その醜い心にくちづけを



「…それは、その……、っあ…」

もじもじと言葉を濁していると、忘れかけていたクラサメ様のソレが、くんと奥をついた。
そこで感じたのは快楽だけ。
もう痛みは消えて無くなって、甘い声だけが口から吐き出される。

「だいぶ痛くなくなったな、」
「ん、…ぁ、ぅ…」

トントンと優しく奥を叩かれる度に、ぴくり、ぴくりと体が跳ねた。

「ほら、いつなんだ」

目を細めて見つめてくるクラサメ様の艶やかなこと。
色気に耐えられずに言葉を発する。

「っ…クラサメ様が、…ん、頭を撫でて、くれたときには、…もう」
「…初めて会ったときか?」

恥ずかしくなって黙る。
そうだ、この優しい手に頭を撫でてもらったときには心臓が音をたて、顔が赤くなった。
そんなに早く好きになってしまったなんて、嫌われちゃうかな。

ぴたりと動きが止まったかと思ったら背中に腕が回り、ゆっくりと抱き起こされた。
つながったままクラサメ様と向き合うように座るような体制になり、いっそう深くまでクラサメ様を受け入れた。

「ぁ…、深い…っ」

ふるふると震える背中に回された腕はそのままに、もっと抱き寄せられて繋がりは深くなる。
たまらず声をあげたらクラサメ様も息を詰めた。


「オリ、私と結婚してくれるか」

鼻が触れ合うくらいの至近距離で真っ直ぐ見つめられた。
宝石のような常磐色に吸い込まれそうで怖い。

さっきは無理矢理でも娶ると言ってたのに、最後には優しくなってる。
矛盾してる。
本当に優しい人だ。
そんな人のために私は答えた。

「私でよければ…っ」

流れた涙で声が震えた。
なんだろう、ひくりと喉が震えてしまう。
生理的な涙じゃなく、嬉し涙。
こんな私はとんでもない天邪鬼だ。

そのまま優しく口付けされた。
何度も何度も形を覚えるように口付ける。
ちゅ、ちゅ、と鳴るリップ音にこの上ない幸せを感じた。

「…じゃあ、この行為は子作りか?」

悪戯にクスリと笑うクラサメ様。
少し理解するのに時間がかかったが、理解した瞬間に顔が熱くなる。
私だって子作りの意味はわかる。

「…はい」

小さな声で返事をしたら少し笑うような気配がした。
少しむっとしようとしたら腰を揺さぶられて叶わない。

「ぁっ、…ぁ、ぁ、…っふ、ぅ」
「…っ」

中を擦るような動きに耐えられずにクラサメ様の胸へ倒れ込んだ。
固い胸から男らしさを感じ、すっかり思考を溶かされた私はクラサメ様にしがみつく。

「っ、ん、…ぁ、ひぅっ!」

ぐり、と腰を押しつけられて高い声が出てしまった。

くちゅくちゅと濡れた音とお互いの息づかいがさらに心を煽りたてる。
再びゆっくりと布団に押し倒されたあと、片足を持ち上げられたと思ったらさっきよりも勢いを付けて貫かれた。

「…ひ、ぁ…っぁ、ぁ、クラサメ、様」
「っ…様はよせ、結婚するんだろう…?」
「ぁっ、…くらさめ、さん…ひゃぁっ」

よろしいとでも言うように微笑んだ後、もっと速く、強く揺さぶられた。
目がチカチカする。
視界は涙でぼやけて、だらしない口は開きっぱなしだ。

「ひぁっ、ぁっぁっ、…だめ、くらさめさ…っ!」
「オリ…、っ」

もう力が残っていない腕をクラサメさんの背中に回して精一杯抱きしめる。
もう心と体はつながっている。
好きじゃ伝わりきらない想いはどう伝えればいい?
わからない、わからないから、私は一生懸命に抱きしめた。
つながるだけじゃなくて、溶けて一つになりたいくらいに私はあなたのことを・・・・・の。
言葉は結局わからない。

「くらさめさん、くらさめさんっ…ああぁっ…!」

目の前が真っ白に染まり、私は一番高く嬌声をあげた。
びくんびくんと全身が痙攣する。
怖い、離れていきそうで怖いから、精一杯クラサメさんを抱きしめた。

直後に感じた熱いもの。
どくどくと注ぎ込まれる命の欠片に愛しさと幸せと熱を感じながら私は瞳を閉じた。