彼とあの子の夫婦生活


「―――ということで、これから諸君に事務的な補佐をするオリだ」
「よ、よろしくお願いします……」

オリは0組という人たちの前でお辞儀をしていた。
なんでも、今日から働かないといけないらしい。

「はいはーい質問〜!」
「何だ、ジャック」

ジャックと呼ばれた男の子がニコニコしながら聞いてきた。

「オリちゃんとクラサメ隊長って〜、どういう関係ですか〜?」

関係、関係。
そうだ、私はクラサメさんと結婚したんだった。
思い出した瞬間、ポッと顔が赤くなる。

「……っと、その…」

もじもじと言葉を濁してしまう。
だが、次に聞いた言葉でオリはもじもじどころか固まることとなる。


「オリは私の妻だ。……手を出したら明日の太陽は拝めないと思え」

教室内に歓声が沸き起こった。











ずらーりと0組女子に取り囲まれているオリ。

「えっと、クイーンさんにセブンさんに、サイスさん、シンクさん、ケイトさん、デュースさんにレムさん…?」
「さんなんて堅苦しいからやめとけ」
「そうだよぉ〜」

若干怯えながらも全員の名前を覚えることができたオリだが、緊張気味だ。

「オリって16歳でしょ?」
「は、はい」
「えぇ〜!年の差婚とか、隊長もやるねぇ〜」

きゃあーっと歓声を挙げられてオリは恥ずかしそうに頬を染めた。


「ねぇねぇ、オリって隊長のどんなところが好きなの?」

興味深々でレムが聞いた。
オリは、うーんと考える。

「優しい、ところとか…」
「えぇー!あの鬼隊長が!!?」
「へぇ…」

「他には?」
「えっと…、その、」

オリはもじもじと言葉を濁す。

「……ま…」
「え?」

「頭を、撫でてくれるところです…」

オリは頬を更に赤く染め、俯いた。

「「「「「「「(か、可愛い…っ)」」」」」」」

「…こほん、オリと隊長って結婚したんだよね?」
「は、はい」

ケイトが質問をする。

「じゃあさ、隊長とキスとかしたんでしょ?」
「…はい」

返事をした瞬間に、またしても歓声が上がる。

「「「「「隊長やるぅ〜!」」」」」

この声は流石に壇上のクラサメにも聞こえていたようで、クラサメは首を傾げていた。

「じゃあじゃあ〜、もうシちゃったの〜?」
「何を…?」

え・っ・ち、と皆が口パクで言ってくる。
これは果たして答えていいのだろうか。

「ほらほらぁ〜、恥ずかしがらないの!」

そーれ、そーれ、と音頭を取り始めてしまった。
オリは顔を真っ赤にしながら、こくりと肯いた。

またしても歓声。



「「「「「「「(マジでか)」」」」」」

遠くで聞いていた男子も思わず目を丸くしてしまったという。









翌々日。


「…マジかよコラァ」
「マジだ、真剣だ」

誰もいない放課後の教室に彼らはいた。

「間違いなく、この中にオリとクラサメの情交が記録されている。」

エース以外の男子全員が、ゴクリと唾を呑んだ。

エースが今持っているのは一種の記録媒体である。
一昨日、オリと女子の話を聞いて興味を持ち、ほんの出来心で腹黒少年エースはオリとクラサメの部屋の寝室に媒体を仕込んだのである。
もちろん、インビジを使って。

「見るか?」

全員一致で見ることになった。






「…まだぁ〜?」

ジャックが飽きの声を上げた。
映像を見始めて早30分である。
未だに二人は寝室に現れず、視点も変えられないため、同じ映像を見っぱなしだった。

「もう少しだ、もう少し」

記録媒体に記録されている映像は早送りも逆再生もできない。そして1回しか再生できないのだ。


「やっぱり俺はパスする」
「私もそうします」

キングとトレイは教室から出て行った。

『ガチャ』
「「「「「!!」」」」」

出ていった瞬間に映像に進展があった。
最初に入ってきたのはオリだ。
バスローブを羽織っているあたり、お望みの展開になりそうだ。

続いて入ってきたのはクラサメ。
バスローブではないが真っ黒いスキニーを穿いただけで、上半身は裸だ。
首にタオルをかけているので風呂上がりなのがろう。

「現役退いたとか言ってたが、すごい体だな」
「うわぁ〜、大人の男の色気ってやつだねぇ」
「腹筋8つに割れてるぞオイ」
「くっそ、イケメンはいいな…!」

各々がクラサメに対する妬みやら憧れやらを口にしていく。

『クラサメさん…っ、何か着てください…』
『別にいいだろう、今脱ぐんだから』

惚気発言来ましたと言わんばかりに画面に食いつく。

画面の中の2人は真っ白なベッドに座った後、口づけを交わした。
オリは顔を真っ赤にしながらもクラサメから離れようとしない。

「リア充爆発しろ…」

ボソっとマキナが呟いた。
どんどんマキナの周りがジメジメしていく。

「おい、マキナ落ち着け!」
「ああレム、俺のレム…!」
「大丈夫だ、結婚できると思うから!」
「…ほんとか?」

なんとかマキナをなだめることに成功したエースとエイト。
その間にも映像は進んでいたようでオリはベッドに倒され、クラサメが覆いかぶさっていた。

ちゅ、ちゅとリップ音が響く。

『…っぁ』

オリが声を漏らした。
キスが終わったようで、クラサメはオリの胸元に顔を埋めていた。

「オリって貧乳だなオイ」
「アホか」

ナインを軽く一蹴したエース。
だがあながち間違ってはいない。

オリの表情は既に蕩けきっていて、それはもう―――

「「「「「(か、可愛い…)」」」」」

思わず前屈みだ。

クラサメはよっぽどオリのことが好きなのか、何度もキスと愛撫を繰り返していた。
その度にオリは甘い声を上げる。

次第に行為が熱を増していくにつれオリのバスローブは剥ぎ取られていき、傷一つない真っ白な柔らかい肌が露出されていった。

『…ぁ、……っ』

クラサメの手がオリの下半身へと這う。
そして膝に辿り着き、オリの足をゆっくり開いた。

ベッドサイドのチェストに装置が置いてあるためアングル的にオリの大事なところは見えなかった。

『オリ、触ってほしいか?』

うわ、僕たちの隊長ってドSだ。エースはそう確信した。
オリがゆっくり肯くと、クラサメは更に酷いことを口走った。

『指で開いて、私に見せてくれないか』

この発言にエース以外の男子も、「こいつマジ鬼畜だ。」と思った。
だがオリはよっぽど触ってほしいのか、手を伸ばして指で開いたようで、クラサメの唇が満足そうに歪められた。

『っ…、』
『…ほら、たくさん出てきた』
『…ん、…ぁあっ』

「「「「「「!!」」」」」」

クラサメはオリのソコに顔を埋めた。
くちゅりくちゅりと愛液が絡む音がする。
オリの体はビクビクと痙攣し、目には生理的な涙があふれていた。

『ぁ、…んっ、…ふぁ』

控えめな喘ぎ声がまた可愛らしく、なおさら前屈みを直すことができない。

『…吸、っちゃ…だめ…ぇ』

「…俺、隊長がとても恐ろしく思えてきた」
「ぼ、僕も」
「おう…」
「ドS隊長だな…」

「俺、もうギブ…」

ばったーんとマキナが倒れた。
うつ伏せになったマキナの顔周辺には既に鼻血の海が出来上がっている。

「チッ、脱落したか…」

その間にもどんどん行為は熱を増し、ついに本番というところまで来てしまった。

二人とも顔を紅潮させて熱の孕んだ視線が交わっている。
オリが肯くと、クラサメはオリの中へ自身を沈めていく。

『…っ、ふぁ…ぁ』

「オイ、クラサメの野郎はゴム付けなかったよな…?」
「やっぱり結婚してるからだねぇ…」

オリは堪らなそうに声を上げた。
全部入りきると二人は抱きしめあう。

「なんか、愛の営みって感じだな…」
「…そうだな」

動くぞ、とクラサメが低く囁いた少し後に、ベッドのスプリングがギシギシと音を立て始める。

『ぁ、…ん、ぁ、ぁ、ふぅ…っ』
『っ……』

「ナイン、鼻血!」
「うぉっ!?」

いつのまにかナインは鼻血を出していたようで、素早くティッシュを押しつけた。

映像からは二人の荒い吐息と水音が絶え間なく聞こえる。

『…オリ、悦いか…?』
『はい…、っ…ぁ、んんっ…』

「「「「……」」」」

ハートが飛んできそうなほど甘い行為に、エース達は何も言えなくなった。
普段は殆どが黒で埋め尽くされているクラサメだが、この映像の中のクラサメは見たことがないくらい色っぽい表情をしていた。
エース達は改めて、自分たちの隊長のイケメン度を思い知ったのである。

『…く、…イく…っ』
『オリ…っ』
『くらさめさん…、ぁ、ああぁっ……!』

オリの体が頭からつま先までピンと張り、びくびくと痙攣した。
クラサメもまた限界だったのかびくりと震えた後に、力が抜けたのかオリに覆いかぶさった。


「…俺、黒板消すのがんばる」
「ぼ、僕も授業がんばる」
「お、おう」
「僕も居眠りしないようがんば…」

その時、目の前の映像が氷柱に貫かれた。
ブリザガでもない、その魔法。

[絶対零度]というアビリティだっただろうか、そのアビリティを使える人物はただ一人。


「貴様ら、何をやっている」

死神の囁きが聞こえた後に、魔導院内に男子4人の悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。




END




翌朝、教室が血だらけだったのは言うまでもない。