その醜い心にくちづけを



するりと下着を脱がされて、クラサメ様が覆いかぶさってきた。
受け入れるために少し足を開いた。
ベルトを外す金属音と衣擦れが聞こえた後、私のソコに熱いものが宛がわれた。

「…痛かったら言うんだぞ」
「…は、い」

手と手が触れ合い、自然と指が絡む。
そんなことに小さな幸せを感じながら、私は彼に身を任せる決意をした。

息を飲む気配がした後、ぐぐぐっと熱いものが中に入ろうとした。
途端に私の体に激痛が走る。

「…ぁっ、…ぁぁあ…」
「、オリ…」

痛い、すごく痛い、とても痛い。
だけどやめたくない。
クラサメ様も辛いのだ、自分は耐えねば。

繋いだ手を握りしめて、歯を食いしばって痛みを噛み殺した。
泣くことなど許されない。
焦点が定まらない目線をずらしてクラサメ様を見上げたら、丁度視線が交わった。
すごくつらそうな顔をしていらっしゃる。
本当にお綺麗な顔なのに私のせいで歪んでいる。
…悲しい。


「っぁああ、ぐ…、ぅ…ん」

いよいよ持って経験したことのないほどの痛みが体を襲い始めた瞬間、呻き声をあげる私の口を塞がれた。
ぴったりと合わさった唇から伝わる体温に泣きそうになってしまう。

『お前が拒んだとしても、私はお前を娶る』
『嫌なら全力で抗え。そしてどこへでも逃げればいい』

果てしなく冷たい言葉を放った唇は、最後にはいつもどおりの優しさに戻っていた。
クラサメ様の心はどこまでも真っ直ぐで、身体はどこまでも優しい。
そんな彼に心を打たれた。
……身も心も何もかも一つになりたい。
お願い、私を溶かして。

そんな気持ちと口づけのお陰で、私の身体に掛かっていた力がスゥと抜けた。
その一瞬の隙を突いてクラサメ様のモノが奥深くまで突き刺さった。

「あぁっ…！」
「っ、すまない……！
　大丈夫か…？」

ため込んできた涙がぽろりと目尻を通って布団にシミを作り始めた。
あぁあ、泣いちゃった。
苦しそうに顔を歪めながら私を心配してくれるクラサメ様の心遣いが嬉しかったのだ。

「一つに、なれ、ましたか……？」
「あぁ…ほら」

クラサメ様は私の手をとり結合したソコへ誘った。
震える指先で確認すれば、紛れもなくしっかりと繋がっていた。

「っ、クラサメ様…っ」
「オリ」

でも、これで一つになれた。
私の中に私以外の誰かの一部が埋まっている感覚、則ち結合した感覚に少し落ち着かない。
彼の脈動を感じて胸がいっぱいになった。

腕を延ばせば触れ合える距離にも幸せを感じて涙が止まらない。
二周りも大きな背中にまわした腕に力を込めて抱きしめた。
早く、早く命の欠片をください。

「っぁ、」

ゆっくりと腰を動かされてなんとも言えない声が出た。
痛いのか何なのか、よくわからない。
自分からこんな声が出てくるとは思ってなかった。

「っ、…痛くないか」
「はい……、」

嘘。
本当は凄く痛いのだけど私は強がった。
折角ひとつになれたのに私が痛いと言ってクラサメ様が気を使って、行為を終わらせるかもしれないから。
そんなの嫌だ。

だけど涙は止まらない。
彼は本当にゆっくり腰を動かしてくれるものの、不自然なほどに私は涙を滴らせた。

やっぱり気付いていたのかもしれない。

「嘘吐きだな、オリは」

どこまでも優しくクラサメ様は言う。
痛くない、と思っていたらゆるゆる動いていた腰が止まっていた。
どうして、と問おうとした唇をクラサメ様の親指がをなぞった。

「私はいつオリを好きになったかわかるか？」
「…！」

ぽん、と顔が熱くなる。
そんな私を見てクラサメ様はクスリと笑った。

「見た瞬間に惚れた、とでも言っておこうか」
「それって…」
「ああ、一目惚れだ。…全く、２６にもなって一目惚れとは情けない」
「ほんと、ですか」
「本当だ。
　お前はどうなんだ」

な、何が。とはぐらかせば単刀直入に、いつから私のことが好きなんだ、とわざとらしく意地悪に聞いてきた。