Hello!X'mas






いつもより空気が冷たいこの日。


待ちに待ったクリスマス…!!!






――――なんだけど。







「・・・・・・・・・来ない」


只今二三五〇。

あと10分でクリスマスだ。


この聖なる夜に、私はクラサメ隊長を呼び出した。
―――私の思いを伝えるため。


いわば、私は片思いだろうか。
初めてクラサメ隊長を見たとき、胸が痛くて、心臓バクバクして、死んでしまいそうなほど甘い衝撃に陥ったものだ。

それから目で彼を追い続ける度、どんどん彼への思いは大きくなっていった。


そして2か月前。

私が新しく配属されることになった0組の指揮隊長ということを知ったとき、嬉しさのあまり腰を抜かしたことを覚えている。


授業で分からないことがあったら教えてくれたり、カヅサに連れ去られたときは助けに来てくれたり。
近くにいることでしか分からなかったことが分かり、さらに好きになった。




「……やっぱり私のためにわざわざ時間を割いたりなんかしない、か…。」



そもそも彼は忙しい。

しかもこの真冬に、テラスで。




でも、この日このテラスを選んだのはわけがあった。




クリスマスイヴの真夜中
テラスで想いを伝えれば、
サンタさんが想いを最大限に大きくして
相手の胸に送ってくれる



と。



ジンクスだとは思うけども、私だって乙女だ。

恋の迷信くらい、実現させてみたい。











でも。




もうすぐ日付変更の鐘が鳴る。

あと数分、持つか持たないか。



クラサメ隊長は来てくれなかった。




ズビ、と鼻水をすすり、マフラーをもう一度かけなおした。


「……もう、戻ろう。」




隊長はいそがしいのだ。

現実を受け止めよう。




そう思って、魔方陣のほうを向いたら。





























「―――オリ。」





そこには、来ると思っていなかった人物がいた。



いつもの藍色の軍服と藍色の髪の毛。
黒いマスク。


私が見間違えるハズが無かった。




「ッ! クラサメ隊長――!」


嬉しさのあまり、走って行ってぎゅぅっとしがみ付いた。



しがみ付いた軍服は、ほんの少しだけ温かかった。




「よかった…。もう、来ないかと……」



そこで私は気付いた。






私は勢い余ってクラサメ隊長に抱きついていたのだ。



自分がしてしまったことに羞恥心を覚え、ぼぼぼっと顔が赤くなる。


でも離れられない。
なんでだろう。






「……話とは?」




あ、そうだった。
私は告白するために呼び出したんだった。


そう自覚した瞬間、隊長の腕をぎゅっと握った。










深呼吸をし、意を決して言った。








「―――好きです……ずっとまえから、好きでした……!」



ぎゅっと目を瞑る。


ヤバイやばい、目を合わせられない。

どうしよう。やっぱりフラれちゃうよね。



だって生徒と教官だもん―――。













ぎゅっと目をつむっていたから分からなかったけど、いつのまにかマスクをはずしていたようで。








気づいたら冷えた唇に、温かい感触が触れていた。

ふんわり鼻をくすぐる、クラサメ隊長の香り。




キスをされているのだと気づくまで、5秒。





ゆっくり、端正な顔が離れて行った。



唇に残る、甘い余韻。
そんな感触に魅せられて、なにがなんだかわからなくなっていた私。





目の前のクラサメさんは、ふっと笑った。





「―――私も、好きだ」



そのまま再び、2度目の口付けを施される。




唇から、彼の気持ちが流れ込んでくるようで、自然と体があったかくなっていた。












サンタさんは、きちんと想いを送り届けてくれたみたい。







END