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―――あれから数日。

私は夜も眠れない生活を送っていた。
何もしない時間があれば、あの光景を思い出してしまうからだ。




「―――それでは、講義を始める」


私の大好きな声。その声を聞くたび、あの光景を思い出す。


ときたま質問されるけど、どうしても目が合わせられなかった。
絶対、隊長の顔を見ないように、ずっと黒板の淵を見ていた。









―――クラサメ視点



想いを我慢しきれず、自分を慰めてから数日。

オリが、私を見なくなった。



「―――それでは、講義を始める」


講義の時は全員が私を見ているのだが、オリだけはどこか違うところを見ていた。

時に質問したりすれば、必ず私から目をそらす。





演習の報告も同じように、私を絶対に見ない。
軽く、報告書を押しつけるようにして足早に去っていく。


(避けられている、か―――)


小さくなっていく後ろ姿を見つめながら、私は何とも言えない感情を抱いていた。











―――オリ視点




クラサメ隊長を避け始めて数日。
目を合わせないように、なるべく話さないように努めているけど、ふとしたときにあの光景が蘇る。


いつものごとく、すべての講義が終了し、みんな足早に教室を出て行った。
クラサメ隊長は何か用事があるようで、すぐに教室を出て行った。



はぁ、とため息をついて、机に突っ伏す。

避けているけど、変わらない想い。それどころかどんどん大きくなっていく。
好き、好き、好き。
後ろ姿を少し見た今だって、心臓がうるさい。



ふと、教壇の上に何か乗っていることに気付いた。

自分の席から立ち、教壇のそばへ行く。



「これって……」


教壇の上にあったものは、クラサメ隊長のグローブだった。


思わず、グローブを手に取り、自分の手に付けてみた。

(隊長って、手…大きいんだ……)


指先の布地が余っている。第一関節くらいは残っていた。




―――また、あの光景が蘇った。


「―――ッ!」


かぁあああ、と顔が赤くなる。鼓動も早くなる。



そうだ、この手袋をはめた手で、シてたんだ。この、大きい手で。私を想像しながら。


ふと気づけば、今立っている場所は数日前にクラサメ隊長が自慰をしていた場所。
ドキドキと、胸が鳴る。



あの時バッチリ見てしまった、隊長のアレ。

すごく、大きかった。
すごく、堅そうだった。


あれに貫かれたら―――?

イヤらしい想像が、頭の中を駆け巡る。



(きっと、すごく気持ちいい……。)



私だって田舎のスラムで育った女だ。男を知らないワケじゃない。
だから余計にゾクゾクしてしまう。


(隊長のが、欲しい―――)


そう思った時には遅かった。



「え、……やだ…」


震える指先で中心部を触ると、ショーツが濡れていた。

そのまま、触れた指先でソコを撫でる。


「……っ、ん…」


僅かに、鼻に掛った声が漏れた。





(これじゃぁ、隊長と同じじゃない。)


そう思った。けど、けど―――


(我慢、できないよ―――)


私は床にお尻を付き、教壇に背を預けた。







制服の留め具をはずし、中にグローブをつけた手をすべらせる。
下着を抜き取り、そこらへんに放った。


左手にだけグローブをつけて、あまり成長してくれなかった胸を弄った。

―――もし、この左手が隊長の手だったら。

そう想像しながら、少しずつ快楽を拾っていく。先端をきゅっと摘んでみたら、滑稽に肩を震わせた。


「っぁ…、…たいちょ……っ」


右手を再びショーツに這わせたら、ソコはさっきよりも濡れていた。
さっきよりも強めに、ショーツの上から女の子の敏感なところをぐりぐりといじめる。


「…んぁ、…あ、っ……はぁ…」


静かな教室に、私の喘ぎ声が響く。
すごく、すごく恥ずかしいけど、気持ちいい。


ショーツを脱ぎ、直に指を這わす。少し触っただけで、くちゅくちゅと卑猥な音を立てる。
さっきと同じ、敏感なところを弄った。


「あ、…、っあ…クラサメさ…っん」


直接触ると、さっきとは比べ物にならないくらいの快感が背筋を這う。
ゾクゾクと腰が震え、ソコをいじくる指が無意識に早くなる。


「クラサメさん……、クラサメさ…、っあ……」


好き、好き、もう止まらない。
想いが胸から溢れて止まらない。

許されない関係だから、こうするしかない。
結ばれない自分を慰めることしかできない。



指を少し下にずらし、ぐっと力を入れる。


「あ……っ」


くぷん、と音がして飲み込まれた指。
そのまま内壁を擦るようにして動かす。


ぐちゅぐちゅと音が鳴る。
だけど指は止まらない。

そればかりかだんだんと早くなる動き。



「くらさめ、さ…ぁん、…っ好き、好き…ッ…!」


ただ、大好きな彼の名前を呼びながら、自慰に没頭する私。


なんてイヤらしいんだろう。








だんだん、頭が白くなってくる。
下半身が麻痺するような快楽に耐えられず、大きな喘ぎ声を漏らしてしまう。


もう、もう―――。

絶頂に達しそうになったその時、





ガチャ





扉が開いた。


そこにいたのは―――




「オリ……?」

私が名前を呼んでいた、クラサメ隊長だった。



思わず目を見開いてしまう。向こうも相当驚いているようで、固まってしまっている。




(どうしよう、見られちゃった……!)



ぶわっと顔が赤くなる。

恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。愛しい人に、こんな姿を見られてしまうなんて。


あそこに指突っ込んで、体を震わせている姿を見せてしまった。ああ、しんでしまいたい。


クラサメ隊長の顔は、夕焼けに照らされてなのか、それとも私を見て顔を赤くしているのか、わからなかった。





本当にイく直前で入ってこられたのでイくことができなかった私。見られているというのに、体は『早くイきたい』と疼き始める。

恥ずかしい、恥ずかしいけど……。


(我慢できないよ―――!)



私は大好きな人の前で、また指を動かし始めた。

















―――クラサメ視点




グローブを忘れていたので教室に取りに行った。


しかし、教室の扉を開けたら。




「オリ……?」




愛しい愛しい、彼女がいた。

乱れた姿で。



あまりに驚いて目を見開き、固まってしまった。



オリは自慰の最中だったんだろうか、服がはだけ、指を沈めていた。
その顔は火照っていて、欲をそそるような顔つきをしていた。

顔がかぁあっと熱くなる。


オリは始めのうちは私と同じように目を見開いていたが、だんだんと我慢できなくなっていたみたいで、指を動かし始めた。



静かな空間に、くちゅくちゅと卑猥な水音が響く。


「ぁ、…くらさめ、さ…ん……、はぁ…っ」


聴けるとは思ってなかった、オリの喘ぎ。
こんなにも、可愛いなんて思っていなかった。


気づいたら、オリのもとへ歩いていた。




近くに来て、目線の高さを同じにする。

オリの周りには、彼女のものと思われる下着が散らばっていた。
その下着の傍らに、自分のグローブが片方だけあった。

ふと彼女の左手をみたら、自分のグローブがはめられていた。
指先があまった手袋をつけながら自分の胸を弄るオリに、とてもそそられた。



自分のグローブを使っている、ということは……。


「……私の事を考えながら、シてたのか?」


そう問えば、快楽に耐えながらこくこく頷いた。

なんて、なんて可愛いんだ。



予想の通り、あまり大きくない胸。
透き通るような白い肌。
ピンク色に染まり、蜜を溢れさせている中心部。


ごくりと唾を飲み込み、彼女に近づく。
マスクも外し、放る。

足の間に入ると、恥ずかしそうに喘ぎながら、オリが見上げてきた。

その瞳は大きくて、潤んでいた。



「ふぁ…っ、クラサメさん……ぁ、っん…」

「オリ……」



駄目だ、いけない。そう思いながらも、私はオリに口付けした。
唇を重ねるだけのキス。少し長めのフレンチキス。

好きだ、好きだ、もうどうしようもない。
こないだ鎮めようとした想いが、また溢れてくる。

止まらない鼓動、熱くなる体。



する、と彼女の胸に手を這わす。
あまり大きくないが、形が整っている胸。
ふくらみのラインにそって指でなぞれば、体をくねらせた。

ぷっくりと主張している先端を弄れば、喘ぎ声が少し大きくなった。


細い腰のラインをなぞり、中心部にそっと指を這わせば、彼女の腰が震えるのが分かった。

初めて触れた、愛しいオリのソコは熱くて濡れていて。


「やぁ…っ!んぁ、クラサメさ…っあ…!」


堅くなった突起を指先で弄れば、可愛い喘ぎが耳元に響く。


そろそろ限界が近いようで、オリの指の動きは次第に速くなっていく。
突起を弄るのをやめ、オリが指を出し入れしているのにあわせ、私も指を突きいれた。奥に届くくらい、めいっぱい突っ込んだ。


「ぁ、ぁ、らめぇ…っああああああ!」


指を突きいれた瞬間、悲鳴のような声を上げ、オリは達した。
きゅうきゅうと指が締めつけられる。


力が抜けてくたりとしているオリから、指を抜こうとしたが、手首をつかまれて阻止された。


「…はぁ、…っ…もっと、して……」


ドクン、と心臓が大きく跳ねる。
こんな姿で懇願されたら断れない。というより、断るつもりなど毛頭なかった。






ちゅぷ、と音がして、今度は私一人で彼女の中を擦る。
愛液が絡みついて溢れて、すごく卑猥な音がする。

今度は指を2本にして、彼女の中を掻き混ぜた。


「ぁ、あ、あっ、クラサメさん…っ、ふぁ…」


また甘い喘ぎを漏らし始めた彼女。

ああ、私の指で感じてくれているのか。
そう思うと、愛しい気持ちを抑えきれなくなった。


さっきイったばかりのオリの中を、激しく指で掻き混ぜる。


「んぁ、やだぁ…っ、激し、…ぁ、あ、…っ!」


私の首に腕をまわし、息を詰めるオリが可愛くて可愛くて。
啄ばむようにキスをすれば、それに答えてくれる唇。
上では舌を絡める音、下では愛液が奏でる音で、教室はいっぱいだ。



「ンッ、んぅっ…ん、ンぅッ―――…!!」


今度はキスをしながら、オリはイッた。
イッた瞬間きゅうっと中が締まったあとに、ぷしゃ、と水の弾ける音がした。

潮を吹いたのだ。

私の手で、オリをイかせた。潮まで吹かせた。その事実に頭がぐらぐらする。




唇を離すと、ツゥと銀の糸が光っていた。





「…っん」

指を抜くと、その刺激にも耐えかねてオリは声を漏らした。


目の前には、自分が好きで好きで仕方のない女の子。しかもその女の子を自分はイカせ、さらに目の前で情欲をそそるような状態でいる。

もっと、欲しい。
いっそ自分のものにしたい。


気づけば、下半身に酷く熱が集中していた。



(もう、我慢できない―――)




私は教壇に寄りかかるオリを抱きあげ、床に横たわらせた。