Good and Noon




イライライライラ

カツカツカツカツ




上が心の中で鳴っている音、下が実際に聞こえる音。




わたしは0組での級内伝令なわけだけど、

こないだの他組との合同実践演習で死者が出てしまったことで軍令部長に呼び出され、私は云々と長い説教を聞いた。

貴様の甘い判断でこうなっただとか、1人の候補生だとしても命の重さは等しいだとか、普段言ってることと矛盾したことを言われたのだからイライラする。


普段だったら平気で人をオモチャみたいにするはずなのに。




「…第一なんであのハゲから説教されないといけないのよ。出たからって関係ない話でしょうが。生き残るためには少なからず犠牲は必要なのに。あの薄い頭髪を根こそぎ抜いてやろうか。それとも育毛剤の入手ルートをすべて断絶してやろうか…」



「…オリん、声に出てるよぉ〜」


「うわぁ!!…ってシンクか…」




いきなり話しかけられたものだからビックリして後ずさりしてしまった。



「オリんも大変だねぇ〜、バイバイ」

「うん、ありがと。」




すぐまた別れて、私はイライラを解消すべく眠りにつくため、裏庭のベンチへと向かっていくのである。















「…あ!」


見つめた先にいたのは、いつもクラサメが連れているトンベリ。



トンベリも私を見つけると、とてとてと走ってきてぎゅっと足にしがみついてくる。


ああもう可愛いなこの生き物は。





「クラサメ隊長は?」




いつもトンベリが一緒にいるクラサメのすがたが見当たらない。



「……」


トンベリはゆっくり首を振った。




「会議?」


こんどはコクコクとうなずいた。







「じゃぁ君も暇でしょ?一緒にお昼寝しない?」



これまた素直にうなずいてくれた。
なんて愛しいんだ。






ベンチに腰かけて、トンベリに膝の上にくるように促す。


体温のない生き物を膝の上にのせ、うつらうつらと舟を漕ぎ始める。




「ねートンベリ、隊長やさしい…?」


トンベリも眠いようで、ゆっくりとうなずいた。




「…そっか。氷剣の死神も、優しいんだ…。」





私は柔らかく温かい睡魔におぼれた。
















会議が予想以上に長引いてしまい、裏庭に置いてきたトンベリを急いで迎えに行く。




やはり秘匿大軍神、会議がいつもより長く、濃い内容だった。








裏庭への扉をあけると、ベンチに誰かとトンベリが座っていて、その誰かの膝の上でトンベリが寝ていた。



女生徒だろうか…。





顔を覗き込むと、よく見知った可愛らしい顔。




「…しかし懐いたものだな。」





私が0組の隊長になったときは私に刃こそは向けなかったものの、教室の隅の席から敵意を凝縮したような目線を送ってきたものだが。

少なからずトンベリにも敵意があったようだが、一緒に睡眠をとるくらい懐いたことに正直驚いている。





だが少し心が痛いものだ。
それは私がオリを想っているからなのだが。


少しトンベリに嫉妬心がわいてくる。







可哀そうだが、トンベリを起こさないように隣のベンチに置き、自分は開いた彼女の膝に頭を預ける。



ふわ、と彼女の香りが鼻をくすぐり、眠気が頭を支配する。




そのまま目を瞑れば睡魔に襲われ、私もオリと同じように睡魔に呑まれることにした。







心地がいい。

この時間が、永遠に続けばいいのに。

明日がこなければいいのに。

命が二つ、あればいいのに。



やはり明日がこなければいいのに。




END




,.,.,,.,.,.,.,.,.





(隊長!?え、あ、なん、え?ちょ…)

(…もう少し、こうさせていてくれ。今日で最後だから…。)

(隊長……?)







ふんわりと死を香らせてみました。

おねだり上手なクラサメさん美味しい。



アレキサンダーが憎くてたまらない。

クラサメさんきっとファントマ強いから3分の1…せめて4分の1くらい残しといてよバカバカ!