死神が、命じゃない何かを奪う話





今日もカヅサさんは振り向いてくれませんでした。

そう残念そうにオリは言った。
だったら私のところへ来ればいいとも言えない私がいる。



11組のオリは、私の同期のカヅサが好きらしい。
当たり前といえば当たり前だ。
カヅサの鬼才は魔導院で認められるほどなんだから、学者の卵と言われる11組の生徒が奴に憧れるのは自然といえば自然なのだ。

いつもいつも、オリは懸命にカヅサについて回っている。
カヅサの目的及び研究心を理解しているために邪魔になるようなことは一切せず、コーヒーを淹れたり白衣を洗濯したりと、まるで召使のような光景が研究室に広がる。
しかしカヅサは研究を第一においているため、オリを振り向くことはない。
女性にはあまり興味がないというのも原因なのだが、さらにカヅサは色恋沙汰に関しては究極の鈍感なのだ。
自分に好意が向けられているとも知らず、カヅサはただ研究に没頭する毎日。
オリがときおりクリスタリウムの本棚の陰で泣いているのもよく見る。

そんなオリに惹かれてしまった。
恋に落ちた理由はよくわからないのだが、どうしようもないくらい私はオリのことが好きらしい。
カヅサが羨ましいとも思うし、憎たらしいとも思う。
私なら、泣かせないのに。と。











今日からカヅサは調査団の一員として、資材を集めに各地を回るらしい。
既に奴は魔導院を発っている。

まだ数時間しかたっていないのにも関わらずカヅサに届いた資料は既に山となっており、私は資料の山を奴の部屋に持っていった。
相変わらずごちゃごちゃした研究室の一角の、さらにごちゃごちゃしたデスクに荷物を置き、自分の仕事に戻ろうとしたその時だった。


「…クラサメ士官…?」


扉のほうを振り向くと、そこにはオリがいた。








「コーヒー淹れますか?」
「いや、私がやろう」


オリはカヅサの出張の件について何も知らなかったらしく、その件について教えてやると、心底悲しそうにしていた。
…やはりオリの心はカヅサにしか向いていなかった。
それが悔しくてたまらない。
悔しくて悔しくて無理やり奪ってしまいたくなるものの、そこはぐっと我慢した。
そんなことをしたら、オリは余計に悲しむ。


奥にある簡易生活スペースでコーヒーを作りながら、隣にある薬剤棚を眺めていた。
本当にたくさんの薬剤が収納されている。

よくわからない記号が書かれたビンがほとんどだったが、中には普通のポーションや目薬なども入っていた。
そして棚の隅に、スポイトとセットにされた赤いビンがおかれていた。
なんとなくそれを取ってみると、中には怪しい液体。
ホコリを被っているが、どうせ碌でもないものを作っているのだろう。

そうは思ったもののどんな薬なのか気になって、ホコリを落としてラベルを確認した。
文字も擦り切れていて、読みづらい。


「L…ov…e、po……t…io…n……?」


確かに、ラベルには「Love potion」と書かれている。
ラブポーション?なんだこれは。

ポーションを愛してどうするんだ、そんなことを考えながら元の場所へそれを戻そうとした。





瞬間、頭を金づちでたたかれたような衝撃に陥った。
慌ててラベルを読み直してみても、やはり「Love potion」と書かれている。
間違い無い、これは惚れ薬だ。
理解した瞬間に心臓がドクドクと音を立て始める。

これをオリに飲ませたらどうなるのだろうか…?
私がオリを愛しているのと同じように、オリも私を愛してくれるのだろうか。
好奇心というのは非常に厄介なもので、ビンを戻しがたくなる。


(こんなことをして良いはずがない)


頭ではそう思っていても、体は勝手に動いて手書きの説明を読んでいた。

・即効性
・摂取してから初めて目線を合わせた対象に効果を発揮する
・試作段階Cのため、持続性は不明

駄目だ駄目だ、そう考えながらもビンの蓋を外し、スポイトで中身を抽出してオリのマグに注入した。
思わず、ごくりと唾を飲み込む。

大丈夫だ。
だいぶ時間のたった薬品だから、効き目はないかもしれない。

しかし、効果を期待する自分がいた。








マグを渡してやると、猫舌なのかコーヒーに息を吹きかけ始めるオリ。
逸る心を押さえながらも、私はオリと向かい合うようにして席に着いた。


「良い香りですね、私がつくったのより100倍美味しそうです」
「…そうか」


ニコニコしながらも、ひたすら息を吹きかけ続けるオリ。
どれだけ猫舌なのだろうか。
だが、そんなところも可愛いと思う。


「どうしたらカヅサさんは振り返ってくれるんでしょうか…。」


はぁ、とため息をつきながらオリはコーヒーに口を付けた。

…さあ、私の顔を見てくれ。
そう念じるものの、オリはコーヒーを見つめたままだ。


「…私、魅力無いんですね」
「いや、そういうワケではないと思うぞ」


そうですかねぇ、とマグを置いてまたため息。
一向にこちらを見る気配がない。

お願いだ、こちらを向いてくれ。





オリを凝視していると目線に気付いたようで、オリが顔を上げた。


「私の顔に何かついて……?」


目線が交わった瞬間、オリの言葉は途切れた。

…まさか、本当に効果があらわれたのか…?
少し期待をしていると、オリは胸のあたりをぎゅっと掴み、俯いた。
苦しそうに息をしている様を見て、はっと我に変えった。


「オリ、大丈夫か!?」
「…っクラサメ、士官……っ」


どんどんオリの顔が青ざめていくのを見て、私は自分がやったことに腹が立った。
好奇心とは言え、何故怪しい薬品を飲ませてしまったのか。
期待した自分が馬鹿だった。

オリを抱き上げ、奥の簡易ベッドに横たわらせる。


「っオリ…」


ぎゅっと瞑られた目が苦しさを物語っている。
これはまずい。

解毒剤を探そうと立ち上がった瞬間、手首をぎゅっと掴まれる。


「!?」


オリを振り返ってみると、オリの様子が変わっていた。



「い、行かないで…!」


苦しみに染まっていた瞳には熱が孕み、頬はほんのり上気している。
潤んだ瞳で見つめられてはどうもすることができず、私はオリを見つめた。


「なんか…っ、体、熱い…」
「オリ……、」


無防備に晒されたしなやかな脚に思わず唾を飲み込む。

まさかこんなことになるとは思わなかった。
空気がどんどん不健全になり、禁断の色香が漂い始める。
それと同時に自身にも熱が集中し始める。







恥ずかしそうにオリの脚がもじもじと擦り合わせられた瞬間に何かが切れる音がして、私はオリに覆いかぶさった。
マスクを外し、そこらへんに放る。

オリを犯したい―――。

もうそれしか考えられなかった。
この部屋には私とオリしかいない。
そんな状況でこんな姿をされれば、もうこうするしかなかった。

逃げられないように手首を押さえつけ、強引に唇を奪う。


「んっ!?…んんっ、ふ…」


抵抗してきたものの、所詮は10歳も歳が離れた男と女。
力の差は歴然だった。

強引に唇の間から舌を捻じ込み、オリのそれと絡めた。
くちゅくちゅと唾液が絡む音がして、オリを口の中から犯していく。
次第に抵抗の力は小さくなり、鼻にかかる甘い声が私の聴覚を刺激した。

息継ぎをしながら、オリを包む制服のマントと留め具を外していく。
3つの金具を外し終えて唇を離すと、オリと私を銀の糸が繋いでいた。

オリの蕩けた瞳が今は私だけを映していることに気づき、嬉しさと少しの罪悪感が生まれた。
力なく開いたままの唇に再び己の唇を重ね、さらに深く深くへ落ちていく。
オリを前にしての余裕のなさに情けなくなった。


唇を重ねたまま開いた制服の隙間から手を差し込んで、首元から触れていく。
程なくして胸の膨らみにたどり着き、成長しきれていない膨らみを下着越しにやんわりと揉んだ。
それだけ、たったそれだけでオリは身を震わせた。
唇を首筋に這わせ、鎖骨に歯を立てる。
至る所に吸い付き、赤い花を咲かせた。


「や、だ…ぁ、んんっ」


喘ぎの中に拒絶の声が混じるも、やめられなかった。
私だって男だ、目の前の甘く香り立つ蜜を離せるほど、できてはいない。

可愛らしい白の下着を取ると、やはり成長しきれていない小ぶりな乳房が零れた。
先端は既に主張し始めていた。


「…やぁ…、見ないでぇ…っ」


嫌々と顔を背けるも、膨らみを直に揉んでやると甘い吐息を漏らすだけだ。
そんな卑猥な光景にどんどん私は興奮していく。

固くなった先端を親指で擦り上げてやると、途端に悲鳴のような嬌声が上がる。


「ひっ、…あ、だめぇ、…ん!」


私の指先に感じてくれるオリが愛しくて、私は片方を口に含み、軽く吸い上げた。
もう片方は指先で刺激を与える。

空いた片方の掌を滑らせて彼女の足の間を下着越しにそっと触れれば、そこはもうぐっしょりと濡れていた。



「…っ、脱がすぞ」
「や…っ!」


抵抗を抑えながらスカートを引き剥がすと、もう下着は意味を成していなかった。
慌てて閉ざそうとした膝を掴んで脚を開かせる。


「やだぁ…っ、見な、ぃで…、っ」


赤く純潔した蜜部が透けて見えるほど、愛液が染み出ていた。
下着越しでも分かるくらいぷっくりと主張した、女性が一番敏感な部分を、指の腹でそっと擦った。


「あぁっ!っひ、…や、ぁん」


思ったより固さを持ったそこを擦るたび、オリの腿が痙攣する。
どんどん愛液がじわじわ出てくるのを確認し、上とお揃いの下着を一気に脚から抜き取った。

力なく閉じられた膝を再び開いてソコに顔を近づけると、何をされるか分かったのか、ジタバタと抵抗された。


「だめっ、だめだめだめぇっ!そんなところっああぁ…っ」


舌先を使ってなぞり上げるようにして刺激を与えれば、更にオリは快感に打ち震えた。
くしゃりと髪の毛を掴まれる。


「なん、か…来るっ、ひぁ、やめて、やめてぇ…っ、ああああっ!」


固くなりきった突起を剥いて吸い上げるとオリは呆気なく果てた。
全身が痙攣を起こし、足が攣ったようにピンと伸びる。
下の口からはとろりと愛液が溢れ出た。



痛いくらい張りつめた自身を取り出し、オリのソコに擦りつけた。
びくっと反応したオリの頬は涙に濡れ、瞳は恐怖に染まっていた。

―――こんなことをして悪かった。
―――本当にすまない。

謝罪の言葉はいくつも浮かぶ。
罪悪感も山積みだ、しかし……。
どうしても、犯したい。
もう、やめられない。


拒絶の声を押しのけ、私はオリの中に欲望を捻じ込んだ。











行為が終わりを告げてオリの中から自身を抜き取ると、白濁とともに赤色が溢れ出てシーツを汚した。
薬のせいで体がかなり敏感になっているらしく、まだオリの体は小刻みに痙攣していた。

もうすぐ薬の効果は切れるだろう。
運よく記憶も消し去ってはくれないのだろうか。
そんなことを考えながら事後処理をしていた。


「………さ、…ん」


オリが小さな声で呟いた。
その声が聞き取れず、耳を傾けてもう一度聴く。



「カヅサ、さん……」
「!」



結局、あいつには勝てなかった。
薬を使っても、勝てなかったのだ。
自分が酷く許せない、どうしてこんなことをしてしまったのか。


何にも勝てなかった私は、ただ―――。







END