止めず、しまいには制服を捲ってお腹にキスをしてきた。
これには流石にカチンと来た私。

私愛用の鉾を召喚し、

「…ってめえぇえっ!いい加減にしろやこのボケナスがぁあああっ!!」
バキャッ

クラサメを一蹴した。

「うごっ」

見事にクラサメ君は食らい、そのまま仰向けに倒れた。
しかしその表情もどこか恍惚としていて、「俺の…赤、ちゃん…」などと口ずさんでいるもんだから、私はクラサメ君の大事なところに弱度のサンダーを放った。


「ひっ、ぁ、あっ!」

びくん、びくん、と感電するクラサメ君。

「…ごめんねエミナ、行ってくるわ」
「ええ。ご愁傷様」

変態をエミナに任せて、私は検査を受けに行ったとさ。




END




「どうだった?」
「んと、軽い胃腸炎と生理不調だって。栄養つけなさいって言われたよ(泣)」
「男の子か、女の子か!?」
「お願いだから黙ってサンダーられててよ。」



※サンダーる…「サンダーをかける」の意。