04



「へぇ〜、それはご愁傷様」
「ううー、お嫁にいけない…!」
「元気出して!」

机に突っ伏す私を慰めてくれるケイト。
ケイトは神!女神さまぁ!

「てゆうか、クラサメの部屋にもベッドは1つなんでしょ?」
「うん」
「どうやって寝たわけ?まさか二人仲良く一緒のベッドで―――」
「なっ、ななない、ない!絶対ないから!」

全力否定!
あんなスケベ隊長と寝るなんて、本気でお嫁に行けなくなる…。

「じゃあどうしたのよ」
「えっと、私がベッドで…、クラサメが……ソファー?」
「へぇ、あのカタブツも妙なところで優しいんだね」

…まぁ、優しさはちょっぴり認めるけどさ。
自分だって疲れてるのに、私のためにベッドを開けてくれたことはクラサメ士官が優しい証拠。

でも、なんだってキスを迫るのかな…。

「席に着け、授業を始める」

いつもと変わらない凛とした声を聞きながら、今日も講義を受けるのである。












「おいカヅサ、いるか?」

薄暗くて、その割に湿度は低いこの研究室。
私はこの研究室の主に用事があってきたのだが、呼びかけても応答がない。
いない、か―――。
そう諦めて出て行こうとした瞬間、ガコッと何かが開くような音がした。

「めずらしいねぇ、君からボクのところに来るなんて。」

驚いた。
床にカヅサの頭が生えてるのかと思った。
だが実際はそうではなく、床下から顔を出しているだけである。

「お前、また増築したのか?」
「まぁね、ボクとしてはもう20部屋くらいほしいくらいなんだけどね。」

ゲノムの研究とか染色体とか、私にはわからない。

「……で、ボクに何の相談だい?君がここに来るときは決まって相談事なんだろう?」

やはり友人というのは自分が考えていることを少なからず理解できるらしい。







「…手に入れたいものができた」
「うん?お金の相談ならボクじゃなくてエミナ君に…」
「違う、"物"じゃないんだ」

はぁ、とため息をついてマスクを外す。

「…今まで女というのは自然に群がってきて、抱いてやれば満足するものだと思っていた。だが、つい最近私を拒絶する奴がいてな…、妙に気になるんだ」
「うわぁ、全国のチェリーボーイに聞かせたら間違いなく殺される発言だよ―――って、え?」

カヅサは目をパチクリさせた。

「あれ、クラサメ君って今まで恋人居たっけ…?」
「いない」

そうだよね、だよね、いつも悪い男だったもんね!?とカヅサが己に言い聞かせるように唱える。
悪い男か、確かにそうかもしれんな。

「どう拒絶されたのかを詳しく…!」




ワクワクした表情のカヅサに教えてやった。

資料室でぶつかってきたオリのこと。
捻った様子の足首を診ようとしたら、なぜかビンタをかまされたこと。
キスをしろと言っても喜ばなかったこと。
悪代官と言われたこと。
試しに抱いてやろうと思ったら本気で嫌がられたこと。

すべての疑問だ。




「…これはもしかして、つける薬はないというアレなのか?」
「うーん、そう断定するのは早いと思うけど…。でもクラサメ君が拒絶されたのって初めてじゃない?」
「まぁ、そうだな」

だから気になる。
今まで拒絶なんてされたことはなかったからだ。

―――服従させたくなる。


「不思議なこともあるもんだねぇ〜、あんなに"The悪い男"って感じの女性関係しか持とうとしなかったクラサメくんが特定の誰かに執着するなんて……ボクはアドバイスあげるよりかは今のクラサメくんの脳波を解析にかけることに興味があるけどね」
「恋愛なんて私には必要ないんだ。ただでさえ忙しかったし、もちろんこれからも忙しい。貴重な自由時間を奪われたくないものでな。それにまだ青い頃に思い描いていた女性よりも、実際の世の女性は強欲すぎる」


どうして一番じゃないの?
どうして好きと言ってくれないの?
どうして会いに来てくれないの?

しつこく迫る女を一度抱いてやれば、それはそれで何かを勘違いするらしい。

まだ私には、果たすべき責任が残っている。色恋沙汰だとか、結婚だとか、そういうことは全て終わってからでも遅くないと思っているからこそ、これまでの関係はだいたいが一夜限りだ。


「じゃあなんで尚更そんなにオリ君のことを気にかけてるのさ」
「それがわかれば苦労はしないさ」




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