食べ物で遊んではいけません



*同期主





「…で、もらってきたのか」
「もちろんですよー、だってもったいないですもん」

私の横には数個の箱が。
もちろん、中身はお菓子だろう。

本日はめでたくホワイトデー。
先月のバレンタインデーの時のお返しで0組の男子諸君からいろいろ貰ったのだ。
隣にいる指揮官様は何やらご不満の様子。

「あまり貰いすぎるなよ」
「…もしかして、嫉妬?」
「……」

罰が悪そうな顔をしてそっぽをむいたクラサメさん。
デレた!!

「嫉妬しちゃうクラサメさんからは何もお返しもらってませんけど?」
「…うるさいな」
「そんなこと言う人にはおさわり禁止令ですよ」

な、と言ってクラサメさんは固まった。
…相当ショック?

「…キスもダメか?」
「はい」

がっくりと項垂れたクラサメさん。

「早くお返しくださいよ、そうしたら解除してあげます」

本命チョコをあげたんだから、お返しくらい欲しいのは当たり前でしょ?
そう言うとクラサメさんは立ち上がり、何やらお菓子の箱を持ってきた。

「目を閉じて口を開けろ」

おっ、これは"あーん"ってやつですね!
ウキウキしながら目を閉じて口を開けると、ガサガサと包装を解く音がした。

「抵抗はするな」

はいはい分かりまし…え?
なんか食べさせてもらえるようなセリフじゃない気がするんですけど。

ぽい、と口の中に何かを入れられた。
じんわりと広がった甘さはホワイトチョコレートのもの。
ん、美味しい。と思った瞬間唇が触れ合った。

「っん!?」

何度も啄ばむように口づけられた後に熱い舌が唇を割って入ってきた。

「…っん、ぅ…」

口の中で解けだしたチョコレートを分け合うかのようにして舌を絡められて。
くちゅ、くちゅと響く水音に恥ずかしくなって彼の胸を押すけど一向に離れる気配はない。
それどころか舌を吸われたり口の中を舌が這いずりまわったりで、体の芯が解けるように熱くなった。

「はっ…、んぅ…」

唇が離れたころには涙で視界がぼやけていて、口の中のチョコレートは溶けてなくなっていた。
そこであることに気付く。
舌の上に何か乗っている。

「ん…?」

取り出してみたら、それはチョコにまみれたリングだった。
クラサメさんのほうを見ると、恥ずかしそうに頬を染めていた。

え、もしかして…と思っていたら、クラサメさんが言葉を発した。

「予約、だからな」

そう言われて抱きしめられた。

「え、これって…」

ドキドキと鼓動が速くなっていく。
抱きしめられているおかげで伝わってくるクラサメさんの心音も速かった。



プロポーズをされるまで、あと3秒。
恥ずかしくなって逃げようとするまで、あと10秒。







END