03



「あれ、あれれれ」
「どしたのオリ」
「部屋の鍵、なくした…!」

やばいーとケイトに泣きつくと、ケイトは少し考えた。
そして思いついたように話す。

「とりあえず、隊長に相談してみたら?信用はできないけど、頼りにはなると思うし」
「う、うん…」







「なら、私の部屋に泊まるといい」
「っ、ええええ!!?」

しれっと、言い放たれた言葉はさも当然というようで。

「すっごく問題があると思うんだけど…!」

私は思った。クラサメは変なところで非道徳的だ。
仮にも候補生と指揮官なのに、キ、キスを強いたり…。

キスを強いられてから1週間、私は逃げようとするも捕まえられてキスをする羽目になっている。
皆がドアを挟んですぐ隣にいるのに何度もキスを迫ってきたり、任務から帰ってきて疲れているのにキスを迫ったり。

(嫌じゃ、ないんだけどさ―――。)

別にクラサメの部屋に泊まるのは嫌じゃないけど…。
うん。
……うん…。

「じゃあハゲの部屋にでも泊まるのか?」
「い、いいい、いやだ!!」
「なら大人しく泊まるんだな」

そう言ってクラサメは立ち去って行った。
ていうかハゲとか言ってよかったんだろうか…。


その前に、0組女子の部屋に泊めてもらうっていう選択は無かったんだろうか。










今日も講義がすべて終了し、クラサメのお部屋へ。
コンコン、とノックをして入る。

「お邪魔しまーす」
「あぁ、適当に座ってくれ」

クラサメはデスクで黙々と作業を続けている。
デスクに積み上げられた書類は酷い量だ。


下着くらいは手持ち金で買うことができたけど、買った下着が問題なのだ。
デュースとレムがお泊り事実を知った瞬間、「勝負下着買わなきゃ!」とか言って連行された。
どう?とか言われて差し出された下着はどれもエッチな下着で、布の向こう側が見えそうなほどスケスケ。
拒み続けたものの、結局一番エッチな下着を買わされる羽目に。
ご丁寧に谷間ができるほどパッドが入ったブラが一つと、それとセットのローレグパンツ。
どちらも紐を解けば脱げてしまう、いわばエロ下着だ。

デュース達にルームウエアとか貸してと言ったのだけど、「彼シャツに挑戦ですね!キャー!」とか訳のわからないことを言われてしまった。




「……」

部屋に入って1時間。
クラサメはずっとデスクワーク。
やはり指揮隊長たるもの、公私混同はしないのだろう。
いや、キス迫る時点でどうなのか。

ずっと見つめていると目線に気付いたのか、シャワーでも浴びてこいと言われた。

「タオルはバスルームに置いてあるから、使っていいぞ」
「う、うん。ありがと、」

とてとてとバスルームに駆け込んだ。




「う、うわぁ…」

さっぱりして絶句。
なぜなら、たたんでおいた制服が綺麗さっぱり無くなっているからだ。
残っているのはエロ下着とタオル、それと…クラサメのものだろうか、黒いアンダーシャツ。
着ろってこと…?
流石にエロ下着で出ていくととんでもないことになりそうなので、アンダーシャツを借りることにした。






「ぎゃあああ!!」
「ふむ、なかなかいいな」

ドアを開けたら真正面にクラサメが!
彼シャツ(?)状態の私を舐めるように見た後、ずいっと近づいてきた。
…と思ったら、アンダーシャツの裾をぐいっと持ち上げられた。

「ふぎゃ、ぁ、ぁ…」
「お前、結構スゴいの穿いてるんだな」

顔がカーッと熱くなるけど、あまりにも恥ずかしくて硬直したままだ。
そりゃそうだ、パンチラなんてされたことない。
パンチラというかパンモロなんだけど。

「や、やめ…!」
「何故だ」
「…だっ、だって、私は候補生でクラサメは指揮官でしょ!?」
「ほう…、ではお前が候補生で私が指揮官ではなかったら良い、そういうことか?」
「な…!?」

ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてこちらを見据えるクラサメ。
本当にこの人はお偉いさんにして置いて良いのだろうか。
セクシュアル・ハラスメントだ…!

「もしかして、私の事が好きなのか?」
「違う!絶対に違う!誰があんたみたいな悪代官なんかを…!」

其処まで言ったところで私は言葉を止めた。

目の前のクラサメの目が鋭くなったからだ。
ぞくり、と悪寒が背筋を走る。

…もしかして、マズいことを言ってしまった?
そう考えた瞬間に腕を引っ張られて抱きあげられて、ベッドまで連れて行かれた。
ドサッとベッドの上に落とされるとクラサメが覆いかぶさってきた。
手首を押さえられて抵抗できない。
心臓がドクドクと音を立て始める。

「……?」
「誰が私なんかを好きになるか、とでも言いたかったか?」

こくりと肯く。
そりゃそうだ、キスを迫ってくるヤツを好きになんかなりたくない。
次の瞬間には、クラサメはなぜか勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。

「…いずれ、好きにさせてやるさ」
「!!!?」

とんでもない発言に目を見開いた。
思わず抵抗しようとしたらさらに強い力でベッドに張り付けられて、ぐっと顔が近くなって。

「や、やめて…っ」

このままでは唇が触れ合ってしまう、と思って私はぎゅっと目をつむった。







「……」

カタカタと震えながら黙っていても、何も触れてこなかった。
瞑っていた目を開ければ、少し離れたクラサメが可笑しそうに口元を押さえていた。

「…っ、え…?」
「私がお前のようなチンチクリンを抱くわけがないだろう」
「な…!?」

チンチクリンだとぉ…!?
がばっと起き上がって目の前にいる男を睨みつける。
睨みつけるは良いものの、男が手にしている紙タグを見て固まった。

「小悪魔ブラでVラインだと?ずいぶん気合の入ったものを付けてきたんだな。期待してたのか?」
「ち、ちが…!」

なんだかとても恥ずかしい。これじゃあ私が期待して勝負下着を付けてきたみたいじゃないか…!
この野郎と思って掴みかかろうとしたら人差し指が近づいてきて、私の胸の谷間を押した。
ほんの少しの谷間がくっきりと見える。

「な、何やって…!」
「精々Bか…、もう少し欲しいものだな」
「何のために!」
「それでは子作りするときに困るだろう」
「誰と!」
「私と」
「はぁ!?」

この人チンチクリンとか言っといて何言ってんだ!

「私が毎日揉んでやってもいいんだぞ」
「いらない!」

きぃいいいっと歯を食いしばりながら睨んだ。




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クラサメさんは一体何をしたいのでしょうかね。






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