貴様は犬か 『はいこれ。ワタシはいらないから、クラサメ君と行ってきたら?』 とか半ば強引にエミナからチケットを握らされた結果、私とクラサメ君は映画館にいた。 クラサメ君がジュースを奢ってくれたので少しルンルンだ。 ちなみに見る映画は『君の従者になりたい』。 君の○○になりたいシリーズの最新作だ。 18歳未満お断りの映画だったけど今年で19歳になったので堂々と入った。 このシリーズは悲しく甘い恋を題材にしてるからグッとくる。 「後ろに座らないか?」 「うん」 クラサメ君に促されて一番後ろの席に座る。 平日の深夜だからか人はかなり少なかった。 * 映画が始まった瞬間、スクリーンに映し出されたのは濃厚なキスシーン。 『好き…!もう離れたくないわ!!』 『私もだ!たとえ嵐がこの大地を滅茶苦茶にしても、私は君を愛し続けると誓おう!』 そのままベッドシーン。 18禁にする意味がわかった。 そうやってずーっと映画を見ていたのだが、濃厚なラブシーンが何度もでてきた。 でもさすがだ。このシリーズはどんな作品でも釘付けになってしまう。 スクリーンをずっと夢中で見ていたところ、なにやら荒い息づかいが聞こえてきた。 いや、もっと前から聞こえてたんだけどね。 あれ、今は別れの場面で、なにもヘンなことはしてないはず…。 ちょっと怖くなってきてクラサメ君に話しかけようとしたところ、荒い息遣いの主が分かった。 「っ、はぁ…、はぁ…」 クラサメ君だ。ハァハァしてんの。 映画にハァハァしてるのかと思えばそうでなく、ずっと私の横顔を見ながら息を荒くしていたのだ。 「はぁ……、オリ…」 エッチなシーンに触発されて息を荒くしているクラサメ君に妙な身の危険を感じたので、私は映画が終わると速攻で逃げた。 |