クラサメ・スサヤの性教育講座


「はぁ…」

氷剣の死神と畏怖された男は深くため息をついた。
その原因とは。

「クラサメぇ!早く教えろやコラァ!」
「早くしてくださいよぉ!」

目の前でぎゃんぎゃんと騒ぐ二匹。
これがクラサメにため息をつかせた原因だ。
二匹、もといナインとオリは今日の講義でわからなかったことを聞きに来ているだけなのだが、その内容というのが問題だ。

「保健とか全然わかんねぇよオイ!」
「赤ちゃんはどうやったらできるんですか?コウノトリですか?それとも流れ星?」

いわゆる性教育だ。
若気の至りが大変な領域に達する前に正しい方向へ導く目的でこの科目は扱われ、クラサメをはじめとする教官はしっかりと講義してやる。
だが大半の生徒は既にこういった知識を身につけており大体は理解してくれるものの、たまにナインとオリのような馬鹿がいるのだ。
戦闘馬鹿はこういったことに疎いのだろうか。
ため息をつくクラサメも疎かったのだが。
さすがに理解してもらわないといけないことなので教えることにする。

「わかった、わかったから騒がしくするな。まず部屋に入れ」







「まず基本だ。これはなんだ」

適当に資料を集めて始める。
最初にクラサメが指した写真は精子の写真だ。

「あぁ、そんくれぇわかるぜ!えっと…」
「わかった!おじゃまたくしですよね!」

ナインも、それだ!と納得した。
クラサメはがっくりとうなだれた。
おたまじゃくしを飛び越えておじゃまたくしと来た。
0組はやはり自分の予想の遙か斜めを行くようだ。

「…これは精子だ」
「せーし、せーし」
「精子精子精子精子」

若い候補生が目の前で精子を連呼し始めた。
彼らは純粋に覚えようとしているだけなのかもしれないが、教えるクラサメにとっては心臓を捻られる思いだ。

「こっちは卵子」
「こうやって受精卵ができて…」
「約40週で出産になる」
「精子は雄の体の精巣でつくられ、卵子は雌の体の卵巣でできる」

目の前の教え子は真剣に聞いてくれている。
それだけはありがたかった。

そして最後の難関、性交渉について。

「…性交渉についてだが、これをすることで子供ができる」
「えっ、コウノトリじゃないのかよ」
「ぶーぶー」

ブーイングされた。

「その、…女性の膣に、男性の…陰茎を挿入し、射精することで…」
「だぁぁっ!わかんねぇよ!」
「もっと分かりやすく言ってくださいよー!」

恥ずかしいのを我慢して、膣とか陰茎とか言ったのに、理解できないときた。
最終手段しかないのか。

「…セックスくらい知ってるだろ」
「あ"?」
「せっくす…?」
「…エッチのことだ」
「えっ、それってカヅサみたいな奴のことだろオイ」
「やらしいって意味ですよね」

なんだか頭に金ダライを落とされた気分だ。
しかたない、言いたくなかったカヅサ流の言い方で教えることにしようか。

「ナインは男で、オリは女だな?」
「おうよ」
「うん」

こほん、と咳払い。
そして二人の"アソコ"をずびしと指さす。

「オリのアソコにナインをアソコを入れるんだ、わかったか」
「な、なんだとコラァ…!」
「え、あ、それって…!」

やっと意味を理解してくれたようで二人とも顔を赤く染めて慌てている。
ふぅ、とクラサメは安堵のため息をついた。
だが。

「あの、精子って精液の中に入ってるんですか…?」
「あぁ、そうだ」

なんだ、何かイヤな予感しかしない。

「そうだクラサメ、精液見せてくれよ!」
「っな……!?」
「私も見たいですー!」

やはり斜め上をいく。

「馬鹿か!見せられるわけないだろう…!」

慌てて拒否するとナインがニヤニヤして言ってきた。

「どうすんだよ、精液がどんなのか知らずにどうにかなっちまったら」
「う…」
「そうですよ!ここは指揮隊長としてお願いします!」

指揮隊長は関係ないだろう。
だが断ったら断ったで面倒なことになりそうだ。
そうしてクラサメが下した決断は、

「…っ、仕方ないな、1回だけだからな」
「おう!」
「やった!」

「この際にナインに性欲処理の仕方を教える。オリは…あっち向いてろ」
「え、なんでですか」
「お前は16の若い娘だ。男のアレなんて見たくないだろう。だから精液だけ見せr」
「え、むしろむっちゃ見たいですけど!隊長のおちn」
「そこまで。」

危うく淫語を言いそうになった口を塞ぐ。
だが困ったものだ、教え子に自分の自慰を見せるだなんて天地がひっくり返った気分だ。
恥ずかしいやらなにやら。

「見たら帰れよ、そしてこのことは一切口外するな」
「「はぁーい!」」

クラサメは再びがっくりうなだれた。





「っうぉぉぉ、でけぇ!」
「うわぁ〜!」

とりあえずズボンのジッパーを開けて問題のアレを出す。
はっきり言おう、死にたい。
目の前のナインとオリは目をキラキラさせている。

「ふにゃふにゃー!」
「うるさい。…ナインはちゃんと見ておけ」
「お、おう」

とりあえずたまにしているようにして始める。
にしても見られながらというのはいつもと違って、新鮮…とでも口走ったらきっとカヅサと同じカテゴリーに分類されてしまうだろう。



「…っ、」
「すごい、だんだん大きくなってきた…!」
「なんか先っぽからでてんぞオイ」

自分の喘ぎを聞かせるのはやはり抵抗があるので、ゆっくり息を吐く。
少しでも油断すれば声が出そうだ。

「あ、わかるよこれ!我慢汁!!」

なんでセックスとかは分からないのにそういうことを知っているのか。
でも『我慢汁』と率直に言われるのは恥ずかしい。
せめて先走りとでも言ってほしかった。

「ガマン汁?何を我慢してんだコラ」

ナインのアホさに泣けてきた。

最初は何の反応も示していなかった自身が次第に大きく硬くなり、手を動かすたびに先走りがにちゅにちゅと水音を立てた。
最初は深呼吸で抑えることのできた喘ぎもだんだん我慢できなくなってくる。

「っく……、はぁ」
「「………」」

目の前の教え子は唾を飲み込みながら黙ってこちらを見ている。

イくにはもう少し刺激を強くしなければいけないが、強くしてしまえば喘ぎが抑えられなくなる。
そんなのはイヤだ、教え子の前で。
しかし欲というのは一度湧き上がると抑えが利かなくなる曲者で、理性が砂になって崩れていった。

耐えきれなくなったクラサメは本能のままに、自身を扱いた。

「…っ、……う…っ!」

少し呻いてクラサメは自身の手の中に白濁を放った。
どぷりとかなり濃度の濃い精液を見て、オリとナインはごくりと唾を飲み込んだ。

「…はぁ…、っ、ほら、見たいなら見ろ」
「お、おうよ…」
「ぅ、ぅん…」

心なしか二人とも頬が赤くなっていた。
あまり気にしないことにし、手の平をみせてやる。

「この白い液のなかに、精子が泳いでるんですか…?」
「…まぁそうだな」
「でもちっともピチピチしねえぞ」
「当たり前だ。精子は空気に触れると死んでしまうからな」

ふぅん、と言ってオリは黙り込んだ。
ナインは「へぇ〜」とか何やらブツブツ言っている。

オリが突然閃いたような顔をした。
オリはクラサメの手の平に指を滑らせて精液をすくい取った。

「おい…、触るのは一向に構わんが手を洗っておけよ…」

呆れたようにクラサメが言った瞬間、あろうことかオリは精液がついた指を己の口に持っていき、指を舐めたのである。

「「!!!!」」

そのままぴちゃぴちゃと舐めまわし、まるで味わっているかのようだ。
その姿は酷く妖艶で、不健全な雰囲気が辺りに漂う。

「…苦っ…」
「馬鹿かお前は…!」

クラサメは慌てて近くにあったオレンジジュースを飲み込ませた。
だが、次の瞬間にオリを見てナインとクラサメはギョっとする。

「っ…、…んぅ…」

頬はピンク色に染まり、いつのまにか甘い吐息を漏らしていた。
そして異変はオリだけに起こったものではなかったのだ。

「…っ…!?」

クラサメも息が上がっており、心臓がどくりどくりと音を立てている。
これはまずいと思ってナインを見たところ、やはりナインも息が上がっており頬が赤く染まっている。

……というところでクラサメのCOMMに通信が入った。
カヅサだった。

『やあクラサメ君、言い忘れてたよ』
「っなんだ」
『今日ちょっとだけ点滴させたでしょ?あれに副作用があってさ』

嫌な予感しかしない。

『クラサメ君ってまだ独り身だよね?彼女もいないよね?だったら大丈夫だと思うけど、今の君の精液中には催淫効果のある物質が分泌されていてね、クラサメ君はもちろんだけど空気感染で催淫効果がでちゃうから気をつけてね。あとあと、絶対ないと思うけど精液を摂取させたりしたらとんでもないことになるから忠告でした!じゃあねー』

ブツッと音が切れた。
何故もっと早く言わなかった。
戦闘のための実験とうまく絆されて点滴を打たれ、一時的に無敵状態になったからってアイツを信用したのが運の尽きだ。
血液の流れが速くなり、熱が下半身に集中し始めている。

これはマズいぞ、と思ってオリとナインに説明をしようとしたところ、目の前に信じられない光景が広がっていた。

「っん、…ぅ、…はぁ…」
「…ン…オリ…、」

なんとまぁオリとナインが濃厚なキスを繰り広げているではないか。
よくある恋愛モノの映画のラブシーンのような濃厚さだ。
なんども互いの唇を求めながらもその間に舌を絡ませるというアラワザ。

不潔だ……!!

「おいお前ら!何をして…っ!?」

慌てて二人を引き剥がそうとしたところ、視界が反転した。
オリに押し倒されたのだ。
そのままずいっとオリの顔が近づいてきて同じように濃厚なキスを頂いた。

「…んぅ、…ふ、」
「……っ…、」

更に催淫効果のせいで碌に抵抗ができない。
体は正直なのでどんどん熱は溜まっていく。

不意に唇が離れたかと思うと、目の前で瞳を蕩けさせているオリが。

「ぁ、っナイン…ひゃぁっ!」

よく見るとオリの胸にはナインらしき手が乗っており激しく揉みしだいていた。
時折先端に触れるようでその度に甘ったるい声が吐き出される。

クラサメも、氷剣の死神と言われようが堅物と言われようが一人の男だ。
我慢はできなかった。







「あっ、ぁん!だめ、だめぇっ!!」

ぐちゅぐちゅと愛液が絡む音と肌がぶつかる音が不規則に聞こえる。
クラサメは騎乗位状態のオリを下から激しく突き上げ、ナインはオリを後ろから責め立てている。

ナインはセックスという言葉は知らない癖にかなりマニアックなことは知っているらしく、オリの後ろを見事に解して只今めちゃくちゃに突いている。

3人の荒い息遣いが部屋に反響し、温度もあがっていく。
もうすぐ絶頂、とクラサメが感じた瞬間、ナインはある言葉を吐いた。

「っは、好きだぜオリ…っ」
「ん、あぁっ…!」

オリの耳元で愛の言葉を囁くナイン。
その瞬間にきゅっとオリの中が締まった。

対してクラサメはというと、心底イライラしていた。
何故可愛い教え子がこんな駄犬に取られなければならないのか。
ならば私だって…、とクラサメは考える。

クラサメは勢いを付けて上体を起こし、ぐっとオリの耳元に唇を寄せた。

「好きだ、オリ…」
「ぁっ、隊長…、ん…!」

ぶるりと震えたオリはクラサメとナインを締め付けた。
クラサメは少しだけ安堵した。

唇を耳元に寄せたまま、クラサメはオリの耳を舐めた。

「ひゃあっ!耳だめぇ…っ」

わざと音を立てるよう舌を差し込んだり耳たぶを噛んだり、その度にオリは身を捩った。

もちろん、面白くないのはナインで、「なんでこんなカタブツ野郎にオリを取られなきゃいけねぇんだよコラァ!」という脳内である。
ナインも対抗して、オリの耳に舌を差し込んだ。

「ぁ、あっ!耳、だめだって…ふぁああっ」

片耳ならまだしも両方の耳を犯されて、二人の男の熱い吐息が吹き込まれて。
催淫効果でドロドロになったオリの理性が、さらに溶ける。

「オリ…」
「…俺とクラサメの…、どっちが好きなんだよ…っ」

クラサメとナインは獣のようにオリに腰を押しつける。

「…ひ、あぁっ、私が…好きなのはぁ…っ!
 っあああぁ……!!」

大事なところで言葉が消え、オリはクラサメとナインを激しく締め付けて達した。
二人とも「畜生」と思ったのだが締め付けに耐えきれず、中に射精した。


どさりと3人して倒れこむと、2人の寝息が聞こえてきた。
ナインとオリは意識を飛ばしてしまったようで、それはもうスヤスヤと寝ている。

(仕方ないな―――。)

乗っかっている二人を退け、体を綺麗に拭いてやった。
オリはもちろんだが、律儀なクラサメはナインの体も拭いてやった。
自分よりも恵まれた体つきのナインが心底うらやましかったことはクラサメだけの秘密である。






END





「オイコラァクラサメ!」
「っ、なんだ…(ドキドキ」
「なんか昨日の記憶がイマイチないんだよな、」
「……忘れたのか?」
「んー、精子精子言ってたのしか覚えてないぜコラ」
「おはよー隊長、ナイン。あれ、どしたの?」
「オリ、お前昨日の事を覚えてるか?」
「え?あぁ、それが記憶ないんだよねぇ…、精子は覚えてるけど」
「…はぁ」
「「???」」

内心、忘れてくれて嬉しいのか悲しいのかわからないクラサメであった。